魔法武士・種子島時堯

克全

第158話北近江の状況と神祇伯

1542年11月20日『京・種子島屋敷』種子島権中納言時堯・14歳

さて、足利義晴将軍を若狭に追い出し、六角定頼・義賢親子を北伊勢に追った。若狭は家臣の叛意が激しく国内が治まっていないので、近江に手出し出来る状態ではない。北伊勢も五十数家に分裂して争っている上に、南伊勢の北畠家や美濃の斎藤家にも備えなければならないから、とても近江に手出しするような余裕はない。まして極最近まで六角定頼・義賢親子は、北伊勢に何度も攻め込んでいたから恨まれているのだ!

だから安心して残った北近江と比叡山延暦寺を始末できるのだが、問題は北近江の諸勢力が城地の安堵を条件に降伏臣従を打診して来ている事だ。絶対に近江一国は種子島家の直轄領にする心算だったのだが、例外として俺の叔父と弟を養嗣子とする家だけは城地を安堵した。

そこで少し考え方を変えてみることにして、孤児や流民・奴隷出身だが種子島家軍学校を卒業し、現場で頭角を現した将来有望な家臣を、養嗣子に迎える家だけは城地を安堵することにした。そしてその家を小倉時実(種子島時実)・青地時綱(種子島時貞)の与騎として働いてもらう事にした。そうすれば出自の悪いことが不利にならない可能性がある。

「権中納言殿、本当に比叡山延暦寺を攻め滅ぼすのでおじゃるか?」

九条禅定太閤殿下も、京の鬼門を護る言われる比叡山延暦寺のことは気にしておられるのだろう。

「はい」

「適当な所で手を打った方が楽でおじゃろう?」

「確かにそうではございますが、そうすると後々禍根を残すことなります。後白河院さえ思いのままにならないと言われた比叡山延暦寺です、御上の思いのままになる伊勢神宮と賀茂神社を柱とするならば、先に潰した大和興福寺と同じように、完膚なきまで潰してしまった方がいいのです」

「そうでおじゃったか! 伊勢神宮と賀茂神社を復興し権威を高めたのは、最初からそのつもりがあったからでおじゃるか!」

「はい、もはや他の寺社勢力など必要ありません」

「では権中納言殿が最高位を務める、種子島寺と大宰府天満宮はどうするのでおじゃるか?」

「阿蘇大社も含めて、全ての寺社を伊勢神宮の下で統合しますから、いずれ御上と斎宮に伊勢神宮の祭主の官職と神祇伯の官職を頂くつもりです」

「しかし祭主は色々と忙しいでおじゃろう?」

「実務は権祭主にまかせます」

「それならば大丈夫でおじゃろうが、神祇伯は従四位下相当の官でおじゃろう。今までの最上位でも従二位か正二位でおじゃろう?」

「これも実務は権官に任せて、全ての寺社の上に立つ正一位相当に変えて頂くつもりでございます」

「権中納言殿がそこまで申されるのなら、本当に必要な事なのでおじゃろうな?」

「はい、とても大切な事でございます」

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