魔法武士・種子島時堯

克全

第152話五色備え群行

1542年9月20日『京・種子島屋敷』種子島権中納言時堯・14歳

伊勢神宮斎宮の群行にむけて8月晦日には宮中朱雀門において大祓を斎行され、群行当月の9月いっぱいは斎月と称して左右京、五畿内と近江・伊勢両国において北辰に灯明を捧げる北辰祭や葬儀を禁じるなど、朝野を挙げて厳重な斎戒が課された。9月9日に伊勢神宮の神嘗祭(かんなめのまつり)に合わせて都を旅立つことになっている。宮中における群行の儀の後、葱華輦(通常は天皇・皇后だけしか乗れない特別な輿)に乗り、百官に見送られて伊勢へ進発した。一行は斎宮を始め、長奉送使以下の官人・官女およそ1000人を超える公家縁の者たち、種子島家が派遣した鮮やかな黄・赤・青・白・黒の5色の軍装を装備した護衛2万兵だった。

途中近江国の国府と甲賀と垂水、伊勢国の鈴鹿と壱志に設けられた頓宮で各1泊し、6日目に斎宮へ入る例であったが、種子島家から派遣された軍楽隊が群行中も交代で楽を奏で、朝廷と種子島家の富裕と力を見せつけていた。群行中には6ヶ所の河川で御禊を行う例で、山城国の白川・近江の瀬多川(現瀬田川)・甲賀川(現野洲川)・伊勢の鈴鹿川と下樋小川(したひのおがわ)(現松阪市内の川とされる)・多気川(現祓川)では、五色軍が外周部を物々しく警備し、斎宮のお側は女官たちが一種華やかに嬉しそうに護っていた。

つい最近まで貧困にあえぎ、身売り同然に武家や商人と結婚するか尼僧になるしかなかった公家の子女が、斎宮の官女として扶持をもらって独立して生活が出来るのだ。面に出さないようにしても、自然とその喜びは漏れ出してしまう。まして共に伊勢に下向する公家の子弟と、恋の予感も結婚の希望もあるのだ、眼に入るすべての景色が光り輝いているのだろう。

さて、俺と五色軍が護る群行に差し障りがある訳もなく、届懲りなく斎宮寮に一行を送り届ける事が出来たが、本当はここからが本題である。六角家と比叡山延暦寺に天津罪と国津罪を犯したことを詰問する御上の勅使と斎宮の使者を送った。

まあなんだ、近江国中を探せば違反など出て来て当たり前だし、何より俺が自分自身でやった自作自演だったりする。特に比叡山延暦寺の寺領内で仕掛けた呪詛の痕跡などは、大和興福寺の事件が実際にあったから、御上も斎宮も本当に信じていた。

ちょっと不完全な良心が痛む!

だが近江国を種子島家の直轄領にする事は、天下安寧の為には必要不可欠だ!

ここは心を鬼にしてでも、六角家と浅井家を潰し足利義晴将軍を近江から追い出す。そして天下安寧の第2段階として、若狭国から摂津国までを直轄領とし畿内の流通を種子島家の物にする!

勅使が六角家と比叡山延暦寺を詰問した罪は以下の物だった。

畔放・溝埋・樋放・頻播・串刺・畜仆し

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