魔法武士・種子島時堯

克全

第117話種子島家陸軍の活用

1540年3月『筑前国・大宰府』種子島大弐時堯・12歳

「それで生産部隊を開墾耕作方と生産工作方に分けた結果はどうなんだ?」

「先ほどの自作農の時の話につながるのですが、作物、特に米の取れ高が裏作も考えると8倍になります。ですから購入した奴隷や逃げ込んできた流民を使って、放棄された田畑や新たに開墾した田畑に投入することが最優先事項となりました」

「そうだな、250万石程度だった九州の生産力が1000万石になるのなら、4倍の民を養っていくことができる。単に4倍の戦力が持てるのにとどまらず、多くの飢えた人々を助けることができるのだな?」

「はい、それに連動して、ただ単に穀物を輸出するのではなく、各種の酒に加工して輸出すれば多くの奴隷を購入して助けることができます」

「それが生産工作方の1つの役割なのだな?」

「はい、南蛮船の建造も日々多くなっていますし、新式鉄砲や大砲の改良生産もできております」

「大砲は馬や牛に牽かせるものや艦船に載せるものを開発配備しておるが、連発式の銃はまだ秘匿しておくのか?」

「今はまだ士筒級の火縄銃でも圧倒できております。あまり早く新式連発銃を投入すると、種子島家の優位が短い期間で終わってしまいます」

「なるほどそれは理解できた、では戦工隊を堰(せき)(ダム)や堤防造りにまわしているのは、先に言っていた開墾のためなのだな?」

「はい、洪水や干ばつで飢饉を起こすわけにはまいりません!」

「そうだな、義倉を義務付けて災害に備えているとはいえ、そもそも災害が起こらないようにするのが国主としての種子島家の役割であるな」

「はい、わが種子島家は御上や朝廷からは国司職を賜り、足利将軍家からは守護に任じられております。その役目を徒や疎かにするわけには行けません!」

「そうだな、その通りだ。それと少し疑問に思ったのだが、新式連発銃を秘匿するのに馬車や馬車鉄道を秘匿しないのはなぜだ? あれのお陰で領内の生産力や交易量が飛躍的に増大している、他国が真似をするのではないか?」

「確かに他国も真似をすることが出来れば交易量が増大します。しかし国内の国衆や寺社が設けた関所を廃止しなければなりません。まして、敵が攻めてこないように道を整備することを禁じている守護が多くおります」

「なるほどな、敵に攻め込まれたときに迎撃が間に合わない危険を冒さなければ、道を普請することはできないのだな」

「はい」

「さらに言えば、領内の有力な国衆や寺社の関所を無理やり廃すれば、反感を買うどころか反乱すら覚悟せねばならんのだな」

「はい、やりたくても出来ないと思われます」

「戦闘部隊の弩隊や投槍隊が増えていないのは、自作農自警団用に武器を回しているからなのか?」

「はい、実戦部隊に回す量が確保できません、実戦部隊は士筒を優先的に回すことにしております」

「まあ実戦部隊といっても、今は訓練か農作物を荒らす獣を狩ることが仕事だな」

「農作物を荒らす獣が減れば、それだけ民を飢えから救うことができます」

「そうだな、大切な役目だな」

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