魔法武士・種子島時堯

克全

第116話品種改良した種の価値

1540年3月『筑前国・大宰府』種子島大弐時堯・12歳

「それで大弐よ、陸軍の方はどうなっているのだ?」

「実戦部隊の事でございますか? 生産部隊の事でございますか?」

「その2つも気になるが、1番気になるのは自作農で編成した自警団のことだ」

「彼らは基本戦わせる事はありません、徴兵を止めて安心して暮らせるようにした代わりに、種子島家の法で今まで持っていた武器を取り上げました」

「うむ、みな喜んでおったな」

「はい、しかしながら万が一敵が攻め込んできた場合、武器を取って身を護ることが出来なくなりました」

「種子島家、いや大弐が負けることなどあるまい?」

「100年200年先の事も考えておかねばなりません」

「天下100年の計か?」

「はい」

「それで村ごとに逃げ込む城砦を決めて、そこに自衛用の武器を配備したのか?」

「はい、弩や連弩・投石機・投槍を配備して定期的に訓練もさせております。同時に義倉(ぎそう)(非常用の備蓄米を納めておく倉)を建て、天災等で収穫が出来なかった時に餓えないように準備させました」

「年貢も改めたのだったな」

「6公4民を7公2民1義といたしました」

「裏作にまで年貢をかけた事で、一揆が起こるかと思ったが、全くそんな気振りもなかったな」

「全ての地区に掛けた訳ではありませんから、私が4倍以上の収穫量が得られる種籾や、蕎麦・麦・粟・稗の種を与えた所から順に年貢を変えていますから」

「実質な貫高で損得はどうなるのだ?」

「品種改良に加えて魚肥が安価に売られるようにもなりましたから、裏作が麦や蕎麦から稲作が出来るようになりました、それだけで貫高で言えば倍の価値でございます」

「ふむ、それで?」

「取れ高は九州各国や地域によって違いますが、1反で1石平均のようでございますから、1反4石取れるようになった今は、手元に残る作物の価値は2倍弱、義倉にも今までと同じに近い価値の穀物を保管することが出来ます」

「すごいな!」

「ですがそれが出来た自作農の土地は極僅かな実験地だけでございます」

「そうか、そうであったな! 生産方や耕作方の陸軍耕作地に、優先的に品種改良した種を回したのだったな」

「来年再来年には九州全土に品種改良した各種の種が出回ると思います」

「そうなると年貢収入はどうなるのだ?」

「自作農が耕している場所で9倍以上に年貢が増えることになります」

「なんだと!」

「1反あたりの経済価値の変化」
年貢  公・民・義     公  民  義
表稲作・6・4・0から   28・ 8・4
裏麦作・0・5・0から裏稲作28・ 8・4
計   6・9・0から   56・16・8

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