魔法武士・種子島時堯

克全

第73話聞き込み

1537年12月『大隅国・国分清水城』種子島右近衛権少将時堯・9歳

「よう」

「なんだ?」

「暮らしはどうだい?」

「はあ? なに言ってんだ糞餓鬼!」

「ちゃんと飯は喰えてるか?」

「なんでそんなこと聞くんだ?! 生意気言ってると蛸殴りにするぞ!」

「いや、ちゃんと食べて行けるなら俺も兄貴も足軽にしてもらおうと思って」

「足軽? てめ~みたいな餓鬼は学校からだよ!」

「いや、兄貴は15歳だから」

「ふぅ~、なにが聞きたいんだ?」

「満足に飯が喰えるのかが1番知りたいんだ」

「ああ喰えるぞ! 筑後国で小作農していた頃は米を喰えたことなどない、裏作で作っている麦や粟ばかり食べていたし、不作や凶作の時はそれすら喰えず、栃の実や椎の実、ひどい時は松の皮や稲の根を煮て喰うことすらあったよ! だが今は毎日3度3度米の飯を喰うことが出来る!」

「2度ではなく3度も腹一杯喰うことが出来るのかい?」

「ああ、朝に長屋で焚いて腹ごしらえして訓練か作事に出向く。訓練所や作事場で握り飯のまま食べたり、陣笠に入れて雑炊にして食べる。夜は長屋に戻って残った握り飯を喰えるのさ」

「1日何合の飯が喰えるんだい?」

「5合だ」

「そんなに喰えるのかい?!」

「ああ、それに玄米だけじゃない。訓練にしても作事にしても10人の火単位で動くんだが、10人当たり味噌2合と塩1合ももらえるんだ」

「玄米だけじゃないのかい?!」

「おおそうだ! 他にも貰えるぞ! 朝には火に1斤(600g)の干魚、昼には火に1斤の干肉、晩にも糠漬けの野菜が貰えるんだ!」

「そりゃあ豪勢だね!」

「おうよ!」

「じゃあ食べる物は大丈夫として、住むところは満足できるのかい?」

「家は百姓していた頃とそんなに変わらないな、まあ農具や作物を保管するために多少広かったが、野盗や領主の略奪の恐れがないのが1番だ!」

「じゃあ住むところも満足しているんだな?」

「そうだな、安心して寝ることが出来るんだ、十分満足してるよ」

「着る物はどうだい?」

「着る物? 1年に2度、盆暮れに麻の着物を頂く事が出来る、満足してるよ」

「そうかい、安心したよ、兄貴に足軽になっても大丈夫と伝えてくるよ」

「そうか? まあ種子島家の足軽は楽なもんだ! 若殿が1人で戦を終わらせてくださるから、足軽は若様の後をついて歩くだけで済む! 兄貴とやらのそう伝えろ」

「ああそう伝えるよ、ありがとよ」

そうか、足軽も満足してくれているか!

足軽長屋も奴隷長屋も侍長屋も聞いて歩いたけど、どこでも満足していると言ってくれた!

これならこれからも同じやり方で、家臣領民を慰撫し国を治めて行けばいいだろう。

「魔法武士・種子島時堯」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「歴史」の人気作品

コメント

コメントを書く