魔法武士・種子島時堯

克全

第60話親子問答

1537年4月『大隅国・国分清水城』種子島右近衛権少将時堯・9歳

「父上様、禅定太閤殿下のご提案に対してどうさせていただけばいいのでしょうか?」

「無下にお断りすることも出来んが、だからといって進んでお受けすることもできんな」

「はい」

「まあ今上帝陛下のご裁可に従うのが1番無難であろう、陛下が却下なされれば禅定太閤殿下もお諦めになるであろう。もし陛下が許可なされれば、一条卿も大内卿も内心はともかくお認めくださるだろう」

「そうですね、それしか手はないでしょうね」

「問題は今年の上京をどうするかだ」

「はい、父上様が上京されると一条卿も禅定太閤殿下も、父上様の口から直接に、私と禅定太閤殿下の妹姫の結婚を望んでいる望んでいないと言わそうとされるでしょう」

「そうであろうな、一条卿は結婚を望んでいないとう言わせようとされるだろうし、禅定太閤殿下は結婚を望んでいると言わせようとなされるだろうな」

「今年の上京・蝦夷交易艦隊は下総守たちに任せてはいかがですか?」

「そうだな、下総守も玄武・黒鬼も公家衆との折衝に慣れて来ているし、蝦夷での交易も何度も経験している。ここは清水に残って、少将が筑前国や豊前国を攻める後詰でもするか?」

「そうですね、父上様が後詰して下さるのであれば、安心して侵攻を開始することが出来ます。ただ大内家に味方していた国衆は、自滅してもらう心算でいますので、ここは産業の育成に全力を注ぐつもりでおります」

「そうだな、少将が産業に専念してくれた方が、国を攻め取るよりもはるかに銭も穀物も多く手に入るからな、それで今回は何を創り出す予定なのだ?」

「今開発させている、連発式の鉄砲を量産出来るようにしたいのです」

「ふむ、色々と試作させているようだが、今量産化出来ている士筒級・火縄銃だけでも日の本を攻め取れるのではないのか?」

「可能では御座いますが、士筒級・火縄銃は他国でも模造が可能でございます。ですが連発式新鉄砲は、部品を分散生産させて組み立てる方式で生産させるので、いかに根来鍛冶でも模造は出来ないと思われます」

「そうか、だが今の火縄銃の量産は減らさないようにいたせ」

「はい、それは間違いなく続けさせて頂きます。それと海軍艦艇の大量生産と、将兵の大量教育育成にも力を入れたいと思っております」

「そうだな、交易にしろ合戦にしろ強力な艦艇が多ければ多いほど有利ではあるが、それに乗る将兵の質が悪ければ艦艇を奪い取られる恐れさえあるしな。それに艦艇は修理や整備の時間も大切だ、交代用の艦艇も訓練用の艦艇ももっと建造せねばなるまい」

「はい、特に戦列艦とフリーゲートの量産建造を直接指揮するつもりです」

「うむ、それでいくか」

俺と父上様は色々と今後の対策を相談していたのだが、禅定太閤殿は俺と父上様の考えの上を行かれた。九州全土の国衆・地侍に九条家の妹姫と俺が婚約したと言いふらされたのだ!

それによって、大内家とのつながりが強く本領安堵を大内と約束してしまっているため、今まで占領した国の国衆との待遇差を考え、潰し合いをさせてから侵攻するつもりだった筑前国・豊前国の国衆が降伏臣従したいと使者を送ってきてしまった。

「禅定太閤殿下」
九条稙通卿は出家しているので、ただの太閤殿下ではなく禅定太閤殿下と言う敬称で呼ばれる。

「肥後下総守時典」
家老・常に種子島恵時に付き従い上京している、公卿との折衝に慣れている。

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