魔法武士・種子島時堯

克全

第20話有川貞世の妻

1535年4月『大隅・国分清水城』種子島左兵衛尉時堯・7歳

「若殿、福丸朱雀でございます、入ってよろしいでしょうか?」

「ああいいぞ」

「失礼いたします」

「どうした? けげんな表情だな?」

「じつは有川貞世の妻女が貞世殿と共に、どうしてもお目通り願いたいと参っております」

「分かった会おう」

「取次した私が申すのもなんですが、本当に宜しいのですか?」

「有川の妻は、上村長種の娘だったのではないか?」

「はい確かそうです」

「実家がらみの事なら、おもしろい話が聞けるかもしれない」

「あの件でございます?」

「ああ、朱雀配下の忍軍が集めてくれたあの噂だ」

格式の問題はあったが、まあ戦国時代だし俺も当主ではないので直答を許して会う事にした。

「若殿様、直ぐにお会い下さり感謝の言葉も御座いません」

「よいよい、それで願いとは何事だ?」

「はい! 父上を助けて頂きたいのです!」

「上村長種殿を上村頼興殿の暗殺から助けろと言う事か?」

「! ご存知だったのですか?!」

「あくまでも噂の段階だが、そのようは話を忍が聞いてきた」

「事実でございます! 父上を慕う相良家の者が私に使いを寄越してくれました!」

「その家臣の名は分かるのか?」

「……いえ、万が一の露見を恐れたのか、氏名は明かしてくれませんでした……」

「だがそれでは私が助けに行っても上村長種殿は信じてくれないのではないか?」

「私が文を書きます!」

「文では信じてもらえないかもしれん、私が運ぶから空を飛んで行く覚悟はあるか?」

「え?!」

「忍の話では猶予は無いようだ、上村頼興殿は今日明日にでも刺客を送りかねないようだ」

「行きます! いえ行かせてください!」

「貞世、余が妻女を抱きしめて空を飛ぶ事になるが、それでもよいのか?」

「光栄な事でございます! まして義父上様の命にかかわる事でございます、あさましく嫉妬などしている場合ではないと考えます」

「そうか、義父にたいする孝心天晴である」

「お褒めに預かり光栄でございます」

決まったはよいがここからが忙しかった。相良家の支配域を空を飛んで行く以上、相良家の家臣領民に見つかる訳にはいかない。だからと言って灯火1つないこの時代の深夜に、土地勘のない敵地の空を飛んでは迷子になってしまう。

比較的見つかり難い高度を飛ぶことにしたが、そうなるととてつもなく寒いのだ!

身体強化魔法が使える俺はいいが、有川貞世の妻女は女性なので冷え性なのだ。絹服・綿服・皮服を選びに選んで、着膨れも着膨れアンコ型の相撲取りのような姿になって里帰りすることになった。

有川貞世・飯野城主・飯野地頭
有川たま・有川貞世の正室・上村長種の息女
有川貞則・有川貞世の嫡男
有川雅楽介貞真・有川貞則嫡男

「魔法武士・種子島時堯」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「歴史」の人気作品

コメント

コメントを書く