没落貴族バルドの武闘録

克全

第11話幕間3

バルド様が受験された上級武官登用試験は、皇国の腐敗が明らかになるもので、内心で嘲笑できた。
同時に、それを立て直そうとする大臣筆頭のシュレースヴィヒ伯爵マクシミリアンと、人事省次官のイェシュケ宮中子ウィリアムの苦闘も明らかになった。

バルド様のお優しさはいつも通りで、偽薬を使って騙さなければ実力を発揮できないほどだったが、お陰で隠された実力を発揮させられる方法も明らかになった。
狂戦士化の薬でも何でもない、携帯用の食糧を食べていただいただけで、真のお力を発揮された。
解毒剤など塗っていない、単なる手裏剣を軽く刺しただけで、偽薬の効果も解消することができた。

これからは、大事な時に偽薬と偽解毒剤を使えば、何時でもバルド様は真の力を発揮することができる。
だが、無暗に使い過ぎると、偽薬の事がバレてしまうかもしれない。
本当に大切な時にだけ使うようしよう。

問題はバルド様を表に出すべきか隠すべきかの見極めだ。
次の高級文官登用試験と高級武官登用試験でもバルド様が実力を発揮されたら、皇帝の判断ひとつでバルド様は宮中貴族に登用されるかもしれない。
マクシミリアンとウィリアムが宮中闘争に勝ち残れば、その可能性が著しく高くなる。

問題はマクシミリアンとウィリアムが勝ち残るかどうかだ。
諸侯王家の動きはそれほど激しくはない。
気を付けるべきは三つの宮中大公家だ、特にコンラディン家のルートヴィッヒは性格が悪すぎる。
実子を皇位に付けるためなら、皇太子ですら殺しかねない。
配下の調べでは、既に第二皇子を暗殺した疑いすらある。

マクシミリアンとウィリアムは、皇帝に新たな側室を入れて子作りに励むように献策しているようだが、皇帝は皇妃に執着しているようで、最低限の皇子がいればいいと考え、皇太子や第二皇子を作った時点で側室に近寄らなくなった。

三代目皇帝のように真正の男色ではないようだが、それでも皇帝としては落第だ、皇帝なら内紛を防ぐための多くの子供を産ませるべきなのだ。

いや、父親の時のように、兄弟で好意を争うのを嫌ったのかもしれないな。
間近で父親と叔父達が皇位を巡って争うのを見ていれば、皇位継承者は一人でいいと思ってしまうモノかもしれない。

だがそのせいで、息子が従弟に殺されるようでは、愚かとしかいいようがない。
自分の子供達を殺した男の子供を、養嗣子にして皇位を譲らなければならないなど、怒りで狂ってしまうほどの悔しさだろう。

さて、どうしたものだろうか。
皇室皇国を滅ぼすには、ルートヴィッヒが皇太子を暗殺できるようにすべきか?
それとも、皇帝がルートヴィッヒたち宮中大公家を滅ぼすようにすべきか?
判断が難しい所だが、それ以上に難しいのが、バルド様をどうすべきかだ。
才能豊かだが優し過ぎる主君をもつと、考えねばならない事が多くなる。

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