立見家武芸帖
第18話姉妹遭難7
「黙れ、黙れ。
腰元の分際で白河藩に逆らうなど許し難い、無礼討ちにしてくれる」
こと面倒と見たか、それともようやく事の重大さに気がついたか、腰元殿を斬ると言っておいて、我らも殺して口を封じるつもりのようだ。
随分と乱暴な奴だが、こういう奴の方が我としてはやり易い。
「待ってもらおうか。
山名家の姫君を、白河藩主越中守様の命令で拐かそうとした中間を斬ったのは我だ、か弱い腰元に大言壮語する前に、我と勝負してもらおうか」
「はあ。
貧乏浪人が口出しするな」
「やい、やい、やい、やい。
どこの山出しの田舎侍だ。
名古屋天根一検校百人斬りの立見藤七郎様を知らないとは、白河藩士はどれだけもの知らずの田舎者だぁ」
「わっははははは、田舎侍だぜぇ」
「もの知らずの、いなかっぺだぜ」
「道理で猿のような顔をしてると思ったぜ」
「わっははははは、白河藩の猿侍だぁあ」
伊之助が啖呵を切るのに合わせて、野次馬達が一斉に白河藩士を罵りだした。
猿侍が本当の猿のように真っ赤な顔になる。
これほど怒ってしまったら、普段通りの実力など発揮できないだろう。
「死ねぇえええええ」
隙だらけの大振りで大上段に斬りかかってきた。
道場剣術なら、大きな体と力で相手を威圧できたのだろうが、我には通じぬ。
前に出た右足を内側から槍の柄で払い、大股になったところを柄を跳ね上げ、急所を砕いて悶絶させる。
「伊之助、この男を両国の大通りに晒したい。
立て看板にできる物を探してくれ。
自害できないように猿轡もしておきたい」
「藤七郎、それは幾ら何でもやり過ぎではないか」
「同心殿。
事は白河藩主越中守様が、屋形号を持たれる交代寄合表御礼衆の山名様の姫君を、拐かそうとした大事件ですぞ。
公平さを欠くような事をされると、お家取り潰しの上に、腹を切らねばならない羽目になるかもしれませんぞ」
我の言葉に、兄上も続く言葉を飲み込まれた。
黙っていてくれると、我も気を使わなくてすむ。
実家を巻き込んで取り潰しにさせてしまうなど、絶対に嫌だからな。
面倒ごとは、普段から袖の下を貰っている与力に任せればいいのだ。
続々と野次馬が増えて、なかには近隣にある大名屋敷の藩士や、旗本御家人の陪臣も集まりだしてきた。
「おお、山名家の方々ではないか。
これはいったい何事でござるか」
「どちら様のご家中でございますか」
「これは申し遅れました。
我は立花飛騨守の家臣、森惣藏と申すものでございます」
「これはよき所に来てくださいました。
実は一大事が起きてしまったのでございます」
我が伊之助の用意を待っている間に、腰元と森という侍が話しだした。
どうやら山名家と立花家は縁戚にあたるようだ。
これでますます面白くなってきた。
柳河藩の立花左近将監様と言えば、名君の誉れ高い方だ。
相手が親藩の白河藩が相手でも、理不尽な振舞いには頑として引かれないだろう。
腰元の分際で白河藩に逆らうなど許し難い、無礼討ちにしてくれる」
こと面倒と見たか、それともようやく事の重大さに気がついたか、腰元殿を斬ると言っておいて、我らも殺して口を封じるつもりのようだ。
随分と乱暴な奴だが、こういう奴の方が我としてはやり易い。
「待ってもらおうか。
山名家の姫君を、白河藩主越中守様の命令で拐かそうとした中間を斬ったのは我だ、か弱い腰元に大言壮語する前に、我と勝負してもらおうか」
「はあ。
貧乏浪人が口出しするな」
「やい、やい、やい、やい。
どこの山出しの田舎侍だ。
名古屋天根一検校百人斬りの立見藤七郎様を知らないとは、白河藩士はどれだけもの知らずの田舎者だぁ」
「わっははははは、田舎侍だぜぇ」
「もの知らずの、いなかっぺだぜ」
「道理で猿のような顔をしてると思ったぜ」
「わっははははは、白河藩の猿侍だぁあ」
伊之助が啖呵を切るのに合わせて、野次馬達が一斉に白河藩士を罵りだした。
猿侍が本当の猿のように真っ赤な顔になる。
これほど怒ってしまったら、普段通りの実力など発揮できないだろう。
「死ねぇえええええ」
隙だらけの大振りで大上段に斬りかかってきた。
道場剣術なら、大きな体と力で相手を威圧できたのだろうが、我には通じぬ。
前に出た右足を内側から槍の柄で払い、大股になったところを柄を跳ね上げ、急所を砕いて悶絶させる。
「伊之助、この男を両国の大通りに晒したい。
立て看板にできる物を探してくれ。
自害できないように猿轡もしておきたい」
「藤七郎、それは幾ら何でもやり過ぎではないか」
「同心殿。
事は白河藩主越中守様が、屋形号を持たれる交代寄合表御礼衆の山名様の姫君を、拐かそうとした大事件ですぞ。
公平さを欠くような事をされると、お家取り潰しの上に、腹を切らねばならない羽目になるかもしれませんぞ」
我の言葉に、兄上も続く言葉を飲み込まれた。
黙っていてくれると、我も気を使わなくてすむ。
実家を巻き込んで取り潰しにさせてしまうなど、絶対に嫌だからな。
面倒ごとは、普段から袖の下を貰っている与力に任せればいいのだ。
続々と野次馬が増えて、なかには近隣にある大名屋敷の藩士や、旗本御家人の陪臣も集まりだしてきた。
「おお、山名家の方々ではないか。
これはいったい何事でござるか」
「どちら様のご家中でございますか」
「これは申し遅れました。
我は立花飛騨守の家臣、森惣藏と申すものでございます」
「これはよき所に来てくださいました。
実は一大事が起きてしまったのでございます」
我が伊之助の用意を待っている間に、腰元と森という侍が話しだした。
どうやら山名家と立花家は縁戚にあたるようだ。
これでますます面白くなってきた。
柳河藩の立花左近将監様と言えば、名君の誉れ高い方だ。
相手が親藩の白河藩が相手でも、理不尽な振舞いには頑として引かれないだろう。
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