義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。

克全

第1話:毒殺

まさかここまで酷い事をやってくるとは思っていませんでした。
なさぬ仲とはいえは母娘の間柄なのです。
自分の実の娘を王妃にしたいからと言って、義理の娘を毒殺しようとするなんて、人間として絶対に許されない事です。
更に許せなかったのは、父であるモランボ公爵トーマスと、婚約者のグフマン王太子が、私を毒殺する事を黙認していたという事です。

「マリーナ様、もはや遠慮無用でございます。
人間の皮を被った悪魔どもに思い知らせてくれましょう」

母親の代から仕えてくれている忠臣、筆頭家臣のセバスが決起を勧めてきます。
もし私が前世と前々世の記憶を取り戻していなければ、セバスの勧めに従って復讐の兵をあげていたでしょう。
ですが今の私にはそんな必要もありません。
私は前々世の記憶と知識を利用してアリスナ辺境伯家を栄えさせます。
そして前世の記憶と知識にしたがってゼリウス王国を滅ぼします。

「いいえ、事の顛末をしたためた手紙をジャクス国王に送るだけでいいわ。
それよりは領地の事が心配よ、直ぐに領地に戻りましょう。
復讐よりも先に領民の事を考えるのが当主の務めよ」

「御意」

セバスが心から嬉しそうな表情をして答えてくれまました。
私がセバスの求めていた以上の返事をしたからでしょう。
前世と前々世の記憶を取り戻すまでの私は、繊細で優しい令嬢でした。
愚かではありませんが、強さと厳しさはありませんでした。
でも今の私には、凄惨な戦いを生き抜いた二度の人生経験があります。
必要ならば何時でも冷酷非情な人間になれるのです。

「ですが、フェリシネと結託してアリスナ辺境伯家を乗っ取ろうとした一族は、完全に根絶やししなければいけません。
庶子であろうと傍流であろうと情け容赦せずに殺します」

「御意」

私はセバスと一緒に王都をでていきました。
セバス以外にも、亡き母の実家で私が当主を務める、アリスナ辺境伯家の王都駐屯家臣団の半数、二五〇〇兵が護衛についてくれました。
残る二五〇〇兵は王都屋敷の私財を護って領地に戻るのです。
いえ、それだけではなく、王都の貧民街で移民を募り、冒険者ギルドで移民の護衛を雇い領地に戻るのです。

私がジャクス国王に送りつけた手紙は、ゼリウス王国に激震を与え、ゼリウス王家を窮地に追いこみました。
王家と貴族派の融和を図って整えられた私と王太子の婚約が、私をの毒殺を謀って修復不可能な破棄をされたからです。

それでなくとも同じように王家と貴族派の融和を図って行われた、モランボ公爵トーマス、もう父とは言いません、と母上の結婚も母上の死で破綻しています。
その母上の死も毒殺という噂があったのです。
私への毒殺未遂により、貴族派は母上の死も毒殺だと断定し、王家に対する敵愾心を露わにしています。
私に追討軍を送れば、確実に内乱が発生します。

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