引きこもり吸血姫に一目惚れ

克全

第25話:希望願望

カーミラを殺されたことによる嘆きと哀しみはとても大きかった。
自分の力不足による自己嫌悪が心を打ちのめしてもいた。
それは紛れもない事実としてあったが、絶望はしていなかった。
カーミラは何度殺されても復活していた。
今度殺されたら本当に死ねるかもしれないと言っていた。
だがそれは、ヒュウガとヤムチャが狩って来た獲物を食べる前の話だ。

カーミラは人間の俺から見ても明らかなくらい力を取り戻していた。
神祖本来の力がどれほどのモノなのか、俺には分からない。
だが、あの溢れんばかりの力なら、もう一度復活してくれるかもしれない。
その想いがあったからこそ、ヒュウガとヤムチャが殺されると分かっていて、何の抵抗もしなかったのだと信じている。

もしカーミラが本気で抵抗していれば、壮絶な戦いになっていただろう。
ヴァンパイアハンターだって愚かではないはずだから、カーミラが神祖である可能性も考えて襲ってきたはずだ。
過去にカーミラを殺したヴァンパイアハンターと関係があるのなら、何度も同じ場所でヴァンパイアを殺しているはずだからだ。

いや、これは俺が迂闊だった。
過去カーミラがヴァンパイアハンターに殺された正確な場所を聞いていない。
あの屋敷で何度も殺されているのなら、当然ヴァンパイアハンター内で伝承されているはずだから、復活していないか確認に来るだろう。
これは早急に被害届を出して、警察に護ってももらわないといけない。

だがそうなると、あの地下墓所の事をどう説明する。
あそこだけ秘密にして被害届を出すことができるのか。
警察の鑑識は地下墓所を発見できないような愚者じゃない。
そうなると被害届を出して護ってもらう事は不可能だ。
日本で買える全ての防犯道具を手に入れたとしても、ヴァンパイアを殺すほどの能力と覚悟を持ったヴァンパイアハンターに、俺ごときが勝てるはずがない。

「鈴木さん、鈴木忍さん、処置が終わりました」

獣医院の看護婦さんが声をかけてくれた。
周りの事が分からなくなるくらい集中して考えていたようだ。
処置室に入ると、患部の毛が刈られ、縫合した後の残る三頭がいた。
あまりの痛々しさに自然と涙が流れた。
俺は絶対にヴァンパイアハンターを許さない。
何があっても、どんな手段を使っても、ぶち殺してやる。

「心臓に負担がかかってはいけませんので、軽い麻酔を使いました。
しばらくしたら痛がるかもしれません。
一番心配なのは、縫合したところを自分で噛んでしまう事です。
首にカラーをつけてできるだけ防ぎますが、それで絶対防げるわけではないので、ご主人が注意してあげてください」

「はい、絶対に身喰いなんてさせません、この子達は必ず助けます。
今日このまま連れて帰っていいのですが、それとも入院ですか」

「一週間ほど入院させることになりますが……」

三頭分の手術と六日間の入院で六十万円だった。
普通なら大きな負担なのだが、ヒュウガとヤムチャとダンボが大金を稼いでくれていたので、全く何の心配もなかった。
それよりも三頭の入院中にやっておくことがあった。

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