引きこもり吸血姫に一目惚れ

克全

第24話:襲撃

ヴァンパイアハンターの襲撃は完全な不意討ちだった。
全くなんの前兆もなくいきなり襲いかかって来た。
昼日中、カーミラと眷族が力を発揮できない時間に襲ってきた。
カーミラが休む地下墓所に通じる階段は、俺が常駐するリビングにある。

俺は真祖ヴァンパイアになるための勉強をしていた。
だがいきなりの襲撃に何の抵抗もできずに無力化されてしまった。
いや、抵抗するしないの次元ではない。
気がついた時には、カーミラが殺されてしまっていた。

カーミラだけではなく、眷属のヒュウガとヤムチャも殺されていた。
ヒュウガとヤムチャはいつも墓所の扉前に陣取っていた。
万が一ヴァンパイアハンターが襲撃してきた時に備えてだ。
ヒュウガとヤムチャが必死の抵抗をした事は確かだった。
多くの棺桶が散乱しているから、相当暴れ回ったのだろう。
ヴァンパイアハンターが流したであろう血痕が残されてもいた。

だがカーミラは全く抵抗しなかったようだ。
自分の棺桶の中で殺された痕跡があった。
俺はその事に少し違和感を覚えてしまった。
あの心優しいカーミラが、ヒュウガとヤムチャの殺されるのを座して待ったのか。
カーミラも自分だけなら従容と殺されただろう。
だがヒュウガとヤムチャまで殺されるのを受け入れるだろうか。

ヴァンパイアハンターにもそれなりの矜持があるのだろう。
俺だけではなく、眷属になっていないルークとクロスケとダンボは、傷つけられはしたが生き残ることができた。
だが動けなくするために死なないギリギリの打撃を与えたのだろう。
俺も正気を取り戻すのに随分と時間がかかったようだ。
ヴァンパイアハンターから受けた頭の傷の痛みがなかなか引かない。
同じ攻撃を受けた老齢なルークとクロスケとダンボは、かなり弱っている。

「先生、どうかこの子達を助けてやってください。
費用はどれだけかかっても構いません。
使える薬は何でも使ってください。
少しでも長く生かしてやってください」

「ご主人、暴漢に襲われたと聞きましたが、本当ですか。
失礼な事を聞くようですが、御主人が暴力を振るったわけではないのですね」

俺は自分の事は後回しにして、三頭を獣医の元に運び込んだ。
ヒュウガとヤムチャとダンボが稼いでくれていたので、金の心配はいらない。
だが獣医師には自作自演の動物虐待に映ったようだ。
正直あまりの疑いに獣医師を怒鳴りつけそうになってしまった。
いや、万が一に心配をしてくれたのだ、怒ってはいけない。

「俺も暴漢に襲われてケガをしている。
だが自分の事よりこの子達の事が心配で、警察よりも先にここに来たんだ。
信じられないというのなら、この場から110番するぞ」

「いや、失礼な事を口にしてしまった、申し訳ない。
最近自分でペットを虐待しておいて連れてくる屑がいるんだ。
治療をさせて繰り返し虐待する腐れ外道がいるんだ」

俺は信じられない想いだったが、実際にはそんな飼い主もいるのだと分かった。
そんな事をカーミラが知ったら怒り狂って暴れ回ったかもしれないない。
地球から与えられた人間全滅を始める気になってくれるかもしれない。
その為に死なないようにヴァンパイアハンターと戦ってくれるかもしれない。
いや、そんな事を思っている場合じゃない。

「謝らなくてもいいです、その分三頭の治療に力を注いでください。
一分一秒でも長生きできるようにしてください」

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