結婚式の日に婚約者を勇者に奪われた間抜けな王太子です。

克全

第96話:卑怯臆病・元勇者ロイド視点

「おい、サマセット王国からの援軍要請どうするよ」

フルスの馬鹿が分かりきった事を聞きやがる。
俺を苛立たせるために返事が分かってるのに聞いてきやがったんだ。
殺してしまいたい所だが、今ではこいつも南部同盟の将軍だ。
無暗に殺すわけにもいかなくなっちまった。

「ああ、なにっ言ってやがる、分かりきった事を聞くんじゃねえ。
援軍を送るから籠城して徹底抗戦しろと伝えるんだよ」

フルスの野郎、露骨に馬鹿にした表情をしやがる。
南部同盟各国がリカルドを恐れて出陣に消極的なのは、お前達が頼りないからだ。
フルスだけじゃない、ガイスもヒルドもラルガもだ。
南部同盟の大元帥大将軍の俺様が、将軍に抜擢してやったんだ。
それを遊び呆けているから各国から不信の目で見られんだよ。

「おい、おい、おい、おい、本気で言っているのか。
俺の第一軍もガイスの第二軍もヒルドの第三軍もラルガの第四軍も。
リカルド王太子を恐れて脱走する者が跡を絶たないんだぞ。
とてもじゃないが援軍に行ける状態じゃない。
無理に行ったらそれこそ途中で部隊単位で逃走する者が出る。
最悪戦う前に軍が崩壊しちまうぞ」

フルスの野郎、俺を苛立たせるためにわざとリカルドに王太子とつけやがる。
リカルドに恥をかかしたのはお前達も一緒なんだぞ。
今さらどこにも逃げ場所なんかないんだ。
ここでリカルドを殺す以外に俺達に生きる道なんかないんだ。
それが分かっていて俺様を挑発する気か、フルス。

「馬鹿野郎が、全部お前らが不甲斐ないからだろうが!
お前らに信頼があれば誰も逃げだしたりするかよ。
お前らがリカルドより弱いと思われているから脱走者がでるんだ。
恥を知れ恥を!」

なんだ、フルスの野郎、真剣な眼つきしやがって、居直りやがったか。
俺様は勇者と言われた男で、南部同盟の大元帥大将軍様だぞ。
お前ごときに殺されるほど弱くないんだよ。
そんなに死にたいのならさっさとかかってきやがれ。
お前との腐れ縁も今日までだ。

「……分かったよ、恥知らずは恥知らずらしく態度で示してやるよ。
援軍に出ろと言うのなら出てやるよ。
だが本当にいいんだな、元勇者の大元帥大将軍様閣下よ。
大元帥大将軍様閣下の命令で出陣した軍が、途中で兵隊が逃げ出して雲散霧消してもいいと言うんだな。
おっと俺を殺すのも駄目だぜ。
元勇者の大元帥大将軍様閣下が、勇者パーティーからの仲間の将軍を殺しちまったら、それこそもうついてくる人間はいなくなるぜ。
お前の本性は俺らが一番よく知っているんだよ。
ガイスもヒルドもラルガも、仲間の誰かが殺されたらお前の首を狙って立つぜ」

こいつら、俺様から受けた恩を忘れやがって。
俺様がいなけりゃ今でもチンケな三流冒険者のままだったんだ。
今に見てやがれ、俺様をコケにした報いを受けさせてやるからな。

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