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克全

第238話:一八四七年、後継者

 俺も落ちるとこまで落ちたな。
 天皇陛下を殺すと脅迫して公家を百人以上磔獄門にした。
 皇室アルバムを正座して観ていた元近衛騎士の大叔父に合わせる顔がないな。
 いや、どうせ俺は地獄に落ちるんだ。
 天国にいる大叔父と顔を合わせる事はないだろう。

「家栄、お前は余の後を継いで徳川家を護っていかねばならない。
 徳川家を護るというのは日本を護るだけではない、この世界を護るという事だ。
 自らを律し堕落しないようにしなければならない」

「はい、父上」

「栄治、お前は兄家栄を支えてこの世界を護らねばならぬ。
 絶対に兄弟で争ってはいかん。
 お前達兄弟が争えば、この世界に戦争が満ち溢れてしまう。
 徳川家が抑えた争いが再び起きてしまう。
 白人が黒人や黄色人種を奴隷にする世の中に戻ってしまう。
 家栄はなにがあっても兄を支えていくのだ、分かったな」

「はい、父上」

「栄忠、栄義、お前達二人は家栄の栄の諱の下に忠義の二字を分け与えた。
 兄家栄の忠義を尽くすのだぞ」

「「はい、父上」」

「万が一、万が一栄治が家栄に弓引くような事があれば、お前達二人が力を合わせて栄治を討たねばならん。
 それが余の子供に生まれたお前達の義務なのだ」

「「はい、父上」」

「大丈夫でございます父上、私が兄上に弓引く事などありません。
 父上がどれほど苦しみながら徳川家を大きくしてきたのか、御爺様や母上叔母上から聞いております。
 ご安心ください」

「そうか、頼んだぞ、栄治」

 俺は結局、蓁子内親王との間に生まれた子を特別扱いはしなかった。
 生れた順を無視して徳川家を継がせたりはしない。
 あくまでも一大名、松平家の一つとして扱う。
 御三家後四卿として遇するのも井上姉妹から生まれて男子にする。

 皇室の血を優先して家督の継承を捻じ曲げてしまったら、徳川家が後継争いを起こす可能性が高くなってしまう。
 そんな事で徳川家を分裂させてしまったら、あれほどの戦争を引き起こし、多くの血を流して世界制覇をした意味がなくなってしまう。

 第一次世界大戦や第二次世界大戦を引き起こさないようにするからこそ、俺の覇道に意味があるんだ。
 それでなければ俺は単なる戦争好き、殺人者、虚栄心を満たすために世界征服を始めた欲深になってしまう。

 子供達には徹底的に帝王学を学ばせる。
 それに側近達は厳選しなければいけない。
 自分達の立身出世のために、兄弟を争わせようとするような者を選ぶような失敗だけは、絶対にしてはいけない。

 子供達には王道を学ばせて世界を導ける大人に育てる。
 本当にそんな風に育ってくれたらいいのにな。
 自分のこの手で子供を殺すような事にだけはしたくない。
 歴史を知っているからこそ、皇位や王位を巡って殺し合った親兄弟を知っている。
 頼むぞ、頼むから欲に心を奪われないでくれよ。

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