転生 徳川慶勝 日露開戦 日米開戦

克全

第211話:一八四四年、予言よりも実戦

 清国は苦しい状態になっていた。
 昔の倭寇ではないが、イギリスから私掠免許をもらった連中が海岸線を荒らし回っていて、皇帝の威信が地に落ちている。
 北京の紫禁城は林則徐が人海戦術で奪還したが、海上では全く歯が立たない。
 まあ、林則徐がイギリス海兵隊とインドグルカ兵を撃退したのには少々驚いたが、優秀な指揮官がいれば人数が多いのだから戦いようはある。

 だが林則徐に勝たれてしまっては徳川家の出す条件も緩やかになってしまう。
 悪に徹するのなら林則徐を暗殺するか排斥するかだが、そこまで非情に徹することができるほど俺は心が強くない。
 人種差別の激しい白人が相手なら徹底した悪になれるが、忠義の林則徐にはつい手心を加えてしまうのだ。

 だから清国方面は当面放置だ。
 イスリスから私掠免許をもらった商人がこれからも増えるのは間違いない。
 国よりも自分達の利益を優先する商人は世界中にいる。
 特にユダヤ商人とイスラム商人、それに清国を裏切る中華商人も私掠免許を得る。

 更に言えば内部で漢人による清国打倒や独立闘争も始まるだろう。
 もちろんキリスト勢力が裏にいる太平天国も兵を挙げるだろう。
 正当な領土割譲もいいが、中華が多くの小国に分裂してくれるのなら、それが一番日本の利益になる。

 その間に俺は北アフリカを確実に手に入れる。
 地中海のアフリカ側に確固たる領地を確保する。
 胤昌叔父が占領してくれたアルジェリアに城砦を築き田畑を整備する。
 エジプト綿花の栽培は順調だが、大戦力の食糧を現地調達できるのか、遠方から輸送しなければいけないのかで、実戦闘力に大きな差が出てしまう。

 フランスがスペインに侵攻した時に三十万の大軍を上手く活用できなかったのは、スペインの土地が瘦せていて食糧の現地調達ができなかったからだ。
 大軍も補給ができずに小部隊に分けて散発的に戦闘させなければいけないとなると、最初から大軍を動員する意味が全くなくなる。
 大軍を先に進める前に、一番近い味方の領地を軍を養えるだけの豊かな穀倉地帯にしておく必要があるのだ。

 地中海のアフリカ沿岸地帯を一大穀倉地帯にしておく。
 今は屯田でギリギリ自給自足できているが、余剰収穫できるようにしておく。
 そこで収穫できた食糧を地中海の欧州沿岸地帯に輸送できる艦隊を建造する。
 今もできるだけ艦艇の建造はさせているが、満足できる艦艇数ではない。
 一旦侵攻を開始したら確実に占領しなければ、将兵が敵地に取り残され飢えに苦しむことになるか、現地の民から略奪することになる。
 絶対にそんな事にはさせられない。

 まあ、まだまだ時間はある。
 欧州の動乱は激しくなる一方で、国内外関係なく勢力争いをしている。
 日本や中国の戦国時代やフランスの百年戦争のような状態になっている。
 イギリスが直接介入するかと思ったのだが、アングロサクソンはもっと強かで、喜望峰を睨む南アフリカを完全支配しようと動き出した。
 ボーア戦争が史実よりも早く始まることになったのだ。

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