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克全

第209話:一八四三年、北京紫禁城炎上

イギリス第三次東洋艦隊はほとんど抵抗を受けることなく清国を攻撃した。
海軍力に隔絶した差があるのだ。
徳川海軍の支援がなければ、清国のジャンク兵船はイギリス東インド会社の汽走砲艦に全く歯が立たない。

イギリス第三次東洋艦隊は徳川家が領有を宣言している海南島と台湾には近づかず、広州のマカオと香港、廈門、舟山列島、寧波と上海と南京、天津と攻めた。
二度の完敗と虐殺の報復だろう、情け容赦のない攻撃だった。
艦砲射撃も上陸攻撃も清国民間人を皆殺しにする勢いだった。

清国では各地で水陸の提督が戦死し、各地の駐防八旗兵が玉砕した。
イギリス軍、いや、東インド会社の職員やインドグルカ兵が大規模な住民虐殺を行い、婦女暴行や略奪に走った。
抵抗しようとした清国の民間武装勢力も皆殺しにされた。

イギリス第三次東洋艦隊は的確に攻撃場所を選んでいた。
俺が情報を流したわけではない。
イギリスから賄賂を受け取った清国高官や清国アヘン商人がやった事だ。
まあ、事前にイギリス軍がその情報を手に入れていなければ、俺が情報を流していただろう、林則徐の精鋭部隊がどこにいるのかをな。

林則徐は流石に頭が切れる。
ずっと徳川軍の、いや、松前軍の戦い方を学んでいたのだ。
林則徐は清国軍でもイギリス軍に勝てる戦術を駆使できる漢だ。
徳川家との連携の間に俺が重視している拠点を理解していたようだ。
道光帝に献策して広州から北京周辺に駐屯地を変えていた。

だが、イギリス軍がその戦術に引っかからないと戦いようがない。
罠を仕掛けても味方から情報が漏れてしまうのだ。
京杭大運河をイギリスに確保され、汽船砲艦の侵攻路として利用された。
大砲と海兵隊の連携攻撃に清国軍は抵抗できなかった。
時間をかけて作った陣地を迂回されてはどうしようもない。
陣地から出た所を大砲で迎え討たれたらどうしようもない。

イギリス軍は前二回の虐殺の報復だという大義名分を振りかざいして婦女暴行、略奪、民間人の虐殺を繰り返していたが、遂に北京紫禁城にも手を出した。
道光帝は史実の咸豊帝のように熱河に逃亡していた。
円明園も史実と同じようには略奪され略奪の限りを尽くされた。
だが史実と違うのは清国がイギリスと不平等条約を結ばなかった事だ。
俺と同盟を結び直すことができれば勝てると分かっていたからだろう。

イギリス軍が北上している間に同盟依頼がなかったわけではない。
だが道光帝には一度約束していた同盟条件を履行しようとしなかった前科がある。
ここは徹底したお仕置きが必要だと考えたのだ。
それに別に清国がイギリスの植民地にされても構わない。
俺がイギリスを植民地にしてしまえばいいのだ。
直接手を汚さずに清国から富を奪うことができる。
そんな事を考えてしまう俺は、極悪非道な外道になっているのか。

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