転生 徳川慶勝 日露開戦 日米開戦

克全

第208話:一八四三年、計算範囲

予測していた範囲内で物事が推移している。
最高の状況にはならなかったが、最悪でもなかった。
イギリスはやはり金儲け主義だ。
清国の対する報復も忘れないが、それだけに偏重する事もない。
混乱する欧州でも植民地でも利を得ようと動き出している。

まずイギリスが一番重視したのがスペインのジブラルタルだった。
内戦で混乱するスペインの誰かがジブラルタルの奪還を画策するのを恐れた。
フランスが激しい内乱を起こしているので、イギリスが失ったフランス内の領地を奪い返そうともしている。
毛織物で関係の深いフランドル地方と、イギリス国王がギュイエンヌ公として領有していた地域、いや、最大時の版図を取り戻そうとしていた。
アフリカと東南アジアにある欧州列強の植民地も虎視眈々と狙っている。

その分だけ清国に派遣できる軍が縮小されることになった。
派遣される軍は東インド会社の艦隊を中心にインドグルカ兵を陸軍兵にしている。
その編成を見て思わずイギリスの冷酷さを思い知った。
艦籍は東インド会社だが運用する人間のほとんどがイギリス人ではないのだろう。
植民地人が主力の遠征軍だと思われる。
俺が流した情報が罠だった場合の対応なのだろう。

非アングロサクソンとイスラム商人からの情報では、イギリスは東インド会社のインディアマンと呼ばれる重武装の商船を集めたようだ。
汽船が発明されてから徐々に廃れていた重武装の商船が、俺との戦いに負けたイギリス海軍がインド方面や東南アジア方面への艦艇の派遣を減らした事で、海賊の襲撃が増えて再利用されるようになったようだ。

大型のインディアマンは大砲を搭載して小改造すれば四等艦になる。
四等艦とは四十六門から六十門の砲を積んだ戦列艦の事だったが、元々速力を重視した商船だから、フリゲートに改造されるだろう。
スクリュープロペラ式ではないが徳川海軍の五十二門フリゲート艦に匹敵する。
集めた情報ではその重フリゲート十二艦に輸送船十二隻、武装汽船八隻、汽走砲艦十六隻で編制された第三次東洋艦隊が清国攻撃に派遣されるようだ。

「第三次東洋艦隊」
軍艦  :十二艦
輸送船 :十二隻
武装汽船:八隻
汽走砲艦:十六隻

北京の紫禁城が占領されようと、皇帝が殺されようが構わない。
条約を守らないような奴は殺されればいい。
以前は清国はある程度残ってもいいと思っていた。
分裂した中国の一国として認める気だった。
故地である満州に帰ってもいいとも思っていた。

だが気が変わった。
一旦イギリスに全土を植民地化されても構わない。
満州族が皆殺しにされても構わない。
それが嫌なら大規模な領地割譲を認めさせる。
満州、蒙古、ウイグル、西蔵、青梅、どこまで割譲するだろうな。

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