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克全

第207話:一八四三年、侵攻・松平胤昌視点

今回の遠征も失敗は許されない。
地中海という海を徳川家の海にするための大切な戦いなのだ。
欧州列強が内乱で争っている今が最大の機会なのだ。
七つの海を支配するというイギリスをから、海を一つ奪うためのとても重要な事前侵攻を任されたのだ。

この戦に勝てれば、私はジブラルタルという海峡を任されるという。
ここを抑えればイギリスは地中海に入って来れないというのだ。
まずはアフリカという大陸側の岬を占拠する。
とは言っても岬だけ占拠しても孤立してしまうだけだ。
支配下にあるエジプトから大遠征して、海岸線を全て占領しながら、モロッコのタンジールを目指す。

大丈夫だ、上様が考えられた戦略に間違いはない。
失敗するとしたら、それは我らが上様の期待通りの働きができなかった時だけだ。
コーカサス方面とトルクメン方面から集結したロシア方面軍の大半が麾下にいる。
陸海軍合わせて総兵力三十万の大軍だ。
海からの支援砲撃も期待できる。
武器弾薬と兵糧も不足はない。

それにこれから侵攻する地域はオスマン帝国の属州だ。
本国のオスマン帝国には、バルカン半島の侵攻に協力する見返りとして併合する事を認めてもらっている。
属州とはいっても独立採算州だからほぼ独立地域と言っていい。
オスマン帝国にとっては面目以外の問題はない。
バルカン半島を取り戻して莫大な利が得られるのなら、こちらに譲っても何の問題もなかったのだろう。

問題があるとすれば侵攻速度を早くしてはいけない事だな。
イギリスには清国を叩かせる策があるという。
ジブラルタル海峡を徳川家が取るとイギリスが考えたら、清国遠征をおこなわない可能性があるという。

上様はイギリスに清国との関係が悪化しているという情報を流されている。
実際に清国に駐屯していた海軍が引き上げていると聞く。
林則徐と協力していた陸軍も全軍が沿海州に移動したとも聞く。
海南島や台湾に移動したらいいのにと思ったのだが、どちらにも酷い疫病があるそうで、大切な軍を多数駐屯させるには不向きだそうだ。

軍の移動情報はオランダやスペイン、フランスやオスマン商人を通じてイギリスに流されているそうだが、問題はイギリスが信じるかどうかだな。
後は上様の心配されていた、イギリスが欧州やアフリカ、アジアやアメリカの植民地に侵攻しようとする事だ。
欧州列強が内乱でここまで力を落としていると、遠くの清国よりも欧州や植民地を奪う方が利があると考えてしまうかもしれない。

まあ、俺程度の凡才が考えても仕方がない。
俺は上様の指示通りやればいい、ゆっくりと内政重視でやるさ。
屯田しながらの戦争にはもう慣れた。
もし、上様の心配通りにイギリスが植民地に触手を伸ばしてきたら、この地に軍を送り込んできたとしたら、叩き潰してやる。

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