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克全

第189話:一八四〇年、アヘン戦争開戦前4

もし清国と本気で同盟するのなら、一八三九年から一八四〇年に起こる虎門要塞へのイギリス海軍の攻撃を防いでいただろう。
ブルーマー提督率いる二十数隻の軍艦と殴り合いの砲撃戦を行っていただろう。
だが俺は中国大陸を分裂させる気になっていた。
だから蒸気汽船などの拿捕したいイギリス艦艇を見逃したのだ。

だが清国の道光帝が同盟の条件として領地の割譲に応じれば別だ。
父祖の地である満州の割譲は無理でも、台湾、海南島、香港島、新疆、蒙古、西蔵、青海は可能かもしれない。
実際清国末期には多くの土地を割譲している。
だから俺はわざとイギリス海軍を見逃して、林則徐を通して交渉した。
清廉潔白な林則徐だけでなく、賄賂で動く売国奴も抱き込んで交渉している。

その辺は自分でも反吐が出るほど嫌な事だった。
だがイギリスを叩き中国を抑えるには必要な事だと思っている。
色々な考えの人がいるだろう。
将来は日本人の子孫にさえ極悪非道と罵られるだろう。
だが日本の為に必要だと思うから泥水を啜る気でやる。

イギリス本土へのアヘン持ち込みも同じだ。
イギリス本土の叛乱に加担したために処刑された非アングロサクソンの家族。
アメリカ合衆国から逃げ戻ったことになっているこちらの手先。
彼らを使ってアングロサクソンにアヘンを売る。
儲けなくても構わないのだ。
アヘン中毒にして廃人にできればいい。

だからイギリス本土にアヘンを蔓延させる事は簡単だった。
高価な代金を取ろうとするから広めるのに困るのだ。
中毒にさせるのが目的だから無料で吸わせればいいのだ。
アヘンに大麻樹脂、メキシコの一部を占領した時に手に入れたコカノキの葉をイギリス本土に送った。

イギリス本土の麻薬汚染はあっという間に広まった。
無料で麻薬が手に入るのだから、少しでも嫌な事がある人間は、それを忘れるために常用するようになる。
強度の依存性があるのだから当然だろう。

非アングロサクソンの中には麻薬で金儲けしようとする者もいた。
だが俺が無料で広める理由が、アングロサクソンへの復讐だと言えば、家族を内乱で殺された者達は損得を抜きにして協力してくれる。
だから誰も金を払って麻薬を購入しなくなる。

確かに最初の約束とは違ってしまっている。
イギリス本土に送った協力者達にはアヘンでも大儲けできると言ってあった。
だが平気でネイティブとの約束を破って来たのは白人だ。
銃を突きつけ武力で脅かして奪い続けてきた白人だ。
俺が少し嘘をつくくらいは許されてもいいと思うのだ。
また子孫に罵られる事例が増えるが、仕方がない。

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