転生 徳川慶勝 日露開戦 日米開戦

克全

第164話:一八三七年、功名餓鬼・島津斉彬視点

「盾隊、踏ん張れ。
一歩も引くな」

配下の将兵が獅子奮迅の働きをしてくれている。
島津家譜代の家臣達が盾を持って一歩も引かない。
彼らの働きがあるからこそ、寄騎衆のドライゼ銃が生きてくる。
ロシア軍にドライゼ銃を奪われずにすんでいる。
本当は我が直属軍にもドライゼ銃が欲しいのだが、松前藩士以外にドライゼ銃が与えられる事はない。

「「「「「うらぁあぁぁあああああ」」」」」

ロシア軍の騎馬隊が襲いかかってくる。
勇猛果敢、縦横無尽に襲撃を繰り返すロシア軍騎馬隊には手を焼かされる。
盾隊が一歩も引かずにいてくれるから、少ない死傷者ですんでいるが、盾隊が持ち場を堅守してくれなければ、壊滅的損害を受けていただろう。

「突撃」

「「「「「おう」」」」」

松前藩の重騎馬隊がゆっくりと進みだした。
板金鎧で人馬共に重武装した松前藩の重騎兵隊は動きだしが襲い。
だが徐々に勢いを増していく。
その凄まじい突撃力は我が薩摩藩の盾隊でも守り切れるかどうか……
まして相手は弱い者から略奪する事だけを考えているロシア騎兵隊だ。

鎧袖一触とは眼の前の光景を言うのだろうな。
四千騎前後のロシア騎兵隊が千騎の重騎兵隊に一当たりで粉砕された。
その突撃力の凄まじさは言葉にできないほどだ。
初めてロシア騎馬隊の馬を見た時はとても大きいと思った。
だが松前藩の重騎馬隊の馬はさらにその上を行く。

富裕な松前藩が金に飽かせて買い集めた軍馬の中でも、特に雄大な体格を誇る馬で編制されたのが重騎兵隊だ。
日ノ本中から集めた軍馬に大陸を渡ってから買い集めた馬。
その中でも体格のいい馬を交配してどんどん大きくしている。
軽騎兵として縦横無尽に操るには、騎手に合った馬体というモノがある。
だが一点突撃の破壊力だけを考えれば、大きくて重い方がいい。

「敵は逃げた。
追撃、追撃だ」

「「「「「おう」」」」」

「逃げる者は殺せ、降伏する者は捕虜」

松前藩の軽騎馬隊と傭兵騎馬隊が逃げるロシア騎馬隊を追撃する。
重騎馬隊に逃げる敵の追撃は不可能だ。
動きが悪いし直ぐに馬が潰れてしまう。
重騎馬隊はここぞという時に突撃させなければいけない。
欲しい、ドライゼ銃隊と重騎馬隊が喉から手が出るほど欲しい。

島津家を元の大大名に返り咲かせるために、儂は最前線に出てきたのだ。
多くの裏切者や憶病者がでてしまい、六万と言われた島津軍が僅か千兵となってしまったが、今残ってくれている者こそ真の薩摩隼人だ。
彼らに多くの領地を与えてやりたい。

主を変えて他藩や松前松平家に忠誠を誓う不忠な裏切り者。
松前松平家に忠誠を誓ったのに、戦場を恐れて開拓だけに従事する憶病者。
ほとんどの元薩摩藩士が島津家から離れたにもかかわらず、困窮に耐えながら儂に仕えてくれる者達。

松前藩士として仕えていれば、ドライゼ銃や軍馬が貸し与えられ、功名を得られる機会ももっと多かったのだ。
この者達に豊かで広い領地を与えてやりたい。
その為には儂が功名をつかむしかないのだ!

「追撃じゃ、儂に続け!」

「「「「「ちぇすとぉお」」」」」

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