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克全

第160話:一八三七年、群雄割拠・雨後の筍

アメリカ方面は正直収拾のつかないくらいの混乱が起きていた。
最初にきっかけを作ったのは俺だが、元々争いの芽はあったのだ。
ネイティブという共通の敵を創り上げて移民を団結させていただけ。
フロンティアという共通の利益目的を創り出して団結させていただけだ。
旧大陸からの敵愾心や怨念を眼に見える形にしてやれば、新天地という無法の地では簡単に殺し合いに発展した。

だがそれは侵略者の白人だけではおさまらなかった。
白人から奪った武器を手に、ネイティブが先祖代々の敵対部族と争ってしまった。
同じ部族内でも権力争いを起こしてしまった。
石器で戦っていたのが白人から奪った鉄器で戦うようになった。
徒歩で戦っていたのが白人から奪った馬に乗って戦うようになった。
最後には鉄砲を撃ち合って殺し合うようになってしまった。

最初はアメリカ合衆国の各州が分離独立を宣言するだけだった。
それが州内の白人同士の内乱が始まり、郡や都市、街や村までもが分離独立を宣言するようになっていた。
それを手本にネイティブが部族ごと派閥ごとに建国を宣言した。
独立国を宣言してからの戦いは熾烈を極めていた。

それと同時にイギリス領アメリカ(前世のカナダ)に逃げていた、元アメリカ合衆国領に住んでいた王党派が、アメリカ合衆国領に攻め込んできた。
自分達が奪われた土地を奪い返そうとしたのだ。
これに現地のイギリス軍が協力したのだから負けるはずがない。
形骸化しているとはいえまだアメリカ合衆国政府があるのだ。
宣戦布告のないイギリス軍の侵略だと言える。

この状態で現地の松前松平軍が臨機応変の働きをしてくれた。
まあ、そういう手段もあると内示していたのは俺だけどね。
その為の援軍も送り出してはいたが、まだ現地には辿り着いていないだろう。
援軍を待たずに決行してくれたのだ。
フロリダ共和国、カリフォルニア共和国、ジョージア共和国、ミシシッピ共和国、ルイジアナ共和国、テキサス共和国、ニューメキシコ共和国の建国宣言をしたのだ。

太平洋側北部はイギリス領アメリカ軍が攻め込んでいるし、州は分離独立した上に激しい内戦で大混乱だ。
もうアメリカ合衆国にも州政府にも、松前松平軍とネイティブ軍を阻む力などなかった。

州政府が郡や市、都市や街の独立により空中分解していた。
だがそれは松前松平軍が建国宣言した各共和国も同じだった。
松前松平軍は一致団結しているが、ネイティブは部族ごと、部族は派閥ごとに分かれて行動していた。

例えばニューメキシコ共和国内は、主要な部族だけでもプエブロ族、ナバホ族、アパッチ族、ユト族に分かれている。
その部族内でも派閥による争いがある。
さらに内部ではスペイン系やイギリス系などの白人が争っているのだ。
戦国乱世としか言いようのない騒乱の坩堝、それが今の北米だった。

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