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克全

第148話:一八三六年、北米謀略戦

白人だって馬鹿ばかりではない。
いや、ネイティブを押しのけ殺して土地を奪ってきた数だけ謀略経験がある。
だから俺のやっている謀略を見抜いて、白人の一致団結を叫ぶ者もいる。
だがそんな人間は真っ先に殺して団結の芽を潰していった。

そして出身国同士の反目を煽った。
アングロサクソンと非アングロサクソンの敵意を煽りに煽った。
特にイングランド系とアイルランド系の憎しみを増強させた。
それにウェールズ系とスコットランド系の利害を絡めて憎しみ争うようしむけた。
更に宗教戦争まで起こしたカトリックとプロテスタントの対立を、殺し合いに発展するように教会を襲撃して聖職者を殺した。

どれほど良識ある者が白人の一致団結とアメリカ合衆国の大切さを説いても、俺が全てのネイティブアメリカンを仲良くさせられないのと同じで、不可能なのだ。
白人同士の積年の恨みを払拭する事など不可能なのだ。
要所で暗殺と襲撃を行えば内乱は幾らでも激化させられる。
欧米列強が日本に明治維新を起こさせて国力を削ったの同じように。
清国内で太平天国の乱を起こさせて国力を削ったのと同じように。

だが、だからといって、アメリカ合衆国を弱らせ過ぎて、いまだイギリス植民地である英領カナダから、英国軍がアメリカ合衆国領に侵攻占領しては困るのだ。
それでなくてもこの時期のアメリカ合衆国と英領カナダはきな臭いのだ。

一八三七年十二月には、アッパー・カナダのトロント近郊で、ウィリアム・マッケンジーを指導者とするアッパー・カナダの反乱が発生する。
カナダはアメリカ合衆国が独立してから、オタワ川を境に東を英国系のローワー・カナダと、西をフランス系のアッパー・カナダに分けていたのだ。
フランス系住民のために、ケベック法でフランス民法典やローマ・カトリックは認められていたが、イギリス系支配層によってフランス系農民が支配されるという身分差のある状況になっていたのだ。

史実ではウィリアム・マッケンジーはニューヨーク州バッファローに逃亡し、ニューヨーク州、ミシガン州、ヴァーモント州に住むアメリカ人から援助を受けた。
アッパー・カナダ反乱に加わった者が続々とバッファローに集まり、アメリカ合衆国を拠点に再び叛乱を起こしているのだ。

一八三八年から一八三九年には、アルーストック戦争と呼ばれる出兵があった。
結果的に武力衝突はなかったが、国境線が曖昧だったアメリカ合衆国のメイン州と現在のカナダ国ニューブランズウィック州およびケベック州との間で、両国の軍が一触即発状態になったのだ。
アメリカ合衆国の内乱に乗じて、イギリスにアメリカ合衆国を併合させてしまう事だけは、絶対に避けなければいけない。
そしてその可能性が全くないとは言えないのだ。

助かるのはメキシコ方面は安全だという事だ。
メキシコは独立後から混乱が続き、一八二三年にはイトゥルビデが建国していた第一次メキシコ帝国が崩壊している。
今はとてもではないがアメリカ合衆国領に侵攻占領できる状態ではないのだ。
むしろ史実で起こるテキサス独立戦争や米墨戦争と同様に、テキサス共和国やカリフォルニア共和国を独立させて、日本人とネイティブの国を作るのだ。

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