転生 徳川慶勝 日露開戦 日米開戦

克全

第136話:一八三五年、目配り手配り

今俺が一番気になっているのは北米への派兵だが、それだけに集中する事など絶対に許されない。
日本国内の不作を飢饉にさせないように、食糧相場には細心の注意が必要だ。
清国内に派遣している密偵と若党隊が不当に扱われないように、十分な気配りが必要だし、清国内から移民させた貧民を戦力化する事も急がれる。
何より優先するのは、シベリア戦線の補給と侵攻だ。

シベリア戦線が当初の想定以上に順調で、着々と拠点をウラル山脈に近づけているが、その分補給線が長大になり戦力も広く薄く広がってしまう。
ポーランドとトルコがロシア正規軍主力と対峙してくれているので、こちらに派兵される戦力が少ない事が、想定以上に侵攻できている原因だ。
だが、ロシアがポーランドとトルコと休戦条約を結び、主力軍をこちらに向けてくる可能性は常にあるのだ。

欲望丸出しで考えれば、ウラル山脈より東を占領できれば最高だろう。
チュメニ油田とカラガンダ炭田を手に入れることができれば、日本は安泰になるだろうが、今の戦力では現実的ではない。
クズネツク炭田は喉から手が出そうになるくらい確保したいが、イルクーツク州に発見された油田を確保する事が最優先だ。

中央シベリア高原の防御用の陣地を構築して、北極海に面している辺りは、撤退放棄を前提に敵に損害を与える釣り野伏を行おう。
アナバル川、オレネク川、レナ川、ヤナ川といった河川を利用した防御陣を構築し、それを利用して反撃を繰り返す。

問題は今の武士に、度胸も高度な戦場勘も必要な釣り野伏が行えるかだろう。
元薩摩藩士を最前線に投入しているが、彼らにだけ手柄を立てさせるもの問題だ。
三百諸侯から登用試験を受けて仕官した者達にも功名の機会を与えなければ、諸侯やその藩の陪臣を味方に付けることができない。
子弟が手柄を立て立身出世できているからこそ、自分達もお零れに預かれると思って、松前藩に協力してくれるのだ。

それにしてもクズネツク炭田を確保する方法はないモノだろうか。
清国貧民で編制した若党隊を損害を無視して投入すれば可能だろうか。
清を建国した女真族は戦う力を失ってしまったが、清国の圧政に苦しんでいるモンゴル族はまだ戦う力を持っているはずだ。
史実でも、清国末期に漢人を内蒙古に殖民させて内蒙古人を苦しめた事で、内蒙古の諸部族がが蒙古のハルハ諸侯に働きかけ、清国の支配が比較的緩かった北モンゴルにボグド・ハーン政権を誕生させている。
北モンゴルのハルハ諸侯と契約して、傭兵とする事が可能かもしれない。

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