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克全

第116話一八三三年、妊娠からの話し合い

井上正紀の長女、幸が出産する前に、妹の雪が妊娠した。
姉妹で子供の家督争いが生じたら最悪である。
幸と雪が納得して仲良くしていても、側近が権力争いするかもしれない。
そんなことにならないように、井上家から付いてきた家臣はもちろん、我が家の家臣も厳重に見張らなければいけない。
できれば年を越して同年生まれにはならないで欲しい。
まあ、全ては性欲をコントロールできなかった俺の責任なのだが。

「幸も雪も側近の者達もよく聞いて欲しい。
将軍家との絆を強めるためには、将軍家の縁戚を正室に迎える必要がある。
恐らくだが、大御所の御舎弟、徳川斉匡殿の十五女千重姫様になるだろう。
将軍家の連枝から正室を迎える以上、先に生まれたとはいえ家を継ぐことはないのだから、絶対に余計な争いは起こすな。
少しでもその様子が見えたら、事実でなくても殺す、分かったな」

「「「「「はっ」」」」」

身勝手な話だが、妻子の方が家臣よりも可愛い。
戦国乱世ならば、子を見殺しにしてでも優秀な家臣を守らなければならない。
だが、前世で妻子に縁のなかった俺には、二人の嫁と子供の方が家臣よりも大切で、護るためならば何をするか分からない気持ちになっている。
本当に大嫌いな徳川治済の血統から正室を迎えるかどうかは別にして、それを使って子供が謀殺されるのを防ごうと考えたのだ。
自分の家臣を信じられない猜疑心に、自分自身が嫌になる。

「蝦夷樺太よりも寒く、江戸からもはるか遠くにはなるが、それぞれの子に十万石程度は分与する気でいる。
生まれた子が女でも、化粧領に不自由させたりはしない。
十万石の化粧領を与えるから何の心配もいらん。
安心して元気な子供を産むがいい」

「「「「「はっ」」」」」

まあ、この時代ならば、女の子にできるのはこれくらいが最大だろうな。
毎年娘が嫁いだ先に、領地十万石分の米か現金を送る。
娘が死んでしまったら十万石分の支援は終わりだ。
まあ、子供が生まれて嫁ぎ先の当主になったりしたら、引き続き幾らかの支援をするかもしれないが、それはそれぞれの事情によるからな。
ただ日本の将来を考えれば、幕藩制度を廃止して立憲君主制にすべきだろう。

問題があるとすれば、妊娠しただけの状態で、これほど妻子に執着している自分の身勝手な心だ。
自分の子供を国王にしたくなって、将軍家と松前家で連合王国制度を取り入れてしまうのだろうか。
天皇陛下を権力のない皇帝に祭り上げて、その下に複数の王や貴族がいる、連合連邦皇国を建国してしまうのではないだろう。
正直自分の妄想が怖い、もっと自分自身を律しなければいけない。

「松平斉恕の側室」
井上正紀の長女幸
井上正紀の次女雪

「松平斉恕の正室候補」
千重姫:徳川斉匡の十五女・史実では次弟松平武成の正室

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