転生 徳川慶勝 日露開戦 日米開戦

克全

第92話一八三〇年、北米派遣部隊

「林則徐殿との連絡はとれたのだな」

「はい、欧米列強との戦いには、共に手を携えて行おうという話になっております」

「貧民の派遣についてはどうだ」

「はい、喰うや喰わずの貧民なら、いくらでも送ってくれるそうでございます。
入植地については、こちらに任せてくれるそうでございます」

俺は悪魔の謀略を着々と進めていた。
国力、特に軍事力と食糧生産力をの増強は急務だった。
だが、日本の人口は三〇〇〇万人少ししかいない。
その三〇〇〇万人を飢えさせずに喰わすことは目途がついた。
天保飢饉に備える備蓄も、万全とは言えないものの、ある程度は目途がついた。

史実の教訓を生かして、俺が直接確認できる場所、品川砲台島一六カ所と、津波に備えた高台にも米蔵を造り備蓄している。
そこまでやってから、雑兵として清国人の貧民を雇い入れた。
将来の沿海・アムール・シベリア入植に備え、事前準備として樺太開拓に送っても、食料さえ確保できれば問題がない。

これがやれるようになったのは、先に蝦夷樺太開拓に入植した者達が、自分達の消費する食糧以上の穀物を生産してくれるようになったからだ。
幕府基準の年貢となる米ではなく、寒冷地でも確実に収穫できる蕎麦・大麦・燕麦・ライ麦・ジャガイモ・大豆などを栽培した事が大きい。

開拓団として蝦夷樺太に渡った者は、すでに二〇〇万人を超えている。
最大の開拓団である、元無宿人の野非人五五万人、それ以外の、先祖からの穢多非人一〇万人だけで渡海者はすまなかったのだ。
例年の不作凶作に苦しむ奥羽の民が、領地から逃げ出して蝦夷樺太に渡っている。
いや、奥羽の民だけではなく、日本中の人達が渡ってきているのだ。

それとアイヌの人口だが、幕府が天領となった時に調べたアイヌの人口は、二六八〇〇人だが、今では幾人になっているか分からない。
俺が俵物の買取価格を五倍にした事で、千島やカムチャッカ、沿海やアムールから多くの者が渡ってきているからだ。

彼らが小作人や労働者となって原野を開拓したり、漁師の手伝いをして俵物を集めてくれているのだ。
厳密にはアイヌ人ではなく他の部族なのだが、そんな事はどうでもいい。
彼らが莫大な利益を生む俵物の大増産につながり、彼らに十分な報酬を渡す事で、更に多くの蝦夷樺太に渡る者を生んだ。

そのお陰もあって、松前領の穀物生産高が四〇〇万石を超えるようになっている。
本来の年貢である米ではなく雑穀に過ぎないが、それで十分だ。
領民が飢えることなくお腹一杯食べることができるのなら、雑穀で十分なのだ。

製粉する費用や労力が貧民にはないので、雑穀を雑炊にして食べるしかないが、それでもお腹一杯食べることができて、飢えに苦しむ事がないのなら、多くの民が故郷を捨てて蝦夷樺太に渡ってくる、それが今の日本の現状だった。
それは百姓に限らず、微禄の下級武士の同じ状態だった。

その状態となっているからこそ、清国の奴隷や貧民を受け入れ、兵力とする。
下劣な方法だが、棄兵として使い潰す心算で、対露国戦争、対米国戦争に使う。

「北米派遣部隊:騎馬鉄砲隊」
装備  :火縄銃・槍・刀・保存食・軍馬三頭
千騎長 :五百石:  一騎:一〇〇両と二五〇俵: 一〇〇両と二五〇俵
副千騎長:四百石:  二騎: 八〇両と二〇〇俵: 一六〇両と四〇〇俵
百騎長 :三百石: 一〇騎: 六〇両と一五〇俵: 六〇〇両と一五〇〇俵
副百騎長:二百石: 二〇騎: 四〇両と一〇〇俵: 八〇〇両と二〇〇〇俵
騎士長 : 百石:一〇〇騎: 二〇両と五〇俵 :二〇〇〇両と五〇〇〇俵
騎士  :五十石:九〇〇騎: 一〇両と二五俵 :九〇〇〇両と二二五〇〇俵
合計  :   一〇三三騎:         :一二六六〇両と三一六五〇俵

「若党鉄砲組」ドライゼ銃で武装した騎馬隊
若党:八十名:三両一人扶持=二百四十両八十人扶持
伍長:九名 :四両一人扶持=三十六両九人扶持
什長:六名 :五両一人扶持=三十両六人扶持
廿長:四名 :六両一人扶持=二十四両四人扶持
組長:一名 :十両一人扶持=十両一人扶持
計 :百名 :三百三十六両百人扶持=五百三十六両
妻妾一人に付き一人扶持支給
実子一人に付き一人扶持支給
男扶持一日玄米五合=年玄米五俵
女扶持一日玄米三合=年玄米三俵

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