転生 徳川慶勝 日露開戦 日米開戦

克全

第48話一八二七年、逆嫌味

本当に腹の立つ奴だ。
俺は根本的に徳川家斉とはそりが合わないのだと思う。
こういう性格の人間とは一緒にいられないのだと思う。
多分家斉の方も、俺の事を嫌っているだろう。
身を護るためには、常に強力な兵力を側に置いておかなければいけない。
ドライゼ銃を装備した強力な部隊を、五千兵は江戸に常駐させておこう。

「上様の慈愛を国中に広めるのなら、元薩摩藩士を幕府が召し抱える事です」

「そんな事はできん。
今の幕府に五万もの武士を召し抱える余裕はない」

「薩摩大隅が蔵入り地になっております。
その年貢で召し抱えれば宜しいではありませんか。
何度も私に情けをかけろと申されたのです。
その言葉通りに、上様自身が情けをかけられれば宜しいのではありませんか」

「出羽守が薩摩大隅はほとんど米が取れぬと申しておった。
桜島がよく噴火し、その被害が大きいとも申しておった。
とてもではないが、五万もの者を召し抱えるのは無理だと申しておった」

「その無理を、私に押し付けられたのでございますか。
自分ではかけられない情けを、僅か八つの私にかけろと申されたのですね」

「いや、その、それは」

「どうやら私には、とても巫覡の役目は務まりそうになりません。
ここは御役目を引いて、蝦夷で静かに余生を過ごさせていただきます」

「まて、待ってくれ。
僅か八つで隠居は早すぎる。
役目が大変ならば、御告げ以外の時は無理に登城する事はない。
御告げ以外の事で呼び出す事もやめさせる。
だから余を見捨てないでくれ」

やれ、やれ、誰かに尻を叩かれらのだろうな。
まあ、誰かではなく茂姫で間違いないだろう。
島津家を取り潰すきっかけとなった、俺の事を恨んでいるのだろう。
大奥の力を総動員して、俺を追い込もうとしているのだな。
半ば正気を失っている家斉を、大奥にいる間中洗脳しているのだろう。

「見捨てるなどとは人聞きが悪うございます。
上様は東照神君の御告げなどには頼らず、御自身の御考えで御政道を行おうとされておられるのでしょう。
その胆力と覚悟には感服しております。
私のような、齢八つの童にはとてもできない事でございます。
どうかその胆力と覚悟でこれからも幕府を御導きください。
私は遠く蝦夷の地で上様の御健勝を御祈りしているます」

ふん、嫌味には嫌味を返してやる。
今の家斉の言動から察して、直ぐに俺に危害を加える事はないだろう。
だったら言われて傷つき腹が立ったことは、その分返してやる。
前世で流行ったテレビ番組では、倍返しなどといっていたが、それでは正当な報復から逸脱している。
俺がやるべきなのは、正当な報復、目には目を歯には歯をだ。

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