そんなに妹が好きなら死んであげます。

克全

第68話:下準備

 オードリー、ミネルバ、ルーパスは頑張って魔力を貯めた。
 特にオードリーとミネルバはルーパスから魔力の増幅法を学んだ。
 魔力器官を魔法袋化して無限に魔力を貯められるようにした。
 そのお陰で守護石はダミーにできるようになった。
 自分の魔力は全部魔力器官に貯めて、人界中から集めた守護石に貯めたられた魔力は、大魔王に対する交渉材料やダミーに使えるようになった。

「ルーパス、私は人界から第三世界への門を開くのは反対です。
 開いたとたんに人界が崩壊してしまう可能性があります。
 そんな危険は冒せません」

 大魔王との約束を守る事を認めたミネルバだったが、人界と第三世界を繋ぐのには反対だった。

「危険な事は私にも分かっている。
 だがこの前も言ったように、大魔王との約束を守らなければ、ミネルバにどんな危険が及ぶか分からないのだぞ」

 ルーパスは人界の危険よりもミネルバの方が大切だった。

「お母さん、お父さん、守護石が家族で魔界に行って、魔界から第三世界に繋げばいいと言っているのですが、それでいいのでしょうか……」

 オードリーがミネルバとルーパスに守護石の献策を伝えた。
 一年弱の間に、三人の関係はずいぶんと改善されていた。
 ルーパスにしてもミネルバにしても、互いに罪の意識があった。
 自分の間違いがオードリーを不幸にしたという忸怩たる想いがあった。
 しかも気がついたら赤子だったオードリーが美少女に育っていたのだ。

 とても動揺した状態で動き回っていた。
 家族として濃密な時間を過ごす事で、徐々に過度な罪悪感や動揺がなくなった。
 本来の、いや、死や衝撃の事実を経験する事で一皮むけた状態で、家族三人で暮らせるようになっていた。
 特にオードリーは、守護石が心に助言をしえくれるので、素直にお母さんお父さんと言えるようになっていた。

「そうね、それが一番人界に被害を与えない方法ね」

「人界の事も大事だが、これ以上家族で年齢が離れるのは絶対に嫌だぞ。
 誰かが急激に年を重ねてしまっているなんて、絶対に嫌だぞ」

 ルーパスの嘘偽りのない心の叫びだった。
 オードリーを長年一人にしてしまった事は、ルーパスのトラウマになっていた。
 それでも自分一人が歳をとるのなら我慢できるが、大魔王と対峙する時はミネルバが同行すると言っている。
 それではまたオードリーを一人ぼっちにしてしまう。
 それだけは絶対に認められない事だった。

「はい、守護石は家族三人で魔界に行くべきだと言っています。
 ただその時には、グレアムと馬達も連れて行けと言っているのですが……」

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