そんなに妹が好きなら死んであげます。
第56話:人心掌握術
「どうぞ、ルーパス様」
フリデリカは恐ろしくできる少女だった。
ルーパスに顔色を見て、オードリーに会いたくても会うのが申し訳ないと思う心情を見事に見抜き、的確に会うように勧めるべきタイミングに案内したのだ。
それを見事だとほめるべきなのか、そんな風に顔色を見抜かなければ生き残れなかったフリデリカを哀れと思うべきなのか……
「おお、オードリー、ごめんよ、ごめんよ、ごめんよ。
こんな不甲斐ない父親でごめんよ、本当にごめんよ。
どれほどの犠牲を払ってでも、お母さんを蘇らせてあげるからね。
それで許してくれ、オードリー」
オードリーに詫びるルーパスの姿を見るフリデリカは複雑な心境だった。
物心つく前に両親を亡くし、乞食のような生活をしてきたフリデリカだ。
村人の慈悲に縋りつくしか生き残る術のなかったフリデリカだ。
父親の無償の愛を目の前で見せつけられると、とても複雑な心境になってしまう。
自分を助け召し抱えてくれたルーパスと、その愛娘であるオードリーに尽くさなければいけないという思いと同時に、ほんの少しだけオードリーに意地悪したいと思ってしまう、相反する想いを抱いてしまっていた。
「フリデリカ、よくオードリーを世話してくれた。
これからもよろしく頼むぞ」
「お任せください、ルーパス様」
「これは給金とは別によく尽くしてくれるフリデリカへのご褒美だ。
単なる指輪としても美しいが、中に下位の風精霊が入っている。
主人はフリデリカにしてあるから、何かあれば使いなさい。
以前貸し与えた守護石と連動するようにしてあるから、よほどの敵でなければフリデリカを護ってくれるだろう」
「ありがとうございます、ルーパス様」
ルーパスはフリデリカの想いを察して心を取ろうとしたわけではない。
今のルーパスにはそんな風に他人の心を察する余裕など全くない。
グレアムやフリデリカには三カ月もの長い時間だったが、ルーパスにはほんの数時間の事で、大失態を犯した直後で精神的に一杯一杯なのだ。
だから心からフリデリカに感謝しており、その気持ちを素直に表しただけだった。
だが人の顔色を的確に見抜けるフリデリカにはそのルーパスに態度が一番だった。
自分のやった事を認めてくれて、言葉に出して手放しで褒めてくれた上に、命を心配して王侯貴族すら持っていないような宝物をプレゼントしてくださる。
例えそのなかに自分の娘も一緒に護ってくれという想いがある事を理解していても、感動して命懸けで仕えたいと思うには十分な動機となった。
「身命を賭してオードリー様にお仕えさせていただきます」
フリデリカは恐ろしくできる少女だった。
ルーパスに顔色を見て、オードリーに会いたくても会うのが申し訳ないと思う心情を見事に見抜き、的確に会うように勧めるべきタイミングに案内したのだ。
それを見事だとほめるべきなのか、そんな風に顔色を見抜かなければ生き残れなかったフリデリカを哀れと思うべきなのか……
「おお、オードリー、ごめんよ、ごめんよ、ごめんよ。
こんな不甲斐ない父親でごめんよ、本当にごめんよ。
どれほどの犠牲を払ってでも、お母さんを蘇らせてあげるからね。
それで許してくれ、オードリー」
オードリーに詫びるルーパスの姿を見るフリデリカは複雑な心境だった。
物心つく前に両親を亡くし、乞食のような生活をしてきたフリデリカだ。
村人の慈悲に縋りつくしか生き残る術のなかったフリデリカだ。
父親の無償の愛を目の前で見せつけられると、とても複雑な心境になってしまう。
自分を助け召し抱えてくれたルーパスと、その愛娘であるオードリーに尽くさなければいけないという思いと同時に、ほんの少しだけオードリーに意地悪したいと思ってしまう、相反する想いを抱いてしまっていた。
「フリデリカ、よくオードリーを世話してくれた。
これからもよろしく頼むぞ」
「お任せください、ルーパス様」
「これは給金とは別によく尽くしてくれるフリデリカへのご褒美だ。
単なる指輪としても美しいが、中に下位の風精霊が入っている。
主人はフリデリカにしてあるから、何かあれば使いなさい。
以前貸し与えた守護石と連動するようにしてあるから、よほどの敵でなければフリデリカを護ってくれるだろう」
「ありがとうございます、ルーパス様」
ルーパスはフリデリカの想いを察して心を取ろうとしたわけではない。
今のルーパスにはそんな風に他人の心を察する余裕など全くない。
グレアムやフリデリカには三カ月もの長い時間だったが、ルーパスにはほんの数時間の事で、大失態を犯した直後で精神的に一杯一杯なのだ。
だから心からフリデリカに感謝しており、その気持ちを素直に表しただけだった。
だが人の顔色を的確に見抜けるフリデリカにはそのルーパスに態度が一番だった。
自分のやった事を認めてくれて、言葉に出して手放しで褒めてくれた上に、命を心配して王侯貴族すら持っていないような宝物をプレゼントしてくださる。
例えそのなかに自分の娘も一緒に護ってくれという想いがある事を理解していても、感動して命懸けで仕えたいと思うには十分な動機となった。
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