そんなに妹が好きなら死んであげます。

克全

第29話:旅程4

「ギャアアアアア、たすけてくれ、たすけてくれ、ゆるしてくれ」
「やめろ、やめめろ、止めてくれ」
「かねならはらう、金なら払うから許してくれ」
「やめろ、やめてくれ、おれのような年寄りはかたくてうまくないぞ」
「いやああ、なんでもあげる、なんでもしてげる、だからたすけて」
「こどもだ、こどもをくれてやる、こどものほうがやわらかくてうまいぞ」

グレアムが町を出て領地を目指している頃、町は地獄絵図となっていた。
守護石が判定した結果に従い、モンスターが町の住民を虐殺していた。
中には襲われない人間もいたのだが、子供や老人でも襲われる者がいた。
老人の中には若い時から悪行を重ねてきた者が多い。
優しい人間ほど踏みつけられて若死にするのがこの世界だ。
長生きしている人間ほど性根が腐った奴が多かったのだ。
少なくともこの町ではそうだったようだ。

「やめろ、こら、やめやがれ」
「おい、こら、用心棒の癖に逃げるな、僕を助けろ」
「あいつをくえ、びんぼうにんのあいつをくえよ」
「やめろ、僕は金持ちなんだぞ、僕を喰ったらただじゃすまないぞ」
「やめろこのやろ、みんなを離せ、こら、くそ、倒れろ」

子供がモンスターに殺されたのも同じ事だ。
ちゃんと躾けられていない子供はとても残酷で身勝手だ。
両親をはじめとした家族が悪人なら当然悪人に育つ。
だれも良識を教えないのだから良識などなくて当然だ。
そんな子供が弱い立場の子供を虐めないわけがない。
貧しい家の子、権力に縁ない家の子、気の弱い子を平気で虐める。
殺さんばかりの残虐な虐め方を平気でやる。

「おい、逃げるぞ、命あっての物種だ、ガキ守って死んじゃ何にもならん」
「だったら行きがけの駄賃に金目の物を盗んでいこうぜ」
「そりゃいい考えだ、根こそぎ持ち出そう、ウギャアア」
「モンスターだ、逃げろ、逃げるんだ」
「「「「「ギャアアアアア」」」」」

守護石がそんな子供を見逃すわけがない。
そもそもオードリーの良識でギリギリ抑えられているモンスターだ。
何があってもオードリーを護りたいというルーパスの想いが籠っているのだ。
そんな守護石がオードリーへの悪意に反応しない訳がないのだ。
反応してルーパスの想いが前に出た時、無差別虐殺が起こって当然だった。
それをまだオードリーの想いのお陰で、悪意を放っている人間だけの殺害になったのだから、感謝されていいくらいだった。

「大丈夫だ、お父さんが必ず護ってやる、だからこの中から出るんじゃないぞ」
「お父ちゃん」
「あんたぁ」
「わぁああああん、おとうちゃん、おとうちゃん」
「泣くんじゃない、大丈夫だ、必ず護ってやる、だからなくんじゃない」
「死んじゃ嫌だよ、お父ちゃん」

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