そんなに妹が好きなら死んであげます。

克全

第12話:復讐2

ギネビア王妃にも復讐が始まっていた。
年齢を重ねて容姿の衰えた王妃は国王に放置されていた。
いや、そもそも政略結婚なので、跡継ぎさえ産めば自由だった。
だから国王が愛人と会っている時間は王妃も愛人を呼ぶ。
この日の相手は某男爵家の令息だった。

若く艶やかな肌と鍛え上げた肉体。
女性を喜ばせる巧みな愛の言葉。
今王妃が一番気に入っている愛人だった。
この日も獣欲を満たして満足していたのだが、急に手足を縄で木に縛られた。
何かのプレーかと思っていた王妃だが、違っていた。

某男爵令息は木と縄で大の字に縛った王妃に猿轡をした。
そして事もあろうに秘密の寝室から運び出したのだ。
幸か不幸か密会中の寝室近くは人払いがしてある。
誰にも見つかることなく、王妃は謁見バルコニーに連れてこられた。

「うぅぅう、うー、うー、うー」

王妃は必死で罵っていたが、全く言葉にならなかった。
王妃は人に命令する事に慣れていた。
国王以外なら唯々諾々と従う事が当たり前だと思っていた。
それが歯牙にもかけられずに乱暴に扱われてしまう。
王宮で一番目立つ場所、バルコニーに連れてこられてしまった。
時には国民の代表を集めて国王が大切な演説をする場所。
真っ裸で木に縛られた状態でそこから落とされ吊るされた。

普通なら大騒ぎになる大事件だった。
大恥をかいて王宮の奥深くで隠れて暮らさなければならない大事件だった。
だが今の王宮では大したことではなかった。
そんな事に騒いでいられるほど王都は平穏な状態ではなかった。
だからといって王妃の恥がなくなるわけではないのだが。

オードリーが自殺したのは夜遅く、日付も変わって二時間経った頃だ。
普段から夜遅くまで遊び惚けているのが社交界だ。
だがそれでもそんな時間まで王宮にいる者は限られる。
ただその日はオードリーを笑い者にして、ジェイムズ王子との婚約を解消させた。
ジェイムズ王子の新たな婚約者としてモードが選ばれた。

多くの者が王宮の晩餐会場に残ってオードリーの悪口で盛り上がっていた。
アバンチュールを望む者は相手を物色して休息室で楽しんでいた。
国王と王妃が愛人と一緒に退室してからは、一気にその傾向が強くなっていた。
多くの貴族が獣欲を剥き出しにしていた。
それが呪いにも影響していたのかもしれない。

多くの貴族が呪われ本性に相応しい姿になっていた。
冷酷な者はリザードマンに変じ、獣欲の強い者はオークに変じ、小心者はスライムに変じ、陰湿な者は蜘蛛人間に変じ、下劣な者はコボルトに変じた。
中には人間のままの姿をとどめる者がいたが、それはオードリーに直接悪口を言って顔を覚えられていたモノだった。

守護石は彼らが見るもおぞましい姿になったモノに襲われるようにしたのだ。
獣欲と食欲に狂った化け物に襲われるように仕向けたのだ。
その中には、没落して身を任せるしかなかった某子爵令嬢を休息室に連れ込んていた、フィアル公爵アレグザンダーもいた。
フィアル公爵は化け物の雄に襲われた。
それは見るのもおぞましい光景だった。

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