アイドルに救われた男は、二度目の人生でアイドルを救うために芸能界を目指す。〜気づいたら国民的俳優に〜

ドラ猫

第六話 時が過ぎ、、、

俺は3歳になった時に、子役としてオーディションを受けた。オーディションといっても軽い面接のようなもので、「この子は伸びるか」「個性があるか」などを見られたらしいが、受ける側としてはそんなのわからない。

結果としては合格。当たり前だ。大人が3歳用のテストを受けて受からなかった方がおかしい。少し不安だったのは、子供らしい自由さ、というものが必要だったということ。そこはなんとか、この三年間で培った子供の演技で乗りきったが、、、。

特に印象深かったのは次の二問。

「なぜ子役になりたいの?」と言われれば、

「お母さんのお手伝いをしたいからです!うちはお父さんがいないので、その分ぼくが頑張りたいと思いました!」

「将来の夢は?」と問われれば、

「お母さんと妹を幸せにしてやりたいです。あと、好きな子ができたら、その子も幸せにしてやりたいです。」

と答えてやった。周りから見れば異質なほどにしゃべりが良く、その内容も個性があった。将来の夢はと聞かれて、大女優!とか、有名モデル!とか答えるのが普通だろうに、俺は好きな子を幸せにするといったんだ。つまり、芸能界入りは夢の通過点に過ぎず、有名になるのが目的ではなく、幸せになるのが目的だと。3歳では達観し過ぎている。

俺の付き添いできていた母は泣きそうになっていた。


そんなこんなで合格した俺は無事に、明美さんの勤めている"アサヒ芸能事務所"に所属となった。

アサヒ芸能事務所は、赤身さん曰く「昔は凄かったけど、今は小規模」と評していた。でも、明美さんのあの自信ぶりから言えば、仕事に困ることはないだろう。本来、無名事務所や小規模事務所では金もなく、タレントを売り出すためのコネもない。金を稼ぎたいタレントにとってこれほどの悪環境はない。本当なら大手芸能事務所にでも入ったほうがいいと思うけど、俺は明美さんを信じることにした。





事務所に所属した俺は、それから演技の練習をしまくった。大人の頭脳を持ってすれば、ある程度の演技をすることは可能で、明美さんも驚いていた。予想はしてたけどこれほどまでか、と。

一年ほど練習の期間を設け、オーディションを満を辞して受けに行った。


そして、俺のデビューは"ファミリー〜幸せの形〜"という作品で、俺が4歳の時だった。

この作品は、主人公が5年間育ててきた息子が、病院で取り違えられた他人の子供だったいう衝撃の事実から始まり、血か、愛した時間のどちらを選択するのか。それぞれの家族が選んだ“究極”の選択を描いていくストーリー。

俺はその取り違えられた子の役を演じた。

真実を明かされた時の泣く演技、子供らしい感情が不安定な様子などがよく演じられてると少し話題になったらしい。

俺としては、はじめての撮影ということで結構緊張していた。ロケなんて当たり前で、知らない俳優さんに抱っこされたり、母親役の女優さんにほっぺにキスされたり、いろいろ初めてだらけだったけど、なんとかやり切った。

だが、こんだけ頑張っても子役のギャラは少ない。10万円にもいかない。これじゃあ、全然ダメなんだ。


しかし、次の仕事は意外と早くきた。どうやら、監督さんが俺の演技を見てくれていたみたいで、ぜひ使ってみたいと思ってくれたらしい。

作品名は"愛犬ラック"。これまた愛の物語だが、今回はなんと連続ドラマにダブル主演として出ることができた。前回は2時間ドラマだったけれど、今回は連ドラ。しかも、ダブル主演。プレッシャーが半端なかった。

ラック役の犬と、一日中駆け回ったこともあったし、周りの大人たちが優しくしてくれて、すでにこの頃にはあのプレッシャーには慣れていた。

ちなみに、ギャラは100万くらいになった。連ドラで主演子役だとこれくらいが相場らしい。

もっと驚くべきなのは、この作品によって、"ザテレビジョンドラマアカデミー賞"を受賞したことだった。これによって、少しずつあの子見たことあるなというレベルには達してきていた。まだ、二作品しか出ていないというのに驚異的なスピードであった。

受賞したのは、6歳になった時だった。




その後、波に乗るように今度は自分の仕事を自分で掴みにいくことにした。明美さんが強くお勧めしてきたのだ。当時、俺は小学校に入学したてだった。

今までは特に名前なんて気にすることはなかったけど、少し有名になってきたことで、子供たちはともかく、親たちが騒ぎ出すことがあった。

そんなこともあって、平凡な学校生活を送りたかった俺は、芸名を用いることに決めた。いくつか考えたけれど、俺の心はすでに決まっていた。


ーーー赤城司


これは姫城桃奈から、城という字を取り、本名、赤司誠を元にして作った感じだ。どことなく似てるのですぐにバレそうだけど、ももっちと同じ文字を含んだ名前にして俺は満足だった。ちなみに、学校では伊達眼鏡をつけることにした。


先ほど、自ら仕事をとりに行ったといったが、それはあの有名なドラマの主人公の幼少期役であった。9月に300人ほどの子供が集まり、オーディションが行われた。

結果は圧勝。他の子たちとは違った独特な雰囲気を持ち、圧倒的な演技力で迫っていった。顔立ちも整っていて主演俳優の幼少期として申し分ないとされた。

作品名はMHK大河ドラマ"龍馬〜日本の夜明け〜"という知らない人はいないドラマ。当時、女性に大人気の俳優、高沢健斗の幼少期役ということでかなりの注目を浴びた。

ちなみにだが、高沢健斗さんとはそれ以外仲良くなり、たまに遊び相手になってもらった。この人は性格もこれまたイケメンで、俺のことをかなり歳の離れた弟のように扱ってくれた。


またもや俺に興味を持ってくれた大手飲食店チェーンの社長が俺のことをCMに起用したいと言い出してくれた。他にも2人か子役がいた。その子たちの名前は、金澤花(10)と、弘中沙羅(9)だった。

8歳の俺からしたら少し年上の女の子だったけど、精神年齢的には相当年下だった。最初はぎこちない感じだったけど、数回会うにつれてかなり仲も良くなって、今度一緒に遊びに行こ、なんて誘われるようになった。


連続ドラマダブル主演からのザテレビジョンドラマアカデミー賞受賞、大河ドラマ出演、CM起用。

俺の子役業はなかなか順調だった。しかし、今後はさらなるスピードで有名になっていく、、、。








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