呪いで常識を失ったのでロリと旅に出る

こが

第287話 俺の神はそこにいます

出発の準備をするためにまずどのくらいの日数がかかりそうか調べたが、馬車に乗っていく場合一旦王都に寄るか別の小さな村に寄る必要があるとのこと。そらそうか、王都からここに来るのに森を一直線で行っても何日かかかる。そもそも直線ルートで来たのがおかしい。

しかし馬車を使えば大回りをしなければならず、安全な道を通るならさらに日数が増えて徒歩よりも時間がかかる。ダンジョン街というだけあってケイブロットは変な地形に囲まれていたりする。

つまり宗教国家に行くのにも一直線に突っ切っていくのが手っ取り早いが危険がいっぱい、ということだ。テレポートで連れて行ってもらおうかと思ったがクロエもイリスも近寄っていないので物理的に不可能ということ。宗教関連はまともな人間いないから行きたくないのわかる。俺は女神様教徒だけど普通。

今回のパーティメンバーは俺とクロエとめぐの三人。戦力的には充分だけど女神様の弱体化があるから出来る限り戦闘は避ける方向で行きたい。もし戦闘になりそうだったらクロエにスリープを頼んで全員眠らせる方向で。

というかもしも問題が起こった場合全員眠らせて無理やり突破で行きましょう。面倒ごとに絡まれたくないなら全員の記憶を消すんじゃなくて、全員の記憶に残らないように大規模で仕掛けるべし。それはそれで大事件だけど。

まず問題児二人を送り出し何かあったらあかねに頼るようにと丸投げしておく。イリスがいればすぐに戻って来られるし、前回狂獣化のきっかけになったような人さらい事件も防げるだろう。むしろ攫おうとしたほうが厄介なことになりそうまである。

あの時攫ったのは魔族だったらしいが、今のイリスとフラフィーなら何とかなるとイリスも言っているし大丈夫だろう。今度はフラフィーも戦力になるし二人がかりでやれるしな。

というわけで準備含めて十日で宗教国家ロックベルに到着した。

そして当然のように問題が勃発した。起こさないと決めていたのになんでだろうな?

「あなたはなんの神を信仰していますか?」

街についた時、門番の人にそう言われたことがきっかけだった。街の外観は高い壁に囲まれて中が見えず、透視の力を使って覗こうと頑張っていたらふいに声をかけられた。

街まで護衛込みの乗り合い馬車で来たけど何もなかったので気が抜けていたのもあると思う。戦闘回数は数回程度、どれもクロエが片付けてくれたので俺は何もやることがなかった。

御者は門番の一人と顔見知りだったようで、少しのやり取りの後早々に荷馬車の中身の確認をしていた。今回は前回と違い御者の横に座って待機していたため暇そうにしていたのが目に止まったのだろう。

「俺の神はそこにいますよ」

間髪入れずにめぐの方を示し答えた俺に門番の人は訝しげな顔をする。真っすぐ曇りのない目と優雅な態度で伝えた俺の言葉は冗談だと思われたのか、すぐに門番は苦笑いを返してくれた。笑ってんじゃねぇよ。

「そうですか、旅の人ですものね。そういう事もあるでしょう。ここでは月の神を信仰しているのでそういう冗談はやめた方が良いでしょうね」

ふむ。俺の女神様への信仰心を試しているのかな? ちょっとぴきってきたが、相手も神を信仰する身。確かに自分の神を肯定してくれない相手にはあまり良い感情は持たないだろう。

俺は女神様大好きだが、他の神を信仰している信者には寛容であるべきだと思い直した。俺も逆の立場なら心象はよろしくないと感じるだろう。それならばと丁寧にめぐのすばらしさを伝えようとしたときクロエがカットインしてきた。

「キミヒト、後ろがつかえるから今はそういうのほんといいから」

「大事な話なんだ」

「ほら、語る機会はいつでもあるでしょ?」

それもそうか。門番で開口一番こんなことを聞いてくるくらいだから、ちょっとした街の人も聞いてくるかもしれない。例えどんなことになろうともめぐ以外の神を信仰する気はないと伝えないといけない。

お互いの神の素晴らしさを語り合えるとはなんて素敵な街なのか。ちょっとワクワクしてきたわ。これが宗教国家……いや実際は国家じゃなくて街だけど良い所なんじゃなかろうか。

「……ねぇめぐ、キミヒトが何かおかしいんだけど」

「……ある意味いつも通りではありますけどね。もう一度言っておいた方が良いかもしれません」

「そうね。この感じは絶対問題起こすわ」

信頼感があついぜ。俺がいつ問題を起こしたというのか。

しかしクロエが俺の事をおかしいと言うのはちょっと変だな。今までどんなことをしてきても呆れて何も言わないとかそういう事はあった。でもいつもと感じが違うというか、かなりマジな感じだ。ちょっと強めに不屈を発動しながら考えてみるか。

……うん。なんか、何かに干渉されてるな? でも嫌な感じじゃなくてこう、楽しくなるというか心の拠り所として安心するというか、ふわふわした気持ちになるような?

「ねぇキミヒト、ここにはめぐのために来たんだからね? 本当の本当にお願いなんだけど、絶対問題起こさないでね? あなた何されても基本的に怒らないけど女神様関連だと短気なんてレベルじゃないんだから気を付けてね? 特に崇める神が違うからって自分の主張を通そうとしないでね? 絶対目をつけられるからね?」

「私からもお願いします」

「大丈夫、神を信仰するもの同士仲良くなれるさ」

こんだけ念を押すって事はやれって事だな。

そしてやった結果、お尋ね者になりました。

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