呪いで常識を失ったのでロリと旅に出る

こが

第283話 俺を殺しに来ている

「なぁめぐ、さっきの事なんだけど」

「えっ!? も、もういっかい……?」

なんか期待感に満ちてる眼差しを向けられて非常に心が揺さぶられるけどそうじゃない。もう一回したいかしたくないかで言われたら当然したいに決まってるけど今それしたらもう取り返しがつかない。

ラブコメから完全に成人指定のゲームになってしまうこと間違いなしだ。せっかく霧散させた良い雰囲気をすぐさま復活させるとか流石女神様。人間には出来ないことを平然とやってのける。そこに痺れてしまうし憧れの人だって再認識させられる。

「期待に応えなくて悪いんだけど、俺の事引き戻してくれた話」

「あ、はい。そうですよね……あ、でも勘違いした妹におしおきとして……?」

「それも違います」

なんだこの女神様は。欲しがりすぎだろう。ちょっと色んな意味で心配になって来た。主にめぐがではなく俺の理性がという意味で。みんないるとこでこれやられたら楽しいことになりそうだなー……。

あかねはなんだかんだで許してくれそうだけど他の面子は……事前に説明しててもどんな行動にでるか予測がつかない。スキル強化も限界っぽいし生きていられる保証がどこにもないな。盛り上がって来たぜ。

「あれは……天界関係じゃなく魔界関係のものだからですね。一応女神の使徒としてお兄ちゃんは存在しているけど、堕天させられそうになったと言えばわかりやすいかな?」

めぐが言うにはダンジョンは女神側も魔王側も干渉出来るらしく、結構複雑な事になっているらしい。前に女神の使いが自動で管理しているとか言っていたが、魔王側もなにかしらの干渉を行っていたこともわかっているらしい。

とは言っても実際にそうやって魔王側から被害を出されるようなことはなかったらしいし、俺くらいの適正を持っている人は稀というか見たことがないらしい。

めぐの直接の使徒の俺だからこそ、めぐは止めることが出来たとの事。自分の使徒が取られそうになったら気付くよねって話。めぐが『お兄ちゃんは私のものです!』って主張したみたいで非常に心温まる。

俺は大岡裁きでめぐになら体が真っ二つになるまで引っ張ってほしいと思うくらいの狂信者だから所有物扱いされてめちゃくちゃ嬉しい。

「なるほどな。それで、もしそのままだったらどうなってたんだ?」

「それは……わかりません」

わかってそうだけど言えないって事か。めぐが言えないならそれ相応の理由があるんだろう、あえて掘り下げて聞く必要はなさそうだな。本当に必要だったら教えてくれるだろうし気にしないことにしよう。堕天するのが近いということだから悪魔にでもなるんだろうか。

「そっか。ところでお腹空かないか? ずっと寝てたし食事に行かないか?」

「……うん行く」

寄りかかっていた俺が動いたことでちょっと名残惜しそうなめぐが愛おしい。俺も出来ることならまだまだいちゃいちゃしたかったが、正直また甘えられたら理性がふっとびかねないので一時離脱。

これ以上の進展はみんなに話してからにしたほうがいいだろう。もしかしたらめぐは神気減ってるからこそこういう感情が強まってるのかもしれないし、神気が回復したら収まるかもしれない。

もし収まったら少しもったいない気もするけど、女神と信者の関係も心地いいし元通りになってから考えていきたい。もし先に色々して神気戻ってなんでしちゃったんだろみたいな空気になるようなことはしたくないからな。

「お兄ちゃん、肩貸して」

「肩どころか全身貸してやるわ」

「あっ」

まだ調子が悪そうなめぐをお姫様だっこで抱え上げ廊下に出ようとする。最初は戸惑っていためぐだが、手を首に回すんじゃなく俺の胸元を掴むようにして顔をうずめてくる。

おいおいその行動は俺の性癖に刺さるからまじで気を付けてくれよ。わかってくれるだろうか、首に手を回していちゃいちゃするのも悪くはないが、恥ずかしそうに顔を胸元にうずめてくるロリの可愛さを。

身長差があるからこそのこのフィット感。さらに首に手を回さないことによって必死に胸元にしがみついている事から感じられる庇護欲。そして俺を信頼しているからこそ前を見ないというこの行為。

俺を殺しに来ているぜこの女神。すき。

「お、お兄ちゃん?」

俺がめぐの行動に感動し硬直していると、不安げにこちらを見上げてくる目と目が合う。あー、うん、ええと、スイッチ入りそうでやばい。いつも通りに簡単に触ってしまったけどさっきまでの余波で結構きてるわ。

みんなに話してからの方が良いとか後悔したくないとかそんな感情全部ふっとんでめぐのこと幸せにしてやりたいという気持ちがふつふつと沸いてくる。めぐも顔赤くなってきてるし、なんだったら目をつぶって少しあご持ち上げてるしこれもうだめだろ。

自分の理性がこんなに弱かったことにかなり驚きながら、もうなるようになれと言わんばかりにベッドに戻ろうとして足を踏み出したその時。

ストン。

何かが床に落ちる音がした。落ちたにしては気持ちの良い音で、まるで何か軽いものが地面に刺さったような、そんな音。

ストン。

もう一度その音がした。俺は今扉に背を向けている。そして階下に行くために扉は一度開けている。お姫様抱っこしたまま扉を開けるのは危ないと判断しての行動だったが今は非常に危機感を覚えている。

ストン。

三回目。距離は変わらないが、圧力、迫力が増してきている。胸の中にいるめぐも震えているようでこの恐怖が幻聴でも偽物でもないという事を伝えてくる。

ストン。

四回目。

ストン。

五回目。

恐ろしいが意を決して振り返ろうとすると。

「こんにちは」

限界まで目を開きハイライトの消えた瞳孔のフラフィーに首元に包丁を突きつけられた。俺を殺しに来ているぜこの猫。怖い。

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