呪いで常識を失ったのでロリと旅に出る

こが

第270話 膝枕してください

ダメでした。

「ははは、人間は弱いのぅ。ちっとは期待しとったんじゃが……」

「ちっくしょ……」

不意打ちすらも正面から砕かれる実力差がある以上、やはり先手をもらったところでこっちの攻撃手段なんてほとんど意味をなさない状況になっていた。というか一方的になぶられている感じ。

俺の盾としての性能は意味を成していないし、俺が主に攻撃してくるからとりあえず対処しているだけというのがありありとわかるほどの余裕。魔王軍の四天王ってこんなに強いのぉ?

これ魔王ってまじでやばいんじゃね……。

「てぇい!」

「ふん」

めぐの神気を纏った攻撃でさえも正面から防ぐ。もちろん俺がケイティにスキル封じの防御をかけているにも関わらずだ。肉体強度があまりにも違いすぎるため戦いにすらなっていない。

俺のスキルをあえて食らった状態でそのまま対応する舐めプレイである。最初破ったのは実力差を見せつけるためと、俺達が戦うに値するかもというちょっとした期待を持っていたという事がわかる。

だって段々やる気なくなってきてるものこの子。

「しかし、その神気を持っていながらこんなに弱いとはのぅ。隠された力の解放とかあったら使ってみぃ。特にそこの小娘、まだ全力じゃないんじゃろ?」

「はぁ……はぁ……」

めぐは肩で呼吸しながらもその目にはありありと闘志が宿っている。さっきまで強気だった事といい、この迫力を持ってすれば確かに何かあるだろうと思うだろう。実際に本気を出していないように見える。

しかし俺にはわかってしまう。これはかなり本気だ。

毎日みんなの目を盗みながらアイドルの熱狂的なおっかけよろしく常に女神様を観察してその一挙手一投足、体を流れる魔力の質までじっくり見ていた俺はめぐが限界に近いことがわかる。神気を纏っていても全力で解放できるのはほんの一瞬のみ。

めぐも言っていたから確信が持てたが女神様の入っているめぐの肉体が持たないのだろう。相手の動きを一瞬だけ止めてそこに今ある全ての神気をぶちかませれば何とかなるかもしれないが……いけるか?

「さて、わしはここから一歩も動いとらんのじゃが、全力を出さないのならばつぶしてしまおうかの。面倒なスキルも持っておるし邪魔だしの。まずは小娘から……? ほう、やはり人間は守るものがあった方が強そうじゃの」

「まずは俺だろのじゃロリ」

「お兄ちゃん……」

ケイティがめぐの方に近づいたため全力で間を遮る。正直肉体がはじけ飛ぶ未来しか見えてこないがめぐを守るためなら命をかけよう。こいつを撃退するためにめぐに全てを託す。

俺の信じる女神様なら、例え人間の姿になっていようとも本気を出せば撃退することくらいなら出来るだろう。俺が隙を作れば女神様なら出来る、戦える、みんなを助けてくれる。

「いいのういいのう、やはり本気の目はいつ見てもそそるのう」

「俺もお前がのじゃロリじゃなかったらそそるんだけどな」

俺の決死の覚悟が伝わったのかケイティは俺にがっつりと目線を合わせる。さっきまで退屈そうにしていた目ではなく、確実に戦闘を楽しんでいるそんな目に変わり殺意が膨らんでいく。

俺はアダマンタイトの剣を握り直す。どんな行動が来ても一撃を耐えてみせるつもりで構え、ケイティの動きを注視する。当然全てのスキルを全開まで発動させ受ける準備は万全。

だがそれでも動きを捉えることは出来なかった。

「ククク、わしに対してその軽口、敬意を表してやるぞ」

「が、ふ……」

ケイティの手刀は俺の腹を捉え、不屈、防御、守護の光、全てを纏っている俺の体を貫通しそのまま突き抜ける。幼女の細腕が俺の体を突き破っている。

凄まじい激痛が走るが心臓をやられたわけじゃない、そして俺は不屈によって意識を失わず何とか耐える。死ななきゃ安い、そうだろう?

そして、これでいい。

「めぐ、やれえええ!」

「うん!」

後ろで神気をこれでもかと練り上げていためぐは今までの比じゃないほどの神々しさをその身に宿している。そしてその全てを腕に集約させてケイティに殴りかかりに行く。

流石にこの攻撃を生身で受けたらこののじゃロリもただではすまないだろう。今までの数倍は神気を練り上げて、めぐも体の限界に近いことになっている。もちろん攻撃すればどちらもただでは済まない諸刃の攻撃。

「そう簡単にやらせ……お主、死ぬ気か?」

「……そうだよ」

腕を引き抜き、回避もしくはガードの姿勢を取ろうとしたようだがそうはさせない。刺さっている腕を根元からしっかり押さえ、軽く後ろに体重をかける。そうするとどうなるか。

身長差によってのじゃロリは前のめりになり、少し浮く。

そんな状態で踏ん張りが効くはずもなく俺の体から腕を引き抜けない。当然俺の中身はかなり大惨事になるがそこは不屈で我慢。極太のオークの腕とかだったらきつかったけど、そこは見た目小さなロリ、幼女の細腕だからセーフ。セーフじゃないけどこぼれる中身もだいぶ少なく済んだ。

そしてその一瞬の隙があればめぐの攻撃は間に合うわけで。

「ありがとお兄ちゃん!」

「む、ぐ」

めぐの拳が容赦なくケイティ顔面に迫る。ケイティはとっさにもう片方の腕でガードを入れるが、めぐの拳は一度引かれ的確にガードを外してからレバーに思いっきり拳をねじり上げるように叩き込む。この状況でフェイント入れるとか何この子冷静過ぎ怖い。

構えた所に来なかったせいでケイティはもろにくらい吹っ飛んでいき壁に叩きつけられ辺りは静かになる。

「流石、俺の、女神様」

「はー……、はー……! お兄ちゃん、しっかり!」

慣れているとはいえお腹に風穴が空くのは流石にしんどすぎる。めぐは俺の収納をまた勝手に発動しポーションを取り出し俺に振りかけてくれる。ああ、女神様も相当しんどいだろうに看病してくれるのめちゃくちゃ嬉しい。意識飛びそう。膝枕してください。

体から流れる血は中々とまらず割と真面目に不味い状態になっている。フラフィーに刺されたりイリスにやられた時に比べて明らかにやばい。やっぱあの子達死なないように気を付けてくれてたのかなぁなんて思うわ。

俺がこの重傷を負ったことを知ったらこれからは流石に控えてくれると信じておこう。

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