呪いで常識を失ったのでロリと旅に出る
第257話 イリス視点
フラフィーはずるい。私にないものをみんな持っている。感情表現が豊かで、人を明るくさせる素質、一緒にいると元気になるような雰囲気。私がいなくてもフラフィーがいればキミヒトはきっと大丈夫。
そう思ったからキミヒトとフラフィーを逃がした。でもそれはフラフィーを調子づかせることにしかならなかった。こんなことを思うのはお門違いかもしれない、あんまりよくない事だと思う。
でもあの時、逃がすのはキミヒトだけにしておけばこんなにフラフィーがキミヒトと良い仲になることは無かったと思う。少なくとも結婚式という行為を防ぐことは出来た。
でも、この記憶を持って戻っても、たぶん私はフラフィーを助けてしまうだろう。だってもう、フラフィーは私たちの大切な仲間なのだから。
でもずるいものはずるい。
なのでここで上下関係をはっきりさせておかなければならない。私の方が強い、私だけがキミヒトにくっついていて良い。猫に入る隙間は与えない。
「『狂獣化』」
フラフィーからの圧迫感が強くなる。なるほど、これは確かに狂獣化だ。前の世界では暴力性がかなり失われ完全に嫉妬に狂ったただの猫だった。しかし今回のこれは完全に別物だ。
周りの精霊も騒ぎ始める。あれは危険な代物だと。
なんだ、戦えるじゃん。
「私はもう、ただ守ってもらうだけじゃありません」
うん。見ればわかる。頑張ったんだろう。前の世界では全く制御出来ていなかった。キミヒトに落ち着かせてもらっても使えるようになる兆しすら見えなかったそのスキルを使えるようにしたんだね。
ちょっと嬉しい。私とお姉ちゃんに勝てる人なんてそうそういなかった。勇者という特別な存在、それくらいだと思ってた。
でも、フラフィーもここまで来たのか。嬉しいな。動いていないけどそれはちゃんと扱えるスキルなんだよね? 見掛け倒しじゃないんだよね?
「……巨乳、それは」
思わずこぼれてしまう。それはちゃんと扱えるのかと。私とまともに戦えるものなのかと。
「これが、私の全力です。受けてくれますよね?」
フラフィーからは熱を帯びた視線と感情が飛んでくる。この感情は、嫉妬だろうか、羨望だろうか、慈愛だろうか、後悔だろうか、とにかくぐちゃぐちゃなのにそれでもフラフィーを構成しているそのものだと伝わって来る。一番強いのは嫉妬だろう。前の世界でもそうだった。
これがフラフィーの本来の狂獣化。感情を高ぶらせ、一気に解き放つ技。私の技と似ている技。ああ、ちょっと高ぶってきたかもしれない。
だから私は答える。
「もちろん」
いいじゃん、少しはちゃんとした戦いになるかも。
って私はいつからこんなにバトルが好きになったのか。おかしい。でもいいか。
今は合法的にキミヒトの奪い合いが出来る、それだけで。私がキミヒトの嫁、フラフィーはペット、その位置づけをはっきりさせてやろう。あんな胸に脂肪の塊をくっつけた猫にキミヒトはやらない。
巨乳死すべし。
「土の精霊、かもん」
私はフラフィーの攻撃を正面から叩き潰すために土の精霊を自分に宿らせる。転生後の私の魔力は無尽蔵に近いほど高まった。それでもお姉ちゃんには遠く及ばないけど、一つの精霊を宿すくらいなら全然問題ない。
フラフィーは私が精霊を宿している所を見逃さず突撃してくるが、こっちの方が速い。正面に魔法防壁をはり、いつしかの宿屋の再現……。
「甘いです!」
「へぇ」
フラフィーは爪の一点に守護の光を集め私の防壁を無理やりに突破しようとする。面ではなく点の衝撃に私の防壁に少しずつひびが入っていく。土の精霊の力を使って防御力を高めているのにこの威力。
なるほど、貫通力という点においては私の防御を少し上回っているようだ。後に聞いた話だけど、これはキミヒトが剣に守護の光を纏わせてあずきを討伐したときのを真似たものらしい。腹立たしかったのでビンタしたら凄い驚いていた。
私の魔法では耐えきれない、それじゃあどうするか。簡単だ。
攻撃すればいい。
「ファイアストーム。横向き」
「ちょ!?」
フラフィーは咄嗟に防御の構えをとり、直線的に放たれた炎の渦を真正面から受けて後ろにおされて行く。あれも守護の光の効果かな? 魔法が当たる直前に良い感じに耐えきっている。土の精霊を宿しているからと言って他の魔法を使えないとは言っていない。
ドラゴンのブレスと同じくらいに調整したけどこれが耐えられるなら前回のドラゴンに対抗できるかな。強くなったなぁフラフィー。自称女神の及ぼす影響大きすぎる。
「じゃあ次、ロックフォール」
「いやそれ死んじゃいますって!?」
私は炎の渦を撃ちながらさらに空中に岩石を魔法で作り出しフラフィーにめがけて落下させる。うむ、巨乳もこうすれば平らになるよね。別に嫉妬しているわけじゃない。ただ目障りなだけ。大丈夫、たぶん死なないはず。
全部ぺったんこになるかもしれないけど大丈夫。あの感じの防御力なら直撃してもぎりぎり耐える。
「ああもう……! 『受け流し』」
「……すごい」
フラフィーは降って来る岩の軌道を片手で無理やり変えてそれを炎の軌道に落とした。そうすることによって一時的に私からはフラフィーが見えなくなるが、そんな事よりもあの岩を受け流せることに驚いた。
あれは私の魔力で出来た岩。普通の岩とは別の物。私の意思で出来ているから私が狙ったところに正確に落ちるはずだった。でもフラフィーはそれを捻じ曲げた。なるほど、受け流しのスキルもちゃんと磨いていたんだ。しかも素手で出来るように。
やる。
「イ、イリスさん……ちょっと、本気出し過ぎ、じゃないですか?」
火傷している片腕で、もう片腕の脱臼を無理やり治しながらフラフィーが岩の陰から顔を出してくる。流石に無傷じゃなかったか。でもそれだけで済ませたのは本当に凄い。
「全力でっていうから」
「私が全力を出しているんですよ! そっちも本気出したら勝てるわけないじゃないですか!」
何を言っているのか。まだ自分が本気を出していないことに気付いていないのだろうか? 無意識にリミッターがかかってる? じゃあこれは外してあげたほうがいいのかな? 感情で変動するスキルの本領を見せてもらいたい。
後始末はどうするか? そのうちキミヒトが来てくれて何とかする。後は任せた。私はフラフィーを本気にさせておきたい。まだ諦め癖のある悪い猫には、少し理性を飛ばして痛い目を見てもらおう。
「昨日の夜、キミヒトとした」
「はい?」
フラフィーの耳と尻尾がピクリと反応する。ちょろい。
「キミヒトに失神するまでいっぱい可愛がってもらった」
「……」
フラフィーから感情の波が消える。たったこれだけの事でスイッチが入る癖に、たったこれだけでリミッターが外れるくせに、何を恐れているのか。だから私はフラフィーに言う。
お前のスキルはまだまだそんなものじゃないと。まだ上がある。自分を抑えるな。限界まで解放しろと。そこにたどり着かなければ、私と同じくらいの敵が来た時にキミヒトを守る事なんて出来やしないと。
「いつまでもぬるい気持ちでいるなら、本気で私がキミヒトをもらう。命を賭けて守ると決めたなら、その激情も飲み込んで見せろ」
「……」
私が挑発した瞬間、さっきまでの比ではない速度で肉薄される。ギリギリ防壁を発動させるが今度は拳でたたき割られ、私の体を捕える。殺意の塊に殴られ吹き飛ばされるが身体強化でダメージはない。
だが私を追い抜くかのスピードでフラフィーは走り込み空中から飛び込むかのような勢いで蹴りを放つ。軌道がおかしい。空中を蹴ってる。あれもスキルの力か。
「がぁぁぁ!」
「くっ」
追撃によって私は地面に叩きつけられる。速い。これが、フラフィーの限界値。私よりもずっと速い。接近戦なら負けないまでも絶対に勝つことは出来ないだろう。防戦一方になる。
でも私は魔法使い。さて、フラフィーがどれだけやれるかわかったし、その限界を体に沁み込ませてからたたき起こそう。
始めよう、嫉妬に狂った化け猫退治を。
そう思ったからキミヒトとフラフィーを逃がした。でもそれはフラフィーを調子づかせることにしかならなかった。こんなことを思うのはお門違いかもしれない、あんまりよくない事だと思う。
でもあの時、逃がすのはキミヒトだけにしておけばこんなにフラフィーがキミヒトと良い仲になることは無かったと思う。少なくとも結婚式という行為を防ぐことは出来た。
でも、この記憶を持って戻っても、たぶん私はフラフィーを助けてしまうだろう。だってもう、フラフィーは私たちの大切な仲間なのだから。
でもずるいものはずるい。
なのでここで上下関係をはっきりさせておかなければならない。私の方が強い、私だけがキミヒトにくっついていて良い。猫に入る隙間は与えない。
「『狂獣化』」
フラフィーからの圧迫感が強くなる。なるほど、これは確かに狂獣化だ。前の世界では暴力性がかなり失われ完全に嫉妬に狂ったただの猫だった。しかし今回のこれは完全に別物だ。
周りの精霊も騒ぎ始める。あれは危険な代物だと。
なんだ、戦えるじゃん。
「私はもう、ただ守ってもらうだけじゃありません」
うん。見ればわかる。頑張ったんだろう。前の世界では全く制御出来ていなかった。キミヒトに落ち着かせてもらっても使えるようになる兆しすら見えなかったそのスキルを使えるようにしたんだね。
ちょっと嬉しい。私とお姉ちゃんに勝てる人なんてそうそういなかった。勇者という特別な存在、それくらいだと思ってた。
でも、フラフィーもここまで来たのか。嬉しいな。動いていないけどそれはちゃんと扱えるスキルなんだよね? 見掛け倒しじゃないんだよね?
「……巨乳、それは」
思わずこぼれてしまう。それはちゃんと扱えるのかと。私とまともに戦えるものなのかと。
「これが、私の全力です。受けてくれますよね?」
フラフィーからは熱を帯びた視線と感情が飛んでくる。この感情は、嫉妬だろうか、羨望だろうか、慈愛だろうか、後悔だろうか、とにかくぐちゃぐちゃなのにそれでもフラフィーを構成しているそのものだと伝わって来る。一番強いのは嫉妬だろう。前の世界でもそうだった。
これがフラフィーの本来の狂獣化。感情を高ぶらせ、一気に解き放つ技。私の技と似ている技。ああ、ちょっと高ぶってきたかもしれない。
だから私は答える。
「もちろん」
いいじゃん、少しはちゃんとした戦いになるかも。
って私はいつからこんなにバトルが好きになったのか。おかしい。でもいいか。
今は合法的にキミヒトの奪い合いが出来る、それだけで。私がキミヒトの嫁、フラフィーはペット、その位置づけをはっきりさせてやろう。あんな胸に脂肪の塊をくっつけた猫にキミヒトはやらない。
巨乳死すべし。
「土の精霊、かもん」
私はフラフィーの攻撃を正面から叩き潰すために土の精霊を自分に宿らせる。転生後の私の魔力は無尽蔵に近いほど高まった。それでもお姉ちゃんには遠く及ばないけど、一つの精霊を宿すくらいなら全然問題ない。
フラフィーは私が精霊を宿している所を見逃さず突撃してくるが、こっちの方が速い。正面に魔法防壁をはり、いつしかの宿屋の再現……。
「甘いです!」
「へぇ」
フラフィーは爪の一点に守護の光を集め私の防壁を無理やりに突破しようとする。面ではなく点の衝撃に私の防壁に少しずつひびが入っていく。土の精霊の力を使って防御力を高めているのにこの威力。
なるほど、貫通力という点においては私の防御を少し上回っているようだ。後に聞いた話だけど、これはキミヒトが剣に守護の光を纏わせてあずきを討伐したときのを真似たものらしい。腹立たしかったのでビンタしたら凄い驚いていた。
私の魔法では耐えきれない、それじゃあどうするか。簡単だ。
攻撃すればいい。
「ファイアストーム。横向き」
「ちょ!?」
フラフィーは咄嗟に防御の構えをとり、直線的に放たれた炎の渦を真正面から受けて後ろにおされて行く。あれも守護の光の効果かな? 魔法が当たる直前に良い感じに耐えきっている。土の精霊を宿しているからと言って他の魔法を使えないとは言っていない。
ドラゴンのブレスと同じくらいに調整したけどこれが耐えられるなら前回のドラゴンに対抗できるかな。強くなったなぁフラフィー。自称女神の及ぼす影響大きすぎる。
「じゃあ次、ロックフォール」
「いやそれ死んじゃいますって!?」
私は炎の渦を撃ちながらさらに空中に岩石を魔法で作り出しフラフィーにめがけて落下させる。うむ、巨乳もこうすれば平らになるよね。別に嫉妬しているわけじゃない。ただ目障りなだけ。大丈夫、たぶん死なないはず。
全部ぺったんこになるかもしれないけど大丈夫。あの感じの防御力なら直撃してもぎりぎり耐える。
「ああもう……! 『受け流し』」
「……すごい」
フラフィーは降って来る岩の軌道を片手で無理やり変えてそれを炎の軌道に落とした。そうすることによって一時的に私からはフラフィーが見えなくなるが、そんな事よりもあの岩を受け流せることに驚いた。
あれは私の魔力で出来た岩。普通の岩とは別の物。私の意思で出来ているから私が狙ったところに正確に落ちるはずだった。でもフラフィーはそれを捻じ曲げた。なるほど、受け流しのスキルもちゃんと磨いていたんだ。しかも素手で出来るように。
やる。
「イ、イリスさん……ちょっと、本気出し過ぎ、じゃないですか?」
火傷している片腕で、もう片腕の脱臼を無理やり治しながらフラフィーが岩の陰から顔を出してくる。流石に無傷じゃなかったか。でもそれだけで済ませたのは本当に凄い。
「全力でっていうから」
「私が全力を出しているんですよ! そっちも本気出したら勝てるわけないじゃないですか!」
何を言っているのか。まだ自分が本気を出していないことに気付いていないのだろうか? 無意識にリミッターがかかってる? じゃあこれは外してあげたほうがいいのかな? 感情で変動するスキルの本領を見せてもらいたい。
後始末はどうするか? そのうちキミヒトが来てくれて何とかする。後は任せた。私はフラフィーを本気にさせておきたい。まだ諦め癖のある悪い猫には、少し理性を飛ばして痛い目を見てもらおう。
「昨日の夜、キミヒトとした」
「はい?」
フラフィーの耳と尻尾がピクリと反応する。ちょろい。
「キミヒトに失神するまでいっぱい可愛がってもらった」
「……」
フラフィーから感情の波が消える。たったこれだけの事でスイッチが入る癖に、たったこれだけでリミッターが外れるくせに、何を恐れているのか。だから私はフラフィーに言う。
お前のスキルはまだまだそんなものじゃないと。まだ上がある。自分を抑えるな。限界まで解放しろと。そこにたどり着かなければ、私と同じくらいの敵が来た時にキミヒトを守る事なんて出来やしないと。
「いつまでもぬるい気持ちでいるなら、本気で私がキミヒトをもらう。命を賭けて守ると決めたなら、その激情も飲み込んで見せろ」
「……」
私が挑発した瞬間、さっきまでの比ではない速度で肉薄される。ギリギリ防壁を発動させるが今度は拳でたたき割られ、私の体を捕える。殺意の塊に殴られ吹き飛ばされるが身体強化でダメージはない。
だが私を追い抜くかのスピードでフラフィーは走り込み空中から飛び込むかのような勢いで蹴りを放つ。軌道がおかしい。空中を蹴ってる。あれもスキルの力か。
「がぁぁぁ!」
「くっ」
追撃によって私は地面に叩きつけられる。速い。これが、フラフィーの限界値。私よりもずっと速い。接近戦なら負けないまでも絶対に勝つことは出来ないだろう。防戦一方になる。
でも私は魔法使い。さて、フラフィーがどれだけやれるかわかったし、その限界を体に沁み込ませてからたたき起こそう。
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