呪いで常識を失ったのでロリと旅に出る
第239話 わんこ
「クロエ、治してやれるか?」
鑑定の結果で見えた本来の姿に戻りつつあるという一文。これはこの生き物が魔獣ではなく本来は別の良きものだったという事だろうが、この強さと封印されていたことからも絶対元の状態でも強い。
むしろこういう場合は汚染されていると弱まっているというのが相場だ。俺が呪われていた時と同じように。
それだったらこいつも相当な被害者だし助けてやりたい。ここには回復魔法を使えるクロエもいるし、全知全能に近かっためぐもいる。助ける事はそう難しいことではないだろう。
「……私には無理そうね」
しかしそう考えたことがフラグだったのか、クロエは魔獣の表面に手をかざしヒールをしても何も反応が起きなかった。いや、正確には反応しているが弾かれているといったほうがいい。これからフラグっぽいのを考えるのもやめた方が良いなまじで。
「じゃあめぐは出来るか?」
「んー、無理かな。この子、認めた人以外の魔法全部弾くし」
「頑固すぎるだろ」
ただの忠犬じゃねえか。黒っぽいわんこだし自分がどんなに瀕死で死にかけてても、自分が認めた者以外からの支援は絶対に受けないという無駄な頑固さ。見ている間にも呼吸が浅くなっていくのがわかる。
不思議と俺が与えた傷は無くなっているが、鑑定でも見た通り放って置いたら死んでしまうだろう。魔王の手によって汚染され、わけもわからず封印されてずっとこの狭い場所で生きてきた魔獣。
ようやく出られたと思ったら俺なんかにやられてしまって、しかも俺を認めてくれたという可哀想な生き物。
生かしてやりてぇ。
「なぁめぐ、看病って蘇生に近い事出来るかな」
「試したことはないけど……出来ると思ってるんでしょ? 試してみたら?」
おっけ。確かに俺の看病スキルは状態異常を治す事に特化しているし条件もある。だが今回においては魔獣は俺の事を認めてくれているようだから条件に関してはクリアしている。
つまり、あとは俺がどうにかすればこいつを助けられるという事だ。看病とは本来病に臥せっている者を看て元気にするためのもの。まさに今、目の前で死にかけの命があるなら使わないなんて嘘だろう。
俺はゆっくりと手をかざし看病スキルを発動させる。
「……」
しかし状態異常ではない魔獣に対して効果は全く発動しなかった。これは魔獣自信が意識を失っているからだろう。生命力も強いし少しは意識があると思って試してみたがやっぱり無理だったか。
看病は意識のない相手には発動できないっていう条件もあるからな。つまり、起こしてしまえばいいという事だ。
いつもの手段をやらせてもらおう。
「大人しくしててくれよ」
俺は魔獣わんこの手を両手でささえ、片方の手を透過させ不屈を発動させる。フラフィーの洗脳を解いた時と同じ状況だ。やばい状態なら不屈を使えばそれなりに意識は戻せるはず。
「……」
しかしわんこは一向に目を覚まさない。どうやら思ったよりも瀕死状態の様だ。ダメージが不屈の限界を超えているんだろう。精力剤の投与を考えたが、それは人用だから魔獣には効果が無いとめぐに止められた。
めぐ、精力剤の事しっかり把握してたんだね。なんだか少し気恥ずかしいわ。
となると、やれるかわかんないけどこれしか手はないな。
「苦しいかもしれないけど、ごめんな」
今度は効果範囲増、守護の光、不屈、透過を発動させ魔獣わんこの体内に全てを巡らせていく。効果範囲増のスキルはいらないかもしれないが、とりあえず使っておいて損はないので使っておく。戦闘して魔力は減ったがそこまで気にする量でもないし。
守護の光を体内で発動させ、魔獣わんこの身体能力を強制的に強化する。俺やフラフィー、あかねが使うと自分自身の能力を大幅に強化させることが出来る。俺なら耐久力がさらにあがるし、フラフィーなら攻撃力が異常に上がっていた。
あかねは状態異常を無効化していたしこの守護の光には色々な効果がある。めぐがくれた女神様の加護はまじで尋常じゃないほどのチート性能を持っている。
これを魔獣わんこの中で発動させ、しっかりと巡らせることが出来ればきっと復活することが出来るはず……。
問題はさっきこれと近い事をやって大ダメージを受けてしまっているという事くらいだろうか。俺の事を認めているとはいえ、体が条件反射で受け入れられないということも充分にありうる。
汚染が浄化されたためたぶん大丈夫だとは思うが、攻撃として受けたこの行動をちゃんと受け入れてくれなかったら詰みだ。その時は全力で新しいスキルを探して回復してやるしかない。
少し探してみたけど今の状況にあうスキルは一向に見当たらなかった。つまりまだ慌てるような時間じゃあないと判断してこの行動を取る事にした。
「グ……」
「お」
呼吸も浅く、とても苦しそうだったわんこの表情が徐々にだが柔らかいものになってきていた。わんこの表情がわかるというのもなんだか新鮮だしなんだかやたらと可愛くなってくる。
俺は猫派だがこうやって可愛いわんこを触っていると犬もいいよなってなってしまう。猫派は犬派にもなるし逆もまたしかり。結局動物はみんな可愛いんだよ。
「お兄ちゃん、スキルの併用発動上手いね」
「これしか特技がなかったからな」
めぐが褒めてくれるが、俺は前の世界で出来ることが殆どなかった。戦闘における俺の足手まといっぷりはまじでヤバイとずっと思っていた。だからやれることはこういったスキルを同時に扱う事だけ。役に立ってよかったわ。
「キミヒトさん、目を覚ましそうですよその子」
フラフィーがそう言うと同時にわんこの目は開き、俺の事を真正面から見つめてくる。そのつぶらな瞳は先ほどまで戦っていた狂気のそれではなく、友愛に似た優しい光に満ちていた。端的に言うと家に帰って来た時にとびかかって来るペットみたいな目。
そこですかさず看病を発動させると、今度はしっかりとわんこに効いた。瀕死で弱弱しかったわんこだが、自力で立ち上がることが出来るようになった。ぷるぷるしてて可愛い。
「わん!」
「おっと」
そして本当にペットのように俺にとびかかって来る。小型犬くらいのサイズになってしまっているため軽く受け止められるが、おかしいほどの魔力を感じる。クロエやイリスには届かないだろうが、王女様くらいは潜在能力を秘めていそうだ。
しかし体力は失ったままなのでまだ少しぐったりしている感じがあるな。なんにせよちゃんと生かせることが出来て良かった。
鑑定の結果で見えた本来の姿に戻りつつあるという一文。これはこの生き物が魔獣ではなく本来は別の良きものだったという事だろうが、この強さと封印されていたことからも絶対元の状態でも強い。
むしろこういう場合は汚染されていると弱まっているというのが相場だ。俺が呪われていた時と同じように。
それだったらこいつも相当な被害者だし助けてやりたい。ここには回復魔法を使えるクロエもいるし、全知全能に近かっためぐもいる。助ける事はそう難しいことではないだろう。
「……私には無理そうね」
しかしそう考えたことがフラグだったのか、クロエは魔獣の表面に手をかざしヒールをしても何も反応が起きなかった。いや、正確には反応しているが弾かれているといったほうがいい。これからフラグっぽいのを考えるのもやめた方が良いなまじで。
「じゃあめぐは出来るか?」
「んー、無理かな。この子、認めた人以外の魔法全部弾くし」
「頑固すぎるだろ」
ただの忠犬じゃねえか。黒っぽいわんこだし自分がどんなに瀕死で死にかけてても、自分が認めた者以外からの支援は絶対に受けないという無駄な頑固さ。見ている間にも呼吸が浅くなっていくのがわかる。
不思議と俺が与えた傷は無くなっているが、鑑定でも見た通り放って置いたら死んでしまうだろう。魔王の手によって汚染され、わけもわからず封印されてずっとこの狭い場所で生きてきた魔獣。
ようやく出られたと思ったら俺なんかにやられてしまって、しかも俺を認めてくれたという可哀想な生き物。
生かしてやりてぇ。
「なぁめぐ、看病って蘇生に近い事出来るかな」
「試したことはないけど……出来ると思ってるんでしょ? 試してみたら?」
おっけ。確かに俺の看病スキルは状態異常を治す事に特化しているし条件もある。だが今回においては魔獣は俺の事を認めてくれているようだから条件に関してはクリアしている。
つまり、あとは俺がどうにかすればこいつを助けられるという事だ。看病とは本来病に臥せっている者を看て元気にするためのもの。まさに今、目の前で死にかけの命があるなら使わないなんて嘘だろう。
俺はゆっくりと手をかざし看病スキルを発動させる。
「……」
しかし状態異常ではない魔獣に対して効果は全く発動しなかった。これは魔獣自信が意識を失っているからだろう。生命力も強いし少しは意識があると思って試してみたがやっぱり無理だったか。
看病は意識のない相手には発動できないっていう条件もあるからな。つまり、起こしてしまえばいいという事だ。
いつもの手段をやらせてもらおう。
「大人しくしててくれよ」
俺は魔獣わんこの手を両手でささえ、片方の手を透過させ不屈を発動させる。フラフィーの洗脳を解いた時と同じ状況だ。やばい状態なら不屈を使えばそれなりに意識は戻せるはず。
「……」
しかしわんこは一向に目を覚まさない。どうやら思ったよりも瀕死状態の様だ。ダメージが不屈の限界を超えているんだろう。精力剤の投与を考えたが、それは人用だから魔獣には効果が無いとめぐに止められた。
めぐ、精力剤の事しっかり把握してたんだね。なんだか少し気恥ずかしいわ。
となると、やれるかわかんないけどこれしか手はないな。
「苦しいかもしれないけど、ごめんな」
今度は効果範囲増、守護の光、不屈、透過を発動させ魔獣わんこの体内に全てを巡らせていく。効果範囲増のスキルはいらないかもしれないが、とりあえず使っておいて損はないので使っておく。戦闘して魔力は減ったがそこまで気にする量でもないし。
守護の光を体内で発動させ、魔獣わんこの身体能力を強制的に強化する。俺やフラフィー、あかねが使うと自分自身の能力を大幅に強化させることが出来る。俺なら耐久力がさらにあがるし、フラフィーなら攻撃力が異常に上がっていた。
あかねは状態異常を無効化していたしこの守護の光には色々な効果がある。めぐがくれた女神様の加護はまじで尋常じゃないほどのチート性能を持っている。
これを魔獣わんこの中で発動させ、しっかりと巡らせることが出来ればきっと復活することが出来るはず……。
問題はさっきこれと近い事をやって大ダメージを受けてしまっているという事くらいだろうか。俺の事を認めているとはいえ、体が条件反射で受け入れられないということも充分にありうる。
汚染が浄化されたためたぶん大丈夫だとは思うが、攻撃として受けたこの行動をちゃんと受け入れてくれなかったら詰みだ。その時は全力で新しいスキルを探して回復してやるしかない。
少し探してみたけど今の状況にあうスキルは一向に見当たらなかった。つまりまだ慌てるような時間じゃあないと判断してこの行動を取る事にした。
「グ……」
「お」
呼吸も浅く、とても苦しそうだったわんこの表情が徐々にだが柔らかいものになってきていた。わんこの表情がわかるというのもなんだか新鮮だしなんだかやたらと可愛くなってくる。
俺は猫派だがこうやって可愛いわんこを触っていると犬もいいよなってなってしまう。猫派は犬派にもなるし逆もまたしかり。結局動物はみんな可愛いんだよ。
「お兄ちゃん、スキルの併用発動上手いね」
「これしか特技がなかったからな」
めぐが褒めてくれるが、俺は前の世界で出来ることが殆どなかった。戦闘における俺の足手まといっぷりはまじでヤバイとずっと思っていた。だからやれることはこういったスキルを同時に扱う事だけ。役に立ってよかったわ。
「キミヒトさん、目を覚ましそうですよその子」
フラフィーがそう言うと同時にわんこの目は開き、俺の事を真正面から見つめてくる。そのつぶらな瞳は先ほどまで戦っていた狂気のそれではなく、友愛に似た優しい光に満ちていた。端的に言うと家に帰って来た時にとびかかって来るペットみたいな目。
そこですかさず看病を発動させると、今度はしっかりとわんこに効いた。瀕死で弱弱しかったわんこだが、自力で立ち上がることが出来るようになった。ぷるぷるしてて可愛い。
「わん!」
「おっと」
そして本当にペットのように俺にとびかかって来る。小型犬くらいのサイズになってしまっているため軽く受け止められるが、おかしいほどの魔力を感じる。クロエやイリスには届かないだろうが、王女様くらいは潜在能力を秘めていそうだ。
しかし体力は失ったままなのでまだ少しぐったりしている感じがあるな。なんにせよちゃんと生かせることが出来て良かった。
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