呪いで常識を失ったのでロリと旅に出る
第208話 様になってる
「じゃあ開けるぞ」
「早くしてください」
実際には十分も経っていないが個人的には色々考えたりめぐに良いパンチをもらったので結構時間が経った気がしていた。なので中の惨状が変わってればいいなーという期待を胸に扉に手をかけゆっくりと開けていく。
「じょおうさまぁ……」
男は恍惚としてまるでとろけているような声だった。端的に言うといじめられて喜ぶタイプの人が出すような感じのあれ。ついでにいうと両手と両足を縛られ床に転がされている。
自分の洋服で縛られているあたりかなり無抵抗にやられたのが見て取れる。というかたぶんやられたというか自分で好んでやったんじゃないかって感じの縛り方だ。大いに雑だしその気になれば簡単に拘束を解けるだろう。
その姿からいかにこの男が女王様とやらに心酔しきっているかがわかる。というかこいつがムバシェなんですけどね。
「うるさい豚ね」
もう一人は女で本当に蔑んだ声色で男を罵倒する。よくある社長机みたいなものに腰掛け、声だけでなく刺さりそうなほどの冷たい視線はそういった趣味を持っていないはずの俺すらもぞくぞくさせる。
相手がロリだからというものもあるかもしれないが、この視線はジト目を超えてキュンキュン来る。これは信者が増えてしまうぜって感じだが俺は最初から信者なのでその辺からも来ているのかもしれない。
というかマジでジト目とかこういう鋭い目つき似合うわ。
「あらキミヒトじゃない。遅かったわね」
そのロリは俺を見つけると真顔に戻り机からとんっと飛び降りて近づいてくる。長い銀髪をツインテールにし、高校生が着るような紺色のセーターにスカート。黒髪でその恰好を見慣れていた俺からするとそれはまさにコスプレと言って良いミスマッチ。
しかしだからこそ映えるこの衣装はアイドルっぽいのとはまた別の輝きを持たせてくれている。端的に言うと留学生が制服着てるとなんかやたらと良い感じ着こなして違和感あるのに妙にマッチして色気があるとかそういう感じ。全然端的じゃない。
こういうタイプの服気に入ってくれたんだね。俺も好きだよ。
でもその前に聞きたいことがある。
「……クロエなにしてんの」
「お返し、かしらね?」
小さな女王様としてクロエはそこに立っていた。正直クロエと出会ったときはめちゃくちゃ抱きしめて構いまくって恥ずかしがらせて周りから文句出るまでもみくちゃにしようと思っていた。
クロエは人がいるときは自分の感情を表に出さないようにしていたから、この世界ではその辺の垣根も取っ払いたいと思っていた。
でもクロエ、取っ払って欲しいと思ってはいたけどこれは取っ払ったどころか何か別のものが出て来てるよ。
「いや、ちょっとよくわからないんだけど」
「ふふ、キミヒトったら忘れたの? 私とイリスの目的は勇者にやり返すことだったのよ? 手がかりを探してたら怪しい魔法の気配があるじゃない。調べると洗脳魔法の類……関係あると思ってね」
あぁ、覚えているともさ。シオリにやり返そうとしているならこの世界では半殺し程度にしてもらおうと思っていたよ。っていうかそうか、この世界に戻ってから二人は先にそっちをやりに行ったわけか。
俺よりも先にシオリ優先するとかちょっと嫉妬しちゃうんですけど。
イリスは今はもう色々な意味で別の目的で動き出したけど、あそこに来たのは俺のことを察知したからついでかな。本当は捕まっているエルフたちの救助が最初の目的だった……ということだろう。
そしてこの邸宅にあった魔法陣は勇者たちを召喚する物、そして洗脳する物の原型であったことの裏が取れたわけか。俺のパーティメンバーが優秀すぎて怖い。
でもなんでムバシェ豚になってんの。
「この豚はMの欲望を信じられないくらい強く持っていたわ。この屋敷のメイドに毎日ぶってもらっていたみたいね。洗脳魔法やら何やらを継続的にかけて都合の良いように扱っていたわけよ。だからより強固な洗脳をかけて豚にしてみたわ。あ、メイドたちは洗脳が解けて屋敷を出て行ったわ。どうやら記憶が残っていたみたいね」
うん、何がどうしたら豚にする必要があるのかな。普通に意識刈り取って放置でええやんけ。
メイドたちも元はちゃんと働いていたとしても、洗脳されて自我を失っている状態にさせられたらそら逃げるわな。
「私も最初は意識だけ刈り取って放置にしようと思ったんだけど……放置しても何しても自分で自分を縛りだすしこんなだからもう諦めたわ」
理解。いや何も理解してないけどどうしようもない事だけはよくわかった。とりあえずムバシェは悪者だった。そしてクロエが悪者を……この場合はなんていうんだ? 改心? 無力化? 豚化? とりあえず悪さしないような状態にした。
これで充分だろう。
「でも面白いことも言ってたわね。ほら豚、この屋敷にエルフを集めて何をしようとしていたか言ってごらんなさい」
クロエが光魔法を唱えて軽くムバシェの事を叩くと嬉しそうな悲鳴が聞こえハイテンションで喋り始めた。きもい。
クロエもこれには触りたくなかったんだろうな。
「はいぃぃ! あのエルフ共は魔力を潤沢に持っているので術に利用しようとしていましたぁ! もう一度最強の魔法使いとして成り上がるために犠牲になれるなんて奴らは僕に感謝するべきですぅぅ! あぁん! 痛いです女王様ぁ!」
クロエはもう一度光魔法でムバシェをビシバシと叩く。その光魔法ムチみたいになってるけどそれ発明したの? 姉妹そろって凄いね。クロエは別のベクトルだけど。
「どんな魔法を使おうとしていたの? 言わないと叩くのをやめるわよ」
「あぁ女王様! 言います言います! あの魔法陣は、あっ! 人と魔物を混ぜ合わせてはぁん! 人間兵器にするためのものですあぁ! まだ実験段階ですけどゆくゆくは自分が最強にぃ!」
そういうことか。前の世界ではきっとベノプゥがこの悪巧みに気付いて突撃したに違いない。ムバシェはきっとメイドを使って街の子ども達を誘拐しようとしたのだろう。そしてベノプゥに邪魔されて、返り討ちにして実験材料にしたと。
そうすればあの魔物にしか見えない見た目っていうのもうなずけるし、洗脳状態で言うこと聞かせていたのもわかる。ベノプゥがあんな見た目になったら誰も本人だってわからないからな。
毎日冒険者ギルドに来ていたはずのベノプゥがいなくなっても冒険者たちは気にしないし。
しかし人と魔物を混ぜるという発想はおぞましいことこの上ないな。孤児院にいるような子どもたちはムバシェにとっては格好の的だったのだろう。悪巧みが潰せてよかったわ。
「豚の癖によく喋るわね! ご褒美にムチをくれてやるわ!」
「ありがたき幸せぇ!」
その代わりにクロエが女王様に目覚めてしまったけど。そのムチ捌き、様になってるよ。
「早くしてください」
実際には十分も経っていないが個人的には色々考えたりめぐに良いパンチをもらったので結構時間が経った気がしていた。なので中の惨状が変わってればいいなーという期待を胸に扉に手をかけゆっくりと開けていく。
「じょおうさまぁ……」
男は恍惚としてまるでとろけているような声だった。端的に言うといじめられて喜ぶタイプの人が出すような感じのあれ。ついでにいうと両手と両足を縛られ床に転がされている。
自分の洋服で縛られているあたりかなり無抵抗にやられたのが見て取れる。というかたぶんやられたというか自分で好んでやったんじゃないかって感じの縛り方だ。大いに雑だしその気になれば簡単に拘束を解けるだろう。
その姿からいかにこの男が女王様とやらに心酔しきっているかがわかる。というかこいつがムバシェなんですけどね。
「うるさい豚ね」
もう一人は女で本当に蔑んだ声色で男を罵倒する。よくある社長机みたいなものに腰掛け、声だけでなく刺さりそうなほどの冷たい視線はそういった趣味を持っていないはずの俺すらもぞくぞくさせる。
相手がロリだからというものもあるかもしれないが、この視線はジト目を超えてキュンキュン来る。これは信者が増えてしまうぜって感じだが俺は最初から信者なのでその辺からも来ているのかもしれない。
というかマジでジト目とかこういう鋭い目つき似合うわ。
「あらキミヒトじゃない。遅かったわね」
そのロリは俺を見つけると真顔に戻り机からとんっと飛び降りて近づいてくる。長い銀髪をツインテールにし、高校生が着るような紺色のセーターにスカート。黒髪でその恰好を見慣れていた俺からするとそれはまさにコスプレと言って良いミスマッチ。
しかしだからこそ映えるこの衣装はアイドルっぽいのとはまた別の輝きを持たせてくれている。端的に言うと留学生が制服着てるとなんかやたらと良い感じ着こなして違和感あるのに妙にマッチして色気があるとかそういう感じ。全然端的じゃない。
こういうタイプの服気に入ってくれたんだね。俺も好きだよ。
でもその前に聞きたいことがある。
「……クロエなにしてんの」
「お返し、かしらね?」
小さな女王様としてクロエはそこに立っていた。正直クロエと出会ったときはめちゃくちゃ抱きしめて構いまくって恥ずかしがらせて周りから文句出るまでもみくちゃにしようと思っていた。
クロエは人がいるときは自分の感情を表に出さないようにしていたから、この世界ではその辺の垣根も取っ払いたいと思っていた。
でもクロエ、取っ払って欲しいと思ってはいたけどこれは取っ払ったどころか何か別のものが出て来てるよ。
「いや、ちょっとよくわからないんだけど」
「ふふ、キミヒトったら忘れたの? 私とイリスの目的は勇者にやり返すことだったのよ? 手がかりを探してたら怪しい魔法の気配があるじゃない。調べると洗脳魔法の類……関係あると思ってね」
あぁ、覚えているともさ。シオリにやり返そうとしているならこの世界では半殺し程度にしてもらおうと思っていたよ。っていうかそうか、この世界に戻ってから二人は先にそっちをやりに行ったわけか。
俺よりも先にシオリ優先するとかちょっと嫉妬しちゃうんですけど。
イリスは今はもう色々な意味で別の目的で動き出したけど、あそこに来たのは俺のことを察知したからついでかな。本当は捕まっているエルフたちの救助が最初の目的だった……ということだろう。
そしてこの邸宅にあった魔法陣は勇者たちを召喚する物、そして洗脳する物の原型であったことの裏が取れたわけか。俺のパーティメンバーが優秀すぎて怖い。
でもなんでムバシェ豚になってんの。
「この豚はMの欲望を信じられないくらい強く持っていたわ。この屋敷のメイドに毎日ぶってもらっていたみたいね。洗脳魔法やら何やらを継続的にかけて都合の良いように扱っていたわけよ。だからより強固な洗脳をかけて豚にしてみたわ。あ、メイドたちは洗脳が解けて屋敷を出て行ったわ。どうやら記憶が残っていたみたいね」
うん、何がどうしたら豚にする必要があるのかな。普通に意識刈り取って放置でええやんけ。
メイドたちも元はちゃんと働いていたとしても、洗脳されて自我を失っている状態にさせられたらそら逃げるわな。
「私も最初は意識だけ刈り取って放置にしようと思ったんだけど……放置しても何しても自分で自分を縛りだすしこんなだからもう諦めたわ」
理解。いや何も理解してないけどどうしようもない事だけはよくわかった。とりあえずムバシェは悪者だった。そしてクロエが悪者を……この場合はなんていうんだ? 改心? 無力化? 豚化? とりあえず悪さしないような状態にした。
これで充分だろう。
「でも面白いことも言ってたわね。ほら豚、この屋敷にエルフを集めて何をしようとしていたか言ってごらんなさい」
クロエが光魔法を唱えて軽くムバシェの事を叩くと嬉しそうな悲鳴が聞こえハイテンションで喋り始めた。きもい。
クロエもこれには触りたくなかったんだろうな。
「はいぃぃ! あのエルフ共は魔力を潤沢に持っているので術に利用しようとしていましたぁ! もう一度最強の魔法使いとして成り上がるために犠牲になれるなんて奴らは僕に感謝するべきですぅぅ! あぁん! 痛いです女王様ぁ!」
クロエはもう一度光魔法でムバシェをビシバシと叩く。その光魔法ムチみたいになってるけどそれ発明したの? 姉妹そろって凄いね。クロエは別のベクトルだけど。
「どんな魔法を使おうとしていたの? 言わないと叩くのをやめるわよ」
「あぁ女王様! 言います言います! あの魔法陣は、あっ! 人と魔物を混ぜ合わせてはぁん! 人間兵器にするためのものですあぁ! まだ実験段階ですけどゆくゆくは自分が最強にぃ!」
そういうことか。前の世界ではきっとベノプゥがこの悪巧みに気付いて突撃したに違いない。ムバシェはきっとメイドを使って街の子ども達を誘拐しようとしたのだろう。そしてベノプゥに邪魔されて、返り討ちにして実験材料にしたと。
そうすればあの魔物にしか見えない見た目っていうのもうなずけるし、洗脳状態で言うこと聞かせていたのもわかる。ベノプゥがあんな見た目になったら誰も本人だってわからないからな。
毎日冒険者ギルドに来ていたはずのベノプゥがいなくなっても冒険者たちは気にしないし。
しかし人と魔物を混ぜるという発想はおぞましいことこの上ないな。孤児院にいるような子どもたちはムバシェにとっては格好の的だったのだろう。悪巧みが潰せてよかったわ。
「豚の癖によく喋るわね! ご褒美にムチをくれてやるわ!」
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