呪いで常識を失ったのでロリと旅に出る

こが

第174話 あかねは本当に

「……そんな嘘に騙されると思っているんですか?」

王女様は俺の発言に対して警戒心を露わにしている。そりゃ不法侵入してきている人間に対して警戒心を抱くなって言うのは無理な話だけど、それにしても急に警戒心上がったな。女神様関係の話は良くないのか?

この国というか世界で女神様が直接感謝されたことがないって言ってたけど、もしかしてその辺が関係しているのだろうか。女神様あんなだしな……どんな扱いされているんだろうか。

ただここはひたすらに女神様をよいしょしておこうじゃないか。女神様がいないって思われるのは心外だからな。

「俺達に呪いがかかっていないことが証明になりませんか?」

「あの術は高レベルの術者なら解くことも可能です。こちらの世界に呼び出された時にそういうスキルを授かっただけなんでしょう?」

ああそういう事もあり得るのか。最初から呪いにかかったふりをして隙をみて逃げだそうとかそういう事あったのだろうか。王女様の年齢的に直接見た事はないだろうけど、その心配はないんじゃないかな?

だってほとんどの状態異常を無視するであろうユウキすらあの状態にしたんだから。それ以上に術に耐性を持つとなると呪いに特化したスキルじゃないと無理なんじゃないの。

そんなことより王女様やっぱり結構詳しそうだな。こっちの世界に来た時にスキルを授かる事、そのスキルが強い事、そして術を解く方法があるということ。

伊達に調べてないって感じか。敵意が無いことを教えられれば仲間に出来ると思うんだけどなぁ。

「王女様、私にはそういったスキルはありません。ただ、女神様から直接スキルをいただいたことがあるのです」

「直接、ですか? 聖女ですらも女神様にお会いしたことがないと言っているのに?」

「感謝が足りないんじゃないですかね」

生きる意味を見出すほどに感謝しろ。そうすれば空中で寝っ転がってる女神様を見ることが出来るよ。

「感謝なんて……どうしてこんなひどいことをしている世界に感謝しなくてはならないのですか! 知らない世界からこっちの都合で呼び出して戦わせて、そんなことが起きているのに力を貸してくれない女神様に……」

なるほどね。テンプレ的な王女様って女神様大好きっ子だけど、確かに自分の親が人間召喚して呪いみたいのかけてる世界に感謝しろって結構きついかもね。女神様が世界を作ったってのは共通認識みたいだし、女神様何もしてないもんね。

王女様ただの良い子じゃん。王都の治安は守るし勇者たちの呪いを解くために色々調べてもいるし。もしかして魔法使えないのは王女様呪い解く力持ってるんじゃないの?

しかしだからといって女神様を敵視するのはよろしくない。信者を増やそう。

「王女様、聞いてください。私たちは一度死んでいるんですよ」

「……はい?」

急に語り始めた俺に王女様は少し戸惑っている様子。俺もいきなり自分語りされたら引く。星空見上げながら夢を語るのがロマンチックとか言う時代があったかもしれないけど素面でそんなことが出来るの結構すごいよね。

本当に叶いそうな夢だったり、その人が本気で頑張ってるのを知っているなら全然問題ないけど、知らない人とか付き合いが浅い人がいきなりそんな事し始めたら正直に言ってメンヘラ認定して良いと思う。

女神様にヤンデレ認定されてるし俺に怖いものはない。

「俺達は元の世界で事故で死にました。普通ならそのまま死んで……どうなるかわかりませんけど、そこを女神様に助けてもらって選択肢をもらったんです。この世界でもう一度生きるか、そのまま消えるか」

記憶を消してどこか別の世界にみたいなことを言っていたけど、それは消えるのと同じ意味だろう。女神様は俺達に新たな生を与えてくれたのは間違いない。

たとえそれがいきなり呪いをかけられて自我を失い王様の手足になって魔王を討伐するような世界だとしてもだ。

「そして俺達は選んだんですよ。異世界に転生、転移することを。女神様は俺たちの事を考えて考えて、それでたまたまこの世界に送っただけなんです。女神様は優しい人ですよ、世界に干渉できないって辛そうにしていました」

辛そうなのは仕事量が多すぎて、だけどな。

「女神様はみんなの感謝によってその存在を保っています。みんなのために身を粉にするように働き、人を助け命を巡らせ、さらには神の恩恵であるスキルまでを与えて。それなのにこの世界には感謝する人がいないと、女神様に会えて事情を聞いて初めて知りました」

実際は言われた、だけども。感謝する人がいないのも好き勝手な世界に送り飛ばしている事と、自分の存在を知らせていないからだと思うけども! 気に入らない奴はやばい世界に飛ばす女神様ほんと好き。

「女神様は初めて会った時凄く疲れていました。秒単位で亡くなる人たちの魂を管理し別の世界に送り届ける。これを管理している世界の数だけ行っているんです。王女様の仕事はどれだけありますか? もしこの王都全てを、世界の全てを統治しながらさらに別の世界に力を貸しに行く余裕がありますか?」

実際一人でやる仕事量じゃないと思うんだ。時間とか空間とか、人間が観測できるような世界に住んではいないとおもうけど、それでも疲れが見える以上はやっぱりブラックな環境なのは間違いないよ。

「私には出来ませんが、女神様はそういう立場なのでしょう? 人の上に立つのならそういう覚悟を持つべきです。その立場になったことが無い人が憶測で物を語るべきではありません」

「そうですね」

「キミヒト君もてきとーだなぁ」

いやだって実際に知らないし。王女様も相当苦労してると思うし。信者増やすどころかこれ余計頑なになっちゃったんじゃないの王女様。フラフィーのちょろさが懐かしいぜ。

王女様を言いくるめるには俺のスキルが足りない。詐欺師スキルとか取っておくべきだったかもしれない。上の立場の人たちは大変だよな。

どうやって俺が女神の使いであることを信じさせようかと考えているとあかねこっちを見てため息を吐いた。

「しかたないなキミヒト君は。ねえ王女様。ローラちゃんに鑑定してもらえば一発なんだから呼んできてよ。こっちは引く気無いしさ、私達だって勇者を助けたいって思ってるんだよ」

あかねは俺に変わり王女の説得をしてくれるようだ。というか俺は途中から女神様の信者にさせようという方針に変わっていたな。それを察したからなのかあかねが説得してくれるようだ。

ローラってのは確か、ユウキのパーティメンバーの名前だ。もう一人はキャシーとかそんなだったかな? 勝手に僧侶とか聖女とか魔法使いとか思っていたけど聖女がローラか。

「王女様に危害を加えるならとっくにやってるし何もしてないでしょ? 別に無理やりいう事聞かせたっていいんだよ? 魔法も使えない、武術の心得もない、そんな王女様一人きりで何が出来るの?」

あかねは王女様を脅しにかかる。実力行使に出てないのは敵対したくなかったからだが、ここまで来たらこういったアプローチもいいかもしれないな。ローラの名前だしたら表情ちょっと動いたし。

「……何故私がローラを呼べると?」

「だからさ、心が読めるんだよ私は。王女様とローラが小さい頃からの友達だとか、実は王女様は性的な眼でローラちゃんを見てるとか友達以上の関係になるために昨日の夜に」

「ストップ! ストップです! わ、わかりました。確かにローラは鑑定を持っています。しかし彼女は聖女の立場もありそう簡単に呼び出すわけには……」

「あーっと王女様の机の引き出しの中に大事なものが閉まってありそうだなぁ! ローラちゃんのし」

「呼んできます少々お待ちください」

「あ、分かってると思うけど私たちの事は誰にも言わないでね。言ったら全部ローラちゃんにばらすから」

あかねは本当に便利だなぁ。

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