呪いで常識を失ったのでロリと旅に出る

こが

第136話 代償

「あ……? うあああ!」

直後俺の体には物凄い力が沸いてくるとともに激しい頭痛がした。片方は間違いなく経験値、それも今まで感じたことが無いほどの大量の経験値、そしてもう片方は……呪いだ。

どういうことだよ。呪いは解けていただろう? まさかこれが勇者を殺す代償だというのか?

「キミヒト君!? ねえ、しっかりして!」

「あかね! 解放使って!」

「そ、そっか! キミヒト君! ……え?」

クロエとあかねが何かを言っているが俺には遠く聴こえる。そうだ、俺がしなきゃいけないことはなんだっけ。ああそうだ、魔王の討伐だったか。

……いやまてなんだこの記憶は、おかしいだろ。

俺がしたいことはロリと一緒に……。くそ、思考がまとまらねぇ。

こういう時は不屈のスキルを限界まで引き上げるに限る。少しずつ思考がクリアになってきて落ち着いてくる。そうだ、そう、俺は今水の精霊のストーカーに会いに行く途中だったな。

念願のロリ達との旅をすることになって、女神さまに会って、水の精霊にも会った。ロリ達の可愛い服も買った、あかねにも会った。うん、大丈夫落ち着いた。

ああ、びびった。

「もう大丈夫だ、すまん、心配かけたな」

「キミヒト、本当に?」

「キミヒトさん無理しないでくださいよ」

一度倒れそうになったためみんなが俺を支えてくれていた。そうこれだ、俺が本当に求めているのはこれのはずだ。呪いの影響を完全になくしたと思っていたが、まだ残っていたのか?

それとも呪いをかけられている勇者を殺すと呪いが移って来るのか? これは一度あかねに解いてもらってからやるのが正解だったな。次からはそうしよう。次があればだが。

ともかくあかねがやらなくて良かった。ブチ切れたままこの九番をあかねがやっていたらどうなっていたかわからない。もしこれが呪いであかねが呪われてたらもう解呪方法ないからな。

「あかね、何か言いかけてなかったか?」

「えと、解放効かなかったからびっくりしただけ。もう大丈夫でいいの?」

「ああ、俺の不屈は知ってるだろ?」

「それなら、いいんだけど」

あかねはまだ何か言いたそうだったがそれ以上は言ってこなかった。俺の状態が正常だったから特に気にしなくても良いと思ったんだろう。

「じゃあ行こうか」

「おかげでかなりのお金になりそうだ。本当に君たち雇ってよかったよ」

レイリーさんも満足そうだし良いだろう。みんなが心配そうな顔をしているが俺はもう大丈夫だ。しかしこのつぎ込まれた経験値をどうしようか激しく迷う所だ。まともな戦闘をしない以上は戦いに関したスキルはいらない。

それならサポート関係だが、それもクロエのバフがあるしあかねの意志疎通があれば敵の情報をぶっこ抜くことが出来る。罠関係に関しても俺が察知出来る。

まじで必要な物がないな。よくラノベとかである魔法創造とかガチのチートとかを調べてみたけどその辺は存在しなかった。やっぱり異世界から授かるチート系は手に入らないんだろうな。

これだけ経験値を手に入れたのに転移系等のスキルも手に入らなかった。やはり異常なほど珍しいか適性が必要なのだろう。俺にはそれが無かったという事だ。

つまりこのポイントは今は使う必要が無い。今のスキルを強化してもいいかもしれないが、必要なポイントもわからないし不便にも感じていない。それなら必要な時が来たら都度使う事にしたほうが効率的だろう。

ゲームとかでもそうやって場面場面で使い分ける戦い方が俺は好きだし。相手によってステータス変えたりスキルいじったりして戦うの凄い楽しい。戦略というかトライアンドエラー的な方法だから現実的じゃないかもしれないけど。

その後盗賊達を縛り上げ処遇はケイブロットの人に任せる事にした。どうやらレイリーさんは街に近づけば通信出来るアイテムを持っているらしくそれを活用した。電話とか作れそうなもんだけどないのだろうか。

魔道具で通信機はあるけど距離制限がほとんどないものがあったりしないかな。魔力に乗せて会話とか出来そうだけど、無い所を見るとやっぱ難しいんだろうな。

そして俺達はそれから十日ほどの旅をしたが何事もなく街に到着した。流石にレイリーさんやあかねの目がある中で盛大にいちゃいちゃすることは出来ない。護衛という役割もある以上は真面目に仕事しましたよええ。

「じゃあこれが報酬。君たちのおかげで儲けさせてもらえそうだ。ありがとう」

「こちらこそありがとうございました。良い商談になる事を願ってますよ」

レイリーさんと別れ俺達は船を探す事にする。ここからは船で数日間移動して、その後ようやく予定の街に着く感じだ。

「なんだか楽しかったね」

「だな。色んな所を見て回るのも良いと思ったよ。みんないるから暇もしないしな。ただもうちょっと乗り心地が良いといいよな」

旅の醍醐味は景色を堪能することも一つではあるが、やはり気の合う仲間たちと一緒にいる事だと俺は思った。最初に盗賊と勇者狩りした時は結構トラブルに巻き込まれるんじゃないかとビビってはいたが、特に何もなくて安心した。

もっと気楽にやっていきたいがどうしても勇者の影がちらついてしまう。みんなで安全な場所で静かに暮らしたくなってくるぜ。

「キミヒト、はやくご飯食べ行こ」

「キミヒト、また悩み事?」

「相談なら私たちにしてくださいね?」

また変な顔をしていたのか、ロリ達に気を使われてしまった。嬉しいけど申し訳ない気持ちが沸いてくるな。この子らを笑顔にするために一緒にいるのに心配ばっかりさせてたんじゃ世話ないな。

「ああ、何かあったら相談させてもらうよ。んじゃレイリーさんおすすめの所にでも行こうか。港町だしスライムフィッシュも新鮮だろう」

「やった!」

クロエが喜んでいるのが可愛い。いつもクールぶってる女の子が声出して喜ぶの見ると幸せ感じるよね。そのあと顔赤くするとかもう尊すぎるやつですわ。

クロエの頭をなでて港へ向かう。そこに美味しい料理屋さんがあるそうだ。

この港町モンペリエは色々な国から物資が運び込まれていて栄えている。主に海からの食料品はここが産地になっていることも多く、わざわざ魚を食べに来る人がいるほどだそうだ。

魚と言っても魔物だったりするけど。というか普通の動物を見かけることが無いから生態系がどうなってるかはわからない。牛や豚はミノタウロスとかオークだけど作り方は日本の物もある。

絶対過去に日本人が広めたよなってものも数多くある。ミカの服屋なんかはそれ筆頭。色々片付いたらまた新作を求めていくしかないだろ。

この街では人よりも獣人の方が多いような感じを受けるな。やっぱり力仕事とか海の中に入るとなると人間よりも魚人とかの方が活動しやすいもんな。

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