呪いで常識を失ったのでロリと旅に出る

こが

第120話 あかねにやってほしかったのは

クロエとイリスにあかねを任せてきてしまったが、全力疾走するのともう一つの理由であかねが必要になるので回収に行く。もう一つの理由は門番的な人がいた場合の対処方法だ。

「キミヒト、おかえり」

「はやかったわね? どうしたの?」

まじで行き帰りしただけなので全くと言って良いほど時間はかからなかった。そのためイリスとクロエは少し不思議そうな顔をしていたが、俺がおかしい行動をとるのはいつもの事なのであまり気にしてはいなさそうだ。

「ちょっとあかね借りてくぞ」

「え、私?」

「そ、ショウにはサッキュンぶつけとけばいいからちょっと一緒に来てくれ。ちょっとっていうか二日か三日くらいだけど」

「ながっ! 何しに行くの!?」

フラフィーの盾が無くなったことはみんな知っているのでそのことと、新しくなったミスリルのダンジョンに潜入して素材を拾いまくってくることを伝える。と言っても拾うのは最終階層くらいになると思うけど。

「キミヒト、私も行く」

「いや、今回はあかねと二人でいく。その方が動きやすいし人数多いと目立つからな。フラフィー、お前も残るんだよ」

「でも私の装備の……」

「本来なら俺一人でも良いんだけどあかねがいれば帰るの楽だしちょっと待っててくれ。クロエ、みんなの見張りとか色々頼んだ」

「……はい」

「仕方ないわね」

敵が出るなら全員で行っても良かったけど正直敵がいないところに大人数で行くうまみはない。荷物も俺の収納があるから無限に持ち込みも持ち出しも出来るし、あかねがいればダンジョンテレポートで一気に帰れる。

というかもしかしたらダンジョンテレポートで最初から前回の三十階層まですっ飛べるかもしれないしな。新しくなるから望み薄だけども。なのでフラフィーがいても意味はないことを伝える。

確かに自分の装備の素材を自分でとりたいという気持ちはわかるが、そもそも確実にあるというわけでもないし万が一魔物が出た場合は完全に足手まといになる。

それがわかったからフラフィーは引いてくれた。

「っていうかサッキュンはどうしたんだ?」

「あの子は一応魔物だからね、ばれないように外で待機させてる。でもショウ君の見張りに置いておくなら呼んでこようかな。ちょっと待っててね」

あかねはそう言って外に飛び出しものの数分で戻ってきた。はええ。

「んじゃこの子たちの言うこと聞いて大人しくしててね」

「はいご主人様。ってあの、この前は大変申し訳ございませんでした」

サッキュンは俺達に迷惑をかけていたのでみんなに土下座で謝り始める。別にクロエとイリスの圧に負けたわけじゃないと思う。そういう性なのだろう。サキュバスなのにマウント取られやすいの笑える。

「……あかねの支配下なのね。でもあのショウとかいう勇者が暴れたらあなたと私で完封出来そうね」

「お姉ちゃん、悪い顔」

「知り合いに洗脳持ちが多すぎて怖いです」

俺も怖いよ。まじで不屈のスキルが無かったら生きていくことが非常に難しい世界になってた気がする。というかクロエとあかねとサッキュンで暴れさせたら街一つくらい簡単にやっちまえそうだな。

クロエの魅了で大人しくさせてサッキュンの魅了で操ってあかねの意志疎通ですべての情報抜き出して一族郎党一網打尽って感じで。え、怖すぎ。

「なに? キミヒト君」

「いいやなんでも」

流石の俺でも引いてしまうぜ。いやクロエの魅了に関しては毎日受けたいと思ってるけど。サッキュンもロリタイプでいてくれれば別に食らっても良いんだけどな。

いまはずっと大人タイプでいるようだ。そっちの方が魔力を扱えるみたいだしあっちのロリタイプは省電力モードみたいなものなんだろう。うん、魔力を奪う方法が必要だな。

「ええと、ご主人様。早くいかれてはいかがでしょうか」

「おっとそうだったね。行こうキミヒト君」

「ああ。んじゃみんな、またな」

「キミヒト、気を付けていってらっしゃい」

「いてらしゃ」

「いってらっしゃいです」

みんなに見送られて俺とあかねは宿屋を後にした。時刻は夕刻くらいなので人目を忍んで行動するにはなかなかに良い時間帯だ。夜だと警戒され過ぎ、朝でも怪しさ満点。このタイミングならいつでも怪しいと言えば怪しいけど。

っていうか今思ったんだけどゴンズのところでダンジョン探索禁止令が出てるって言われたけど、ジーギスムンド情報拡散させるのはええな。これがギルドマスターの力ってやつか。

ダンジョン攻略して報告して、そしてショウに襲撃されて少し休んでこれだもんな。俺のところへの応援じゃなくて、街の安全を重視したのか俺たちの実力を信用してくれたのかはわからないところだ。

でもあそこにロンドの連中がいたし信用してくれた説の方が納得できるか。そういえばなんだかんだで精力剤渡してないな。みんなには渡したって嘘ついたけどまだ全部もったままだ。

「キミヒト君、やっぱり見張りいるね」

「だな。んじゃちょっくらやっちまってくれ」

「おっけ。ねぇねぇそこの人」

「誰だ、今この辺りは立ち入り禁止だぞ」

あかねは見張りに声をかけ気軽に近づいていく。俺はそれを二人から見えないように隠れて見守り会話の内容を聞く。

「ちょっと新しくなったダンジョンの中見たくなったんだけど入れてもらえないかな?」

「ダメだ。今スタンピードが起きるって言われているからな。イレギュラーは起こすわけにはいかん」

「そこをなんとか。別に攻略しようってわけじゃないんだ。ちょっとだけ素材回収したいだけなの。ね?」

あかねはそう言って少し甘えたような声を出して見張りの人を籠絡しようとする。しかし見張りは仕事熱心なのか、そっちに興味がないのか全く反応を示さない。

「決まりは決まりだ。どうしてもダンジョンに入りたいなら食料のダンジョンだけは空いている。そちらに行けばいいだろう」

「どうしてもだめ?」

「どうしてもだめだ」

「仕方ない。あなたのお嫁さんのモレナさんに言っちゃおうかな。ついでに娘さんのベラさんにもね」

「は……? どうして私の妻と娘の名前を知っている?」

あかねはさっきまでの甘えた声ではなくいつもの飄々とした声を出し引き返そうとする。その姿に嫌な予感でも感じたのか見張りの人は慌てて待ったをかける。

「ま、待て。何を言おうと言うんだ! 俺は何もしてないぞ!」

「そうだね。モレナさんにもベラさんにも何もしてないよね。でもさぁ、三年前に王都でそっち系のお店行ってたよね。モレナさんと結婚した直後だったのに」

「な、なんでそれを! いや、俺は上司に連れられて無理やり」

「ええと、その時のお相手はビビアンさん。かなり盛り上がってたみたいだね? そして何回も通ったから名前も覚えてもらっていると。なるほどねぇ」

「何が言いたい……?」

「いや別に? あなたがここでお仕事をするなら私はちょっと西の方にあるあなたのおうちに今の情報を手紙に書いて置いてくるだけだよ」

「やめてくれ! 今は」

「今は娘さんに嫌われたくないんですよね? いつも仕事でいないから父親としての尊厳が皆無でそんな話言われたらもう本気で嫌われちゃいますね? あー家庭崩壊の危機でもあるなぁ。真面目な門番だった夫が本当は浮気していたなんて」

あかねの言葉に見張りの男は黙るしかなかった。

「……私は何も見なかった。攻略だけはしてくれるなよ」

「はいはいお仕事お疲れさん」

見張りの男はうなだれ、秘密を知られていることに恐れ涙を流していた。そんなにやばいなら行くんじゃないよ全く。パワハラで無理やり連れて行かれたにしてもそのあと通うのはやっちゃだめでしょう。

そう、俺が見張りがいた場合あかねにやってほしかったのは見ての通り。相手の弱みを握り、こちらの要望を通すために理不尽な状況を作り出す手法。

すなわち脅迫だ。

完全にスキルの悪用である。まじで善良な奴いないんじゃないか。

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