呪いで常識を失ったのでロリと旅に出る

こが

第78話 ノリと勢い

「ええとそれで私はどうして呼び出されたんですかイリス様……」

水の精霊はイリスのやんちゃぶりにかなりビビりながら質問してきた。下手なこと言うとまた攻撃されるんじゃないかと警戒しているのが丸わかりである。

「精霊、いたから」

「やめてあげて?」

あ、精霊いたから攻撃しよーって普通ならんやろ。もうちょっと優しくしてあげてもいいと思うんだけどどうだろうか。

というのもこの精霊あんな派手に怒りながら登場したけど実際は弱気なんじゃなかろうか。とりあえず怒りに任せて飛び出したものの強い人には絶対に逆らわないというオーラを感じる。

もしかして精霊ってみんなこんななのかな。いじられキャラ感でてるからそれでちょっかいかけて遊んでるとかだろうか? たち悪いけども。

「違う。精霊普通に呼びかけても出てこない。見かけたら挨拶くらいする」

「もうちょっと穏便な方法はないですかね……」

どうやらただ挨拶したかっただけらしい。二回目の攻撃はとりあえず面白そうだから撃ってみるとかそういう感じですか。魔法攻撃はあいさつ代わりにもなる便利なものだという認識かもしれない。

「それにこんなところにいたら気になる。何かあった?」

「ええとそれは……」

イリスによれば通常精霊たちは自然の中に潜んでいることが多いらしい。イリスのようにハーフだったり自我を持っている精霊は自由に動き回れるらしいがダンジョンの中にいるのは珍しいらしい。

なのでちょっと強硬手段ではあったけど無理やり呼び出して事情を聞こうと思った、これがイリスが攻撃魔法を撃った理由。真面目でビビるわ。

最近のイリスがやんちゃすぎて色々と信用できないのがいけない。

「力になれるかも、訳話す。そうじゃなくても楽になるかも」

「イリス様……暴力娘とか思ってすいません、実は」

水の精霊曰く、本来はどこかの森で泉の精霊として遊んで暮らしていたようだ。よくある落としたのは金と銀どちらですか的なあれだね。

人間と浅く関わるそんな生活は水の精霊にとても合っていたらしく充実した日々だったそうだ。なかなか人も来ない奥地でまったりすごし、そこまで足を伸ばす人間には優しくしてやろうとそういうことを始めた。

そんなある日、いつも通り人間がやってきてものを投げ入れてきたがそこから悲劇が始まった。

「あなたが落としたのは……」

「心だ」

「……は?」

「惚れた。どうやら私は泉に心を落としてしまったらしい。すまない、そんな無粋な物じゃなく次は美しいものを持ってこよう」

そしてその男は落し物を回収せずそのまま帰宅。水の精霊は落し物の処分に困ったがそれ以上に困ったことになりそうだったので思考を放棄した。

次の日、男はまたやってきた。本当に今度は洒落た花束を持ってきてひたすらに質問を投げかけてきたらしい。水の精霊も落とされたアイテムを受け取って貰えないのでその場からどうすることも出来ずただただ聞くだけ。

その次の日も、次の日も毎日毎日。ストーカーのごとくやってくる相手にいい加減疲れてしまったようだ。そしてもらったプレゼントはどんどんたまっていき処理にも困り逃げるしかなかったとのこと。

極まってるなぁ。

「というわけで元の住処から逃げ出してこちらへやってきました。流石に大陸渡ってしかもダンジョンの中ならだれにも見つからないだろうと思って」

「そんなに嫌だったんだ……」

普通に話し相手程度ならいくらでもしていたらしいが、求婚されるまでに至りこいつはやばいと撤退してここまで来たらしい。大陸渡るって相当だろ。

相手の精霊スキーさんは今でも探し回っているのだろうか。

「事情はわかった。お疲れ」

「お疲れさまです」

なのでこちらとしてもこう言う他はない。住処を追われて逃げ出した精霊に対して出来る事なんて何もないだろう。俺に出来ることはさっさとこの場を離れて見なかったことにするくらいかな。

この精霊に必要なのは心を休める時間だと思う。

「ここはダンジョンの中だから落し物する人もいないですし、のんびり出来てとてもいいところです。水も綺麗で私好みではあるんですが、魔素が濃いから疲れるのがつらいところですね」

水の精霊というくらいだから綺麗な水を好むのは確かにあるだろう。しかしこういった場所で精霊が暮らしていると言う話は聞いたことがない。精霊や神といった存在は魔素を嫌う性質があるということか。

それにしてもイリスの存在に気づいてから大人しくなりすぎだろ。

「元気なら良い。あと解決方法はわかんないけど何かいい案あったら伝えに来る。移動する時は気にしないで良い」

「イリス様、ありがとうございました」

水の精霊はそういって水の中に沈んで行った。暴力的な出会い方をしてしまったけど終わってみれば平和……平和かはわからないけど平和に終わった。

イリスが精霊に声かけてるのを見るとやっぱ精霊に関係が深い存在なんだなと思わされるな。神聖なロリってこうなんかグッとくるものがある。

「じゃあいくか」

「うん」

精霊のいた所から離れていきお目当てだった柔亀討伐に向かうが、クリーンアリゲーター以外の魔物が一切出てこない。一階に出ると聞いていたがどうしてだろうか?

ダンジョンの生態系が変わる事は滅多にないという話だし、もしそんな話題があったらギルドとかで告知されることだろう。めちゃくちゃ過疎なダンジョンでもない限り。

となると呼び出すしかないな。

「イリス頼んだ」

「アイス……」

「待ってください待ってください出ていきますから攻撃はやめてください!」

事情を知ってそうな水の精霊を呼び出すためにもういっちょ魔法をぶち込んでもらおうかと思ったが自分からすんなり出てきた。ずっとここにいるから不思議に思って監視でもしていたのだろうか。

「なんで攻撃しようとしたんですか! 言ってくれれば普通にでてきますよ」

「ノリと勢い。あと突っ込み不在だから」

「ひどい理由ね……」

精霊に対してロリ達が何か言ってるけど俺もどっちもその通りだと思うわ。やっぱフラフィーがいないと突っ込み力が足りないな……。くそ、良い雰囲気になって無ければ素直に連れてきたのに。

「水精霊、ここ柔亀いるよね?」

「あーそういうことですか。ごめんなさい食料にしちゃいました」

……? 食料?

「たぶん五階層くらいまでいかないと出てこないと思います」

え、こいつ食ったの? カメを?

見かけによらず生の肉食かよ。というか精霊もお腹空くのね、それにダンジョンの生き物食べて満たされるっていうのもなんかちょっと怖い感ある。

だが絶滅していないなら特に問題はないだろう。ちょろっといって回収してきますかね。

「呪いで常識を失ったのでロリと旅に出る」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く