呪いで常識を失ったのでロリと旅に出る

こが

第67話 人間らしさ

「ごめん! お待たせ!」

最初に連絡を入れてから数時間、あかねが宿屋に走りこんできた。直前に連絡はもらっていたのでこちらのメンバーは全員そろっている。

「ロンドのメンバーはどうした?」

「ふふ、彼らはああ見えてもこの街じゃ有名人だからね。色々手回ししてもらってる」

なるほど、確かに俺たちがいきなりうろつきまわってたら怪しく思われるかもしれない。その辺をロンドのメンバーが上手くやってくれれば自由に動けるだろう。

あいつらにも頭が上がらないな。

「じゃあ急ごうみんな」

「ああ」

あかねが合流したことにより捜索範囲は一気に広がった。というか街の半分を網羅しているとかどう考えてもやばいスキルだなこれ。

あかねはきょろきょろしながら街を歩いていく。俺は透視をしながら怪しいところがないかを調べてついていく。

「ん、ちょっと待って。人質とかいう単語拾えた。少し集中する」

あかねはそういって目を閉じ手を耳の近くに持っていく。方向を確認して場所を正確にはかろうとしている感じだ。

「人質、計画……」

あかねは単語をいくつか挙げながら方向を探している。くるくる回りようやく止まったかと思うとその場に膝を着く。

「あかね、大丈夫か?」

「うん、なんとか。でもたぶんさっきので間違いないと思う」

この広い街の中から特定の声を聴き場所を特定する。相当神経に負荷がかかるだろう。聖徳太子なんて目じゃないくらいの勢いだと思う。

「近いのか?」

「かなり遠い。街からでるかも」

まじかよ。いや普通に考えると魔族がこの街に入るのは難しいのか? そのための門番だろうし。

じゃあどうやって中まで入ってイリスとフラフィーを襲ったんだ。地上でテレポート使うとかは無しでお願いしますよマジで。そうしたら手も足も出ない。

「行こう」

クロエとイリスはローブを深くかぶり、俺とあかねは普通にして走る。あかねが言う方向は今まで訪れたことのない方向だった。

治安があまり良くない場所で、スラム街というほどじゃないがそれなりに危険な場所らしい。ダンジョン街でありながらダンジョンも少ないため、あまり人の出入りもないっぽい。

そのため宿屋なども安く、空き家が多く存在している。お尋ね者でお金が無い場合はこの辺りに住む人が多いようだ。

そんな場所を抜けて街の外にでる。門番にはロンドの連中が話を通してくれていたようですんなり通れる。優秀すぎる。

そのまま森の方へ走っていくとあかねが止まる。

「このあたりのはずなんだけど」

森の中は視界が悪くあたりも暗いためほとんど周りを見ることが出来ない。しかし俺にはそんなものは関係なかった。

透視を使って周囲を確認していると森にはあまり見慣れない建物があった。

「小屋と……地下か?」

小屋というにはこじんまりとしていて、物置のような建物がある。そしてその床の部分に魔力でガードされた扉があった。そのため中を覗くことは出来ない。

「キミヒト、どうする?」

「壊すと気づかれるか? ……でもやるしかない」

魔法で破壊する手もあるが、出来る限り音を立てたくはない。そのため俺のトオシを使ってこじ開ける。

鍵の部分に剣を刺しこみ解除する。相手が動いていなければこっちの方がもろくても相手の部分を壊すことが出来るのですんなり破壊は成功する。クロエとイリスを助けた時を思い出すな。

破壊したことにより鈍い破砕音が響く。扉の近くに見張りでもいたら一発でばれる事だろう。

「俺が先行する。あかねとイリスはここで待っててくれ。もしもの時は助けを呼んでくれ。クロエは俺と来て、中の連中を見つけたらすぐさま魅了をかけて無力化してくれ」

「キミヒト……うん、わかった」

イリスが何か言いたそうだったが、この分担が最善だろう。あかねなら誰かがきたらすぐ気づくし、イリスがいれば防衛も容易だ。イリスもそれがわかっているから黙ったと思われる。

そして侵入する俺たちは壁越しに敵を発見出来て出会いざま魅了で無力化する。可能な限り静かに行きたい以上こうするしかない。一人にするのも危険だし、四人で入るのも逃げられないときに危険だ。

一番責任を感じているイリスを置いていくのは少し心配だが、ここはこうするしかない。こういう場所ではイリスよりもクロエの方が制圧力がある。

梯子を下りていくとそこにはいくつか部屋があったがどこもそれほど広くはない。穴を掘って無理やり隠れ家にしたような感じだろうか。

「この部屋に三人、行くぞ」

「ええ」

扉を静かに開け、中に侵入する。すぐに気づかれるがクロエを見た瞬間に硬直する。そして俺はそいつらにとどめを刺していく。

「キミヒト、これ……」

「人間、だな」

さらったのは魔族だとばかり思っていたが、そこにいたのは人間たちだった。しかもどれも盗賊や山賊のような見た目をしている。簡単にいうとぼろい服を着ていると言うことだ。

たしかに人間だったら街の中に入ることは簡単だ。イリスとフラフィーをさらうには実力が不足しているだろうが、人間に姿を似せた魔族を連れ込むことくらいは出来そうだ。

しかし、人間だと。しかもまともそうには見えない盗賊たち。

魔族に協力しているだろうことからも人間らしさなど捨てているだろう。そんな連中の中にフラフィーのような女の子を放り込んだらどうなる。

……無事でいてくれ。

焦りを抱えながら次の部屋を探索する。部屋の数はいくつかあるが、魔力の濃度が濃いのか妨害の術式でもあるのか、中の人数くらいしかわからない。しかもかなり近づいた状態でだ。

焦りが募る。フラフィーを助けるためにはここの連中を全員殺したほうがいい。後でばれても面倒だ。それに俺の大事な仲間をさらったやつを見逃すことは出来ない。

順番に扉を開けていき処理していく。ほとんど物音を立てる隙を与えないため簡単に片付く。

今のところは全て人間だ。殺し慣れてはいるがここまで淡々と処理していくのは初めてなのでいくらか気分が悪い。しかしクロエにやらせるのは嫌なので止めは全て俺が刺していく。

そして最後の部屋を透視でのぞいてみると立っているのは一人だけだった。そして床には数人倒れているのが見える。どういう状況だ?

「キミヒト、どうしたの?」

「この部屋は何か変だ。今まで以上に警戒してくれ」

俺はクロエに声をかけ扉を開ける。そこにはフラフィーが立っていた。

血まみれで。

脱力していながらも目には異常な輝きを持っていて。

それは獰猛な獣を思わせ、どこか狂気を感じさせる瞳だった。

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