呪いで常識を失ったのでロリと旅に出る
第53話 私の事、知ってくれる?
「クロエ……先手はイリスに譲るんじゃなかったのか?」
ドキドキと高鳴る心臓の音が悟られないように努めて平静な声をだす。たぶんばれてるだろうけど恰好だけは一応どうにかしておかないと一瞬で理性が飛ぶ。
「ふふ、私は誘うだけ。キミヒトが、してくれるんでしょう?」
クロエはイリスが先で良いと言っていた。それは手を出す場合のほうだったと。俺から手を出されるという意味ならそれは確かにどちらでもない。卑怯すぎる。
そして俺は何故部屋に戻っているのか。俺は何故二人きりになっているのか。俺はどうしてまだ抵抗を続けようとしているのか。そしてこの異常な興奮はなんなのか。
なんだろうか、魅了にかかった時のような妙な気配を感じる。あの時のような強制的な感情ではないが、身を任せてしまいたいようなまどろみを思い起こさせる。
あぁ、これは何かされたか?
クロエに?
いつだろうか。
どうでもいいかもしれないな。
「キミヒト、横になって」
「ああ」
俺はクロエにベッドに押し倒される。クロエは俺の事をいつも見上げていた。下から覗き込むような視線に興奮を覚えることもあった。
しかし押し倒された今、下から見上げるクロエもとても可愛いと素直に思える。いや、可愛いどころか衝動的な欲望に駆られる。
だが、やはり何かがおかしい。クロエは俺を押し倒していながら少しためらうような雰囲気を放っている。
もういいじゃないか。ここまで来ておあずけはないだろう。
俺はクロエを抱き寄せ強く抱きしめる。そして声をかける。
「クロエ、何かした?」
異常な興奮を意志の元押さえつける。そう、この感情を押さえつけることが出来ると言うことはこれが状態異常に類するものであるという証拠でもあった。
「……やっぱり、キミヒトには効かないのね」
クロエは緊張を解いてそのまま俺にもたれかかる。いや充分効いてるんですが。のしかかられるとやばいんですが。
異常な興奮はスキルで打ち消すことに成功したが、だからといって興奮が冷めるわけでもなし。普通の状態でもこんなんされたら興奮するっつうねん。戦闘状態だわ。
それに気づいているのか気づいていないのかクロエは俺の胸に手を這わせながら話し始める。あの、その。
「血、吸ったでしょう? あれは興奮作用があるのよ。私が誘えば発動するような、そんな効果がね」
あの時か、異常な興奮を覚えたのは俺がロリコンだからとかクロエ可愛すぎるとか愛おしさ以外の感情も混じっていたらしい。だから気づかないって。
元から好きな子に色仕掛けされたところで感情操作されたとか誰が思い至るんだよ。
「そうなのか。クロエが可愛すぎて気づかなかった」
「ばか……」
クロエは吸血したところにもう一度口をつけ、今度は血を吸わずに甘噛みだけをする。ちろちろと緩やかに動く舌の感触に脳髄が溶けてしまいそうな快感を覚える。
我慢するためにクロエを抱きしめる手に力が入ってしまう。
「あっ……」
そのせいかクロエは色っぽい声を出して今度は肩口じゃなく首筋に甘噛みをする。
「クロエ、俺は元から好きだよ。色仕掛けなんかで縛ろうとしなくたって、一緒にいるよ」
甘い言葉をささやくが、俺の劣情はピークに達しかけていた。正直なところ我慢している俺のこの感情をどうにかしてやりたい。
しかしクロエの本当の気持ちを聞かないことには手を出すのは誠実ではないと理屈をこねくり回しなんとか気持ちを落ち着かせる。
「キミヒト、私はあなたに感謝しているの。私は人の心をもてあそぶ吸血鬼、それなのにあなたはこんなにも普通に接してくれる……」
クロエは何故か俺の服に手をかけ脱がしていく。俺は頭がいかれてしまったのでその行動を止めることはできなかった。前開きの服着ててよかった。そうじゃなかったら脱がすの大変だもんね。
「里では忌み嫌われ、外に出てからも追われて……捕まりそうになるたび力を使って。それでさらに自分が卑しい生き物だって思い知らされて。いつしか開き直ってもいた」
って違う。あかん、まじで。可愛い。死ぬ。
クロエは俺の肌を直接優しくなでていく。上から下へ、指先でじっくりと。爪先が肌に触れるたびに声を出しそうになるがなんとかこらえるので精一杯だった。
「魅了を使えばだれでもいうことを聞かせられる。そううぬぼれていた。でもキミヒトが私の魅了をはじいた時、私は私を思い出せたわ。私は、私を知ってほしかったんだって」
クロエはその手を俺の顔に伸ばし、自分の方に向ける。見つめあう形になり、クロエの寂しそうな瞳、赤く吸い寄せられるような唇、そして甘い匂いが一気に俺の中を駆け巡る。
「誰も私を知ろうとしなかった。ただ私の力が欲しかっただけ。そんな奴らに対して力を使ってたとばかり思っていたけど、中には心配してくれていた人もいたのかしらね」
俺は金縛りに合ったかのように動けず、ただただクロエの独白を聞いていた。理性と欲望がせめぎあいながら、それでもクロエから目を離せなかった。
「でも今はそれでよかったと思ってる。だってキミヒトに会えたから」
そしてクロエは体を起こし、真上からしっかりと俺の目を見てこう言った。
「ねぇキミヒト」
「なんだ?」
「キミヒトはこんな私でも、私の事、知ってくれる?」
クロエはゆっくりと顔を近づけ、唇を重ねてきた。
ドキドキと高鳴る心臓の音が悟られないように努めて平静な声をだす。たぶんばれてるだろうけど恰好だけは一応どうにかしておかないと一瞬で理性が飛ぶ。
「ふふ、私は誘うだけ。キミヒトが、してくれるんでしょう?」
クロエはイリスが先で良いと言っていた。それは手を出す場合のほうだったと。俺から手を出されるという意味ならそれは確かにどちらでもない。卑怯すぎる。
そして俺は何故部屋に戻っているのか。俺は何故二人きりになっているのか。俺はどうしてまだ抵抗を続けようとしているのか。そしてこの異常な興奮はなんなのか。
なんだろうか、魅了にかかった時のような妙な気配を感じる。あの時のような強制的な感情ではないが、身を任せてしまいたいようなまどろみを思い起こさせる。
あぁ、これは何かされたか?
クロエに?
いつだろうか。
どうでもいいかもしれないな。
「キミヒト、横になって」
「ああ」
俺はクロエにベッドに押し倒される。クロエは俺の事をいつも見上げていた。下から覗き込むような視線に興奮を覚えることもあった。
しかし押し倒された今、下から見上げるクロエもとても可愛いと素直に思える。いや、可愛いどころか衝動的な欲望に駆られる。
だが、やはり何かがおかしい。クロエは俺を押し倒していながら少しためらうような雰囲気を放っている。
もういいじゃないか。ここまで来ておあずけはないだろう。
俺はクロエを抱き寄せ強く抱きしめる。そして声をかける。
「クロエ、何かした?」
異常な興奮を意志の元押さえつける。そう、この感情を押さえつけることが出来ると言うことはこれが状態異常に類するものであるという証拠でもあった。
「……やっぱり、キミヒトには効かないのね」
クロエは緊張を解いてそのまま俺にもたれかかる。いや充分効いてるんですが。のしかかられるとやばいんですが。
異常な興奮はスキルで打ち消すことに成功したが、だからといって興奮が冷めるわけでもなし。普通の状態でもこんなんされたら興奮するっつうねん。戦闘状態だわ。
それに気づいているのか気づいていないのかクロエは俺の胸に手を這わせながら話し始める。あの、その。
「血、吸ったでしょう? あれは興奮作用があるのよ。私が誘えば発動するような、そんな効果がね」
あの時か、異常な興奮を覚えたのは俺がロリコンだからとかクロエ可愛すぎるとか愛おしさ以外の感情も混じっていたらしい。だから気づかないって。
元から好きな子に色仕掛けされたところで感情操作されたとか誰が思い至るんだよ。
「そうなのか。クロエが可愛すぎて気づかなかった」
「ばか……」
クロエは吸血したところにもう一度口をつけ、今度は血を吸わずに甘噛みだけをする。ちろちろと緩やかに動く舌の感触に脳髄が溶けてしまいそうな快感を覚える。
我慢するためにクロエを抱きしめる手に力が入ってしまう。
「あっ……」
そのせいかクロエは色っぽい声を出して今度は肩口じゃなく首筋に甘噛みをする。
「クロエ、俺は元から好きだよ。色仕掛けなんかで縛ろうとしなくたって、一緒にいるよ」
甘い言葉をささやくが、俺の劣情はピークに達しかけていた。正直なところ我慢している俺のこの感情をどうにかしてやりたい。
しかしクロエの本当の気持ちを聞かないことには手を出すのは誠実ではないと理屈をこねくり回しなんとか気持ちを落ち着かせる。
「キミヒト、私はあなたに感謝しているの。私は人の心をもてあそぶ吸血鬼、それなのにあなたはこんなにも普通に接してくれる……」
クロエは何故か俺の服に手をかけ脱がしていく。俺は頭がいかれてしまったのでその行動を止めることはできなかった。前開きの服着ててよかった。そうじゃなかったら脱がすの大変だもんね。
「里では忌み嫌われ、外に出てからも追われて……捕まりそうになるたび力を使って。それでさらに自分が卑しい生き物だって思い知らされて。いつしか開き直ってもいた」
って違う。あかん、まじで。可愛い。死ぬ。
クロエは俺の肌を直接優しくなでていく。上から下へ、指先でじっくりと。爪先が肌に触れるたびに声を出しそうになるがなんとかこらえるので精一杯だった。
「魅了を使えばだれでもいうことを聞かせられる。そううぬぼれていた。でもキミヒトが私の魅了をはじいた時、私は私を思い出せたわ。私は、私を知ってほしかったんだって」
クロエはその手を俺の顔に伸ばし、自分の方に向ける。見つめあう形になり、クロエの寂しそうな瞳、赤く吸い寄せられるような唇、そして甘い匂いが一気に俺の中を駆け巡る。
「誰も私を知ろうとしなかった。ただ私の力が欲しかっただけ。そんな奴らに対して力を使ってたとばかり思っていたけど、中には心配してくれていた人もいたのかしらね」
俺は金縛りに合ったかのように動けず、ただただクロエの独白を聞いていた。理性と欲望がせめぎあいながら、それでもクロエから目を離せなかった。
「でも今はそれでよかったと思ってる。だってキミヒトに会えたから」
そしてクロエは体を起こし、真上からしっかりと俺の目を見てこう言った。
「ねぇキミヒト」
「なんだ?」
「キミヒトはこんな私でも、私の事、知ってくれる?」
クロエはゆっくりと顔を近づけ、唇を重ねてきた。
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