シチ
000・・・
「何でだよ、僕を助けてくれたのはあなたじゃないですか」
上擦った声で問いかけた。
声が震えたのは、怒りなのか悲しみなのか。僕にさえわからなかった。
 
「誰も他人を助けることなんて出来ないさ、お前は自分自身の力で生きている、それだけだ」
彼ははっきりした口調でそう答えた。だが、口調と裏腹にそのまなざしは生気を失い、その視点はどこか空中をさまよっている。
 
風が耳の横を通り抜ける。
その冷ややかな感覚だけははっきり覚えていた。
 
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