金色天狗とツノ無し鬼
第24話 落とし物はどこに
子供天狗は横穴で目を覚ました。
ゆっくり外へ出て、少し歩く。
木々の無い開けた場所に辿り着くと、明け方の空が出迎えてくれた。
数日前の事。
鬼丸を迎えに行って何故かそこで鬼達と喧嘩をし、終わった時にはすっかり寝入ってしまい、当初の目的であった"童の家裏の土砂岩を片付けに"行く事が出来なかった。
あらためて鬼丸と話し、人目のつかない次の新月に行く事にしたのだった。
天気はいいのに、遠くに雷雲が見える。
あの日、もう一つ大変な事態が起きた。
それは、再び巻物を失くした事に気づいたという事。
鬼丸の傷を押さえようと衣を脱ぎ去った時に落としたのではと思ったが、どんなに探しても無い。
あの日の朝方はあったのを確認をしている。
だから、あの日歩いたどこかに落ちていると思ったのだが…。
山ギツネが言うには、鬼達との戦いの中、団扇の風で遠くに飛んでいってしまった可能性もあると。
もしそうだとしたら、もう探す術は無い。
再び巻物を失くした事を知って山ギツネは、ほれ見ろ失くすと言ったじゃろ、と偉そうに憎まれ口で向かってくるものだから腹を立てた。
山ギツネと言えば、あの日から毎日どこかに出掛けている。帰ってこない日もある。
人間を山に入れない様、通せんぼしなくてもいいのかと聞いたら、それどころでは無い事態になってしまった、との事だった。
どんな事態なのか聞いたら、お前は巻物をはやくみつけんか、と叱ってきた。
教えてはくれなかったが、きっとあの日の鬼達の事だろう。鬼丸も含めて。
山ギツネは鬼丸を認めてくれたが、人間を食べない鬼など聞いた事が無い、とか、人間になりたい鬼など聞いた事が無い、とか、人間の婆に名前をもらったなんて信じられない出来事だ、とか、そりゃもう驚いてた。
なんだか山ギツネより偉い天人とやらに話をしに行くと言っていた。
元々鬼丸は、婆が死んだ後にずっとずっと北の方からこちらへ流れてきたらしい。
この辺りの鬼とは種族が違うんだと本人も言っていた。
鬼丸が人間の村の番をしたいと人里に行っても、恐れられるだけだったらしい。
受け入れてくれる村を探していたら、いつの間にか遠くに来てしまったと。
あんなに優しくて強い鬼が守ってくれると言うんだから、その村は幸せもんだと思うが、そこはやはり人間なのだ。怖がりやだ。
この辺りに着いて、やっと話をしてくれる人間に会ったと言っていた。それはきっと岩山を崩すお願いをして来たやつだ。
山ギツネはその人間の話を聞いていた時、すごく苦そうな顔をしてた。
あの日の鬼達といえば、喧嘩した鬼どもはあの後天狗達に地獄に帰されたらしい。鬼丸と俺にやられて寝てた鬼もだ。
天狗が争おうとしている東の鬼とは違うその大きさと力に随分驚いてたそうだ。
俺と鬼丸は寝ていたので、天狗達がどんな反応をしていたのかは見ていない。見たかったかも知れない。
懐から遠くを近くに見る道具を出して、童の様子を覗く。
今日も童は早起きだ。
割れた板はある程度集めた様で、前に話をしていた村の大人へ渡していたのを前に見た。ある程度、というのは、どんなに探しても見つからない部分があるらしく、これは盗み聞きの結果知った。
鬼丸と土砂岩を片付けにいく新月はまだ先だ。それまでの人気のない夜に、見つからない破片とやらを探しに行こうと考えている。
探し物を探しても見つからない気持ちは良く知っている。なんと果てしない気持ちになるだろうか。
それに、割れた板を探すはめになったのは元を正せば自分のせいなので、その罪悪感もあった。
そうやって童の事であれこれ考えていると、童の背景でしかない村の様子がいつもと違う事に気づいた。
いつもは大人の村人が事あるごとに童に声をかけて来る。何をしに来たのかといつも不満に思うのだが、そのおかげで童が喋るのを聞くことが出来るので良しとしていた。
他の村人は一体何をしているのかと、筒の道具を動かして見る。しかし誰も見当たらない。
もう一度動かしてみると、村人達が集まっているのが見えた。
何をしているのかわからないが、何だろうか、祭りでもあるのだろうか?
集まっている場所は、童の家からはかなり遠く、つまり童の家近辺には人気が無い。
子供天狗は思いついてしまった、今からこっそり行ってみてもいいだろうか?と…。
ゆっくり外へ出て、少し歩く。
木々の無い開けた場所に辿り着くと、明け方の空が出迎えてくれた。
数日前の事。
鬼丸を迎えに行って何故かそこで鬼達と喧嘩をし、終わった時にはすっかり寝入ってしまい、当初の目的であった"童の家裏の土砂岩を片付けに"行く事が出来なかった。
あらためて鬼丸と話し、人目のつかない次の新月に行く事にしたのだった。
天気はいいのに、遠くに雷雲が見える。
あの日、もう一つ大変な事態が起きた。
それは、再び巻物を失くした事に気づいたという事。
鬼丸の傷を押さえようと衣を脱ぎ去った時に落としたのではと思ったが、どんなに探しても無い。
あの日の朝方はあったのを確認をしている。
だから、あの日歩いたどこかに落ちていると思ったのだが…。
山ギツネが言うには、鬼達との戦いの中、団扇の風で遠くに飛んでいってしまった可能性もあると。
もしそうだとしたら、もう探す術は無い。
再び巻物を失くした事を知って山ギツネは、ほれ見ろ失くすと言ったじゃろ、と偉そうに憎まれ口で向かってくるものだから腹を立てた。
山ギツネと言えば、あの日から毎日どこかに出掛けている。帰ってこない日もある。
人間を山に入れない様、通せんぼしなくてもいいのかと聞いたら、それどころでは無い事態になってしまった、との事だった。
どんな事態なのか聞いたら、お前は巻物をはやくみつけんか、と叱ってきた。
教えてはくれなかったが、きっとあの日の鬼達の事だろう。鬼丸も含めて。
山ギツネは鬼丸を認めてくれたが、人間を食べない鬼など聞いた事が無い、とか、人間になりたい鬼など聞いた事が無い、とか、人間の婆に名前をもらったなんて信じられない出来事だ、とか、そりゃもう驚いてた。
なんだか山ギツネより偉い天人とやらに話をしに行くと言っていた。
元々鬼丸は、婆が死んだ後にずっとずっと北の方からこちらへ流れてきたらしい。
この辺りの鬼とは種族が違うんだと本人も言っていた。
鬼丸が人間の村の番をしたいと人里に行っても、恐れられるだけだったらしい。
受け入れてくれる村を探していたら、いつの間にか遠くに来てしまったと。
あんなに優しくて強い鬼が守ってくれると言うんだから、その村は幸せもんだと思うが、そこはやはり人間なのだ。怖がりやだ。
この辺りに着いて、やっと話をしてくれる人間に会ったと言っていた。それはきっと岩山を崩すお願いをして来たやつだ。
山ギツネはその人間の話を聞いていた時、すごく苦そうな顔をしてた。
あの日の鬼達といえば、喧嘩した鬼どもはあの後天狗達に地獄に帰されたらしい。鬼丸と俺にやられて寝てた鬼もだ。
天狗が争おうとしている東の鬼とは違うその大きさと力に随分驚いてたそうだ。
俺と鬼丸は寝ていたので、天狗達がどんな反応をしていたのかは見ていない。見たかったかも知れない。
懐から遠くを近くに見る道具を出して、童の様子を覗く。
今日も童は早起きだ。
割れた板はある程度集めた様で、前に話をしていた村の大人へ渡していたのを前に見た。ある程度、というのは、どんなに探しても見つからない部分があるらしく、これは盗み聞きの結果知った。
鬼丸と土砂岩を片付けにいく新月はまだ先だ。それまでの人気のない夜に、見つからない破片とやらを探しに行こうと考えている。
探し物を探しても見つからない気持ちは良く知っている。なんと果てしない気持ちになるだろうか。
それに、割れた板を探すはめになったのは元を正せば自分のせいなので、その罪悪感もあった。
そうやって童の事であれこれ考えていると、童の背景でしかない村の様子がいつもと違う事に気づいた。
いつもは大人の村人が事あるごとに童に声をかけて来る。何をしに来たのかといつも不満に思うのだが、そのおかげで童が喋るのを聞くことが出来るので良しとしていた。
他の村人は一体何をしているのかと、筒の道具を動かして見る。しかし誰も見当たらない。
もう一度動かしてみると、村人達が集まっているのが見えた。
何をしているのかわからないが、何だろうか、祭りでもあるのだろうか?
集まっている場所は、童の家からはかなり遠く、つまり童の家近辺には人気が無い。
子供天狗は思いついてしまった、今からこっそり行ってみてもいいだろうか?と…。
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