第93話　魔獣の間引きへ

翌朝、アリーセはいつもより早い時間帯に起きだした。
今日は、ロジェルと共に魔獣の間引きをするために王都の東側に行く予定である。

「一気に冷えますね」

季節はいよいよ冬本番といった所である。
ちなみにこの世界にもきちんと四季は存在していた。

アリーセは、いつもコートに袖を通すと、リビングへと降りて行った。

「おはようございます。お早いですね」

「おはようございますわ。今日は朝から行こうと思ってましたので」

リビングに降りると、ロジェルが出迎えてくれる。
これから戦闘に行くというのに、朝早くから仕事をしているとは、ロジェルはいつ寝ているのか不思議になってくる。
本人は、6時間は寝ていると言っているのだが。

アリーセは、朝食を取り終わるとロジェルと共に屋敷を出た。

「今日は冷えますね」

「ええ、そうですわね」

ロジェルは相変わらずの燕尾服姿だったが、腰には一本の片手剣を帯刀していた。
燕尾服に剣が刺さっているのは何とも異様な光景である。

「では、行きましょうか」

「承知しました」

屋敷を出ると、アリーセたちは王都の東側に向かった。
この貴族街は王都の中でも中央付近にあるため、王都のどこにでもアクセスはいい方だろう。
好立地なのでその分、土地は高くなる。
その為、ここは貴族が住人の人口のほとんどを占めるので貴族街と呼ばれているのである。

数十分歩いた所で、王都の東側に城壁と外を繋ぐ門があった。

「失礼ですが、こちらから出れるのはB級以上の冒険者の方に限らせて頂いております」

門番を務めている衛兵がそう言った。
恐らく、魔獣の活性化が進行しているのだろう。
ある程度の実力がないと魔獣に対抗することが出来ないのだろう。

「それなら問題ありませんわ。私たちはギルマスの頼みで魔獣の間引きをしに来ましたの」

アリーセはコートの内ポケットからSランクを示す漆黒に染まったギルドカードを。
ロジェルも同じく、懐からAランクを示す金色に輝くギルドカードを提示した。

「失礼いたしました！　お気を付けて行ってらっしゃいませ！！」

その衛兵は勢いよく敬礼をした。

衛兵に軽く挨拶をした後に、アリーセたちは門から王都の東側の門から城壁の外に出た。

「まだ、居ないようですわね」

目視できる範囲には魔獣は確認できなかった。

「森の方に行ってみましょうか」

ロジェルが目の前に広がる森を指さして言った。

「ええ、そうですわね」

アリーセは索敵魔法を展開しつつ、森の方へ向かっていく。
森は、魔獣にとっては暮らしやすい環境らしい。
その為、森には多くの魔獣が生息している。
魔獣にもそれぞれ縄張りのようなものがあるらしいが、活性化しているとなると、その縄張りを守っているかは怪しいもんだ。

アリーセとロジェルは、森に足を踏み入れた。