第89話　マリーナの今後

侯爵に挨拶を済ませると、アリーセはマリーナと共に侯爵家を後にするのであった。

「では、私の屋敷に参りましょう」
「はい」

アリーセは自分の屋敷にマリーナを連れて行く事に決めた居た。
どうせ、部屋は余っているし、姉妹なのだから一緒に暮らしても別に問題はないだろう。

侯爵家を出て歩くこと数分、アリーセたちは屋敷の前に到着した。

「ここですわ」
「凄い、大きい……」


マリーナは屋敷を見上げるようにして呟いた。

「さて、帰りますわよ」

アリーセは庭の門を開けると玄関に向かって歩いた。
玄関の前に立つと、玄関の扉が開かれた。

「おかえりなさいませ。お嬢様」

ロジェルが出迎えてくれた。

「ただいまですわ」

そう言うと、アリーセはマリーナと共に屋敷の中に入った。

「紹介しますわ。妹のマリーナですわ」

屋敷のリビングにて、集まった使用人たちに紹介をした。

「よろしくお願いします」

マリーナはペコリと頭を下げて言った。

「ベート家の家令を務めております、ロジェルと申します。王都は長いので分からないことがあったら何でも聞いて下さい」

ロジェルは綺麗に一礼した。

「メイド長のセシールです。屋敷のことなら大抵は把握しておりますので、お困りのことがありましたらお申しつけください」

セシールもロジェルにならうように一礼した。
そこから、料理人や警備の者、他のメイドさんたちも挨拶を交わした。

「マリーナさんも冒険者になるのですか？」

ロジェルが尋ねた。
アリーセの妹なのだから、マリーナもまた凄腕の冒険者なのかと思ったのであろう。

「い、いえ。私はお姉ちゃんと違ってそっちの方は駄目で、家の事などお手伝いできればと……」

マリーナはアリーセと同じ血を引いているのだが、戦闘の方は全くと言っていいほどダメだった。
しかし、家事はそこらのメイドよりこなすのではないだろうか。
一方で、アリーセは脳筋の所があるので、家事はからっきしダメであった。

「それは、助かります。何分、人手を増やそうかとお嬢様と相談していた所なので」

ロジェルがチラッとアリーセを見てきた。

「こき使ってすみませんねぇ」
「いえ、そんなことは」

ロジェルはAランク認定の者でセシールは戦闘メイドと、この屋敷には戦闘に特化した人間が集まりすぎなのだ。
普通の家事全般をこなしてくれる使用人を雇おうかという話も出ていたので、そこにマリーナが入ってくれるならちょうど良かった。

「では、二階の空いている部屋をマリーナの部屋にしますわ。案内してくださる？」

「かしこまりました」

ロジェルがそう言うと、マリーナを二階の部屋に案内していった。

こうして、マリーナもこの屋敷の一員となった。