第63話　迷宮都市

そこから、特に問題もなく、迷宮都市への道を進んでいた。
途中、魔物の気配も感知したが、アリーセが殺気を放つと、大体の魔物は引っ込んでいった。

「アリーセ様、そろそろ到着いたします」
「分かりましたわ」

日が傾き始めた頃、エーリヒが御者台の方から言った。

「ここが迷宮都市ですか……」
「アリーセ様は初めでいらっしゃいますか？」
「ええ、この国に来て日が浅いですから」

エーリヒとそんな会話をしていると、迷宮都市の入り口に到着した。
貴族用の門から、迷宮都市と入る。

「今回は検問無いんですね……」

貴族用の門から入るときに、特に検問などで停車させられることは無かった。
流石は侯爵家といったところだろうか。

「到着いたしました」

馬車は、迷宮都市の中心に近い所で停車した。

「ありがとうございますわ」
「本日は、既にギルドの受付時間を過ぎております。侯爵様がお部屋を御用意されているので、そちらをお使いください」

そう言って、アリーセは部屋の鍵を渡された。
侯爵も準備が良すぎやしないか？

「ありがたく、使わせていただきますわ」

アリーセは鍵を受け取ると、自分部屋までエーリヒが案内してくれた。

「では、私はここで。どうぞごゆっくりお休みください」
「お休みなさい」

そう言うと、私は部屋に入って扉を閉めた。

「こんなにいい部屋で無くてもいいですのに」

侯爵が用意してくれた部屋は明らかに、この宿の中でもいい方に分類されるだろう。
エーリヒは、同じ宿の下の階に泊まっているらしい。

「さて、明日は早いですし休みましょうか」

外はすっかり、暗闇に包まれていた。
明日は、迷宮都市ギルド支部へと向かって、迷宮の調査にきた旨を報告せねばならない。
報告してから、やっと迷宮の調査に出向くことが出来るのだ。

アリーセは、ライトを消すとベッドに横になった。
目を閉じてしばらくすると、意識を暗闇へと落とすのであった。


＊　＊　＊


「アリーセ様、8時でございます」

部屋をノックする音で目が覚めた。
エーリヒにはあらかじめ、8時に起こして欲しいということを伝えていたのだ。

「今行きますわ」
「承知いたしました」

アリーセは、エーリヒに返事をすると、パジャマの姿から、いつものロングコートに身を包んだ。
15分ほどで準備を済ませると部屋を出た。

「お待たせしましたわ」
「いえ、とんでもございません。朝食にされますか？」
「そうね。まずは食事にしましょう」

アリーセは、宿に併設されている食事処へと向かう。
朝食は、ハムサンドに紅茶、サラダという定番のものだったが、なんだかんだでこれがしっくりくるもんだ。
アリーセは、早々に朝食を済ませるのであった。