金髪縦ロール無双~無実の罪で国外追放された元天才参謀、世界唯一の女性Sランク冒険者になった途端戻って来いと言われましたがもう遅い。私の居なくなった国は急激に弱体化したようです~

津ヶ谷

第39話 ギルマスの頼み

アリーセは、ギルドの受付嬢から声を掛けられていた。

「アリーセさん、少しよろしいですか?」
「はい、どうかしましたの?」
「ギルマスがお会いになりたいとおっしゃております」
「ギルマスが?」

ギルドマスター直々に会いたいと言ってくるということは、また、面倒な事を押し付けてくるのだろう。

「まあ、いいですわよ」
「ありがとうございます。では、こちらにお願いします」

薄々、嫌な予感はするが、ギルマスのお呼び出しを断る訳にもいかない。
アリーセは、受付嬢に付いて行った。

「アリーセ様をお連れしました」

受付嬢が、ノックと同時に声を掛けた。

「入ってくれ」

中からそう、返って来た。

「失礼します」
「おお、よく来てくれたな。まあ、座ってくれ」

ギルマスは、アリーセをソファーに促した。

「下がってくれ。ありがとうな」
「はい、失礼いたします」

受付嬢が、ギルドマスター執務室を退出した。

「それで、今回はどんなご用件で?」

アリーセはソファーに腰を下ろした。

「うむ、今回は、これを君に頼みたいと思ってな」

ギルマスはアリーセの対面に座ると、二枚の資料をアリーセの前に置いた。

「拝見します」

ギルマスに渡された、資料に目を通していく。

「新人冒険者研修ですか……」
「ああ、最近出来た、新人冒険者の育成プログラムだ」
「まさか、私がこれに参加しろって訳じゃないですよね?」

アリーセはギルマスの方はジッと見つめた。

「まさか、君に参加者側じゃないよ。君にやって欲しいのはこっちだ」

そう言って、ギルマスはもう一枚の資料を指さした。

「新人冒険者研修教官の募集?」
「ああ、新人冒険者は毎日のように生まれるが、指導者が足りない状況でな。やってはくれんか?」

まあ、ギルマスが言いたいこともわかる。
アリーセほどの実力の持ち主であり、なおかつSランク認定の冒険者ともならば、教官としては申し分ないだろう。

「これは、どのくらいの期間やるんですか?」
「1週間を予定している」
「なるほどですわ」

その1週間の間に冒険者としてやっていくための、基礎知識、体力、戦闘技術を学んでいくというものであった。

「それで、やってくれるか?」
「まあ、いいですわよ。どうせ断っても無理やりにでも押し付けえてくるんでしょうからね」

このギルマスのことだ。
あの手この手で押し付けてくることは目に見えていた。
本当に、食えないジジイだと思う。

「人聞きの悪いこと言う出ないよ」

そう言って、ギルマスは苦笑いした。

「とりあえず、この資料は貰っていきますわね」
「ああ、構わんよ」

アリーセは、資料を三つ折りにすると、コートの内ポケットに仕舞った。

「用件はこれで終わりですか?」
「ああ、ワシからはこれだけだ」
「分かりました。では、私はこれで」

アリーセは、立ち上がろうとした。

「あ、最近、私の周りに変なのがうろついていますので、一応、ご報告をしますわ」
「ああ、聞いているよ。いらん心配かもしれんが、気を付けてくれ」
「はい、ではこれで」

アリーセは、ギルドマスター執務室を後にした。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品