第34話　新しい拠点

アリーセは、侯爵家で、侯爵の対面に座っていた。

「それで、今後も敵襲はあるとおもうか？」
「これで、懲りたと思いたいですわね」
「にしても、騎士隊相手に、ボコボコにしてくるとは、流石としか言えないな」

侯爵は苦笑いしていた。

「今回は、さすがにちょっと手こずりましたがね」
「結果としては、倒したんだから問題ないだろう。陛下には私から報告を出そう」
「ありがとうございますわ」

そこまで言うと、侯爵は紅茶を啜った。

「ところで、アリーセはまだ宿生活だったか？」
「はい、そうですわ」
「Sランク認定を受けたことだし、そろそろ拠点を決めた方がいいんじゃないかと思ってな」

そう言って、侯爵は何枚かの資料をアリーセの前に広げた。

「侯爵家が管理する、一軒家の物件だ。流石に、タダという訳にはいかないが、君にならだいぶ値引きして譲ろうじゃないか」
「え、よろしいのですか」
「ああ、君には色々世話になっているからな」
「では、お言葉に甘えて」

アリーセは並べられた資料に目を通して行った。
その中には、貴族街に近い物件や王都の中心街に近い物件もあった。

「本当に、この物件をこの値段で？」
「ああ、もちろんだ」

侯爵は頷いた。

「それなら、ここがいいですわ」

アリーセが選んだのは、貴族街に一番近い物件だった。
ここなら、立地もいいし、Sランクの賞金で賄えるほどの金額だった。

「お、そこを選ぶとは、分かっているじゃないか」
「一番立地が良さそうでしたので」
「ああ、確かにそこは好立地だよ」

そう言って、侯爵は笑った。

「これ、鍵と屋敷の地図だ。今日からでも使えるようにしてあるから、好きに使ってくれ」
「ありがとうございますわ。料金の方は？」
「それは、次会った時で構わないよ」

アリーセは侯爵から、鍵と地図を受け取った。

「分かりましたわ。では、早速行ってみようと思います」
「おう、きっと気に入ってくれると思うぞ」
「はい」

アリーセは侯爵家を後にすると、地図を頼りに、屋敷にへと向かった。

「ここ、ですわね」

地図の場所に到着すると、3階建ての屋敷があった。
鍵を使って、中に入る。

「やっぱり、かなり広いですわね」

侯爵家が管理していただけのことはあり、庭を含め、かなりの広さを有していた。
一人で掃除するのも一苦労しそうである。

「とりあえず、荷物をこっちに持ってきましょう。後のことはそれからですわね」

鍵を閉め、屋敷を後にすると、一度宿屋に戻った。
事情を話し、アリーセはチェックアウトの手続きを済ませた。

「お世話になりましたわ」
「こちらこそありがとうね。ご飯だけでもいいから、また食べに来てね」
「ええ、ここのご飯は美味しいですから」
「嬉しいこと言ってくれるじゃない」

宿屋の女将に挨拶を済ませると、荷物を持ち、侯爵から買った屋敷に戻った。